15 イルカショー


「れっつごぉ!」


川島が楽しそうに歩き出す。


それにつられて歩く。



「凛、イルカショーあるらしいぞ。行こうぜ」

「うぇっ。おいっ。」


月島と西田くんの声だ。


「聞き慣れた声しね?」


「浅野の彼氏と、西田?くんでしょ?」


うっ。


「「うぇーっいっ!」」


__________すっごい元気。


ハイタッチの音が響く。


月島、ちょっと明るい。


でもなんか疲れてそう。


「いるか行くなら一緒いこーぜ。」

「おう。」



__________うれしい。一緒見れる。






§








まだお客さんは平日の昼間ってこともあって、まばら。


前の方の席がいくつか空いてる。



「ちょうど6人分あるやん。ここ座ろうぜ。」


西田くんが指さしたのは、真ん中寄りの2列目。


水しぶき結構かかりそうな場所。


一番迫力ありそうな席。


「いいねっ、じゃあわたしここっ!」


「はいっ。」


(あ……)


わたしが月島の隣がいいってこと。


みんな気づいてるのかな。



「じゃ、俺こっち行くわ」


石田が冗談っぽく言って、隣に座ってくる。


そして、川島がその隣に座る。


その横に末次。


「なんで石田と隣なのー!!水かかってきたら引っ叩くからね」


「いやそれイルカのせいだからな?!」


後ろの方の親子連れがくすくす笑ってる。


私の左側。


「__________ここ、いい?」


月島の声。


「もちろんっ」


少しだけ遠慮ぎみに。


でも、ちゃんと隣に座ってくれた。


その横には西田くん。


私たちが横に座ってるのが違和感ない順番になってる。



「ありがと」


ちっちゃな声で呟くと、気づいたかどうかも分からないくらい自然な動きで、少しこっちを見て微笑んだ。



ステージの音楽が鳴り始める。


イルカがジャンプするたびに水しぶきが上がる。


川島が「きゃー冷たい!」って笑ってる。


川島がはしゃいでる。


珍しい。


西田くんは何故か後ろの子どもと張り合って手を振ってる。


川島は、私と月島の方をちらっと見て、それからにこーって笑ってイルカショーに戻った。


その一瞬が、すごく嬉しかった。


──なんか、ちゃんと楽しい。


イルカたちの大ジャンプに歓声があがって、水しぶきがかかる。


ばしゃーんって。すごい。


そのとき。


「濡れないでね。風邪引くよ。」


月島が、透明なやつを持ってくれた。


びっくりした。


横を見ると、少ーしだけ、顔を赤くして前を向いてる。



きゅんってした。


こんなイルカショー、想像してなかったよ。


──でも、この“真ん中”が、この空間が、


たぶんいちばん居心地いい。



「「「うわっっっ!!!」」」


「あっはっはははっ!びっしょびしょ!あっははっ!」


思いがけないイルカの飛沫でびっしょびしょになった。


「メスゴリラが持っとかんけんや!!」

「うるさい!!引っ叩くよっ?!?!」


あ、かかったら引っ叩くって言ったもんね。


引っ叩いとく?


ジャージが濡れてるだけだった。


薄いのに吸水性いいのね。


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