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蓮児が不本意ながらも手伝わされているクラスの女子生徒で、今まで一度も会話らしい会話を交わした記憶がない。いや、挨拶すらもないのではないか。
彼女はよく、窓の外を眺めている。
授業中も、休憩時間も、そして、
蓮児はそんな彼女を、空が好きで無愛想な生徒として認識していた。
「ねえオレンジ、またスケベなこと考えてるでしょ?」
小テストの最中、咲姫が突然声をかける。
「いや…………おい、〝また〟って、なんだよ!」
教壇に両手をついてたたずむ蓮児は、塔子を何気なく見てはいたが、年下の女性に、しかも、生徒にスケベ呼ばわりされたので、羞恥とほんの少しの怒りから顔を赤く染めた。
そんな蓮児に、わずかに笑みを浮かべてみせる咲姫。シャーペンのノックキャップを下唇に押しつけながら、うしろを大きく振り返る。
窓の外の曇り空へ顔を向けていた塔子が、ちょうどテスト用紙に視線を落とすところだった。
しばらく塔子を見つめていた咲姫は、なにをするわけでもなく姿勢をもとに正し、二次方程式を難なく解いていった。
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