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もうすっかり冷めてしまっていたが、ダージリンの香りと
出勤日はいつも、学校近くの早朝から開店しているこの喫茶店に立ち寄り、なにかしらの用事をこなしつつ時間を潰すことが日課となっていた。
その
こうして余裕をもたせて朝早くから電車に乗れば(ほとんど始発の時間ではあるけれど)、満員の護送車のような車両で
正規雇用の教員ではなく非常勤講師である蓮児にとって、一杯四百円の嗜好品は安くはない。それでも、ストレスフリーな交通手段と、この優雅ともいえる
「おっと!」
パソコン画面のすみに表示されている現在の時刻に気がつき、慌ててファイルを閉じて立ち上がる。冷めた紅茶も飲み干してから、蓮児はビーチ材の背もたれに掛けていた上着を手に取り羽織った。
入店時は、空と同じ深海のような世界だった街並みが、すっかりと明るいパステルカラーに変わっていた。見上げれば、電線の向こう側に少し欠けた月が浮かんでいる。
「うわっ、寒ッ……」
近頃、心の声が思わず言葉に出てしまう。
蓮児は二十代だが、独り身のさびしさがそうさせるのかもしれない。
まだ眠りから覚めない住宅街を、ガードレールに沿ってひとり歩く。ところどころ傷が目立つのは、誰かが故意に
そんなことを考えていると、不意に対向車線から車が一台、ため息のような走行音と白いガスを
一台、また一台……あとはもう、やっては来ない。
首に巻いているアラン模様のスヌードを片手で掴んだ蓮児は、気休め程度を覚悟の上で、
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