第44話 園田マリアの恋愛相談①
いつもの様に行われている
予め募集しておいた恋愛相談から、園田マリアの中の人である
美佳子は大人の女性であり、元モデルだけあって良くモテていた。その為恋愛経験は豊富で、恋愛相談には強い。
的確なアドバイスをしてくれるからと、若い女性リスナーからは人気のある企画だ。もちろん女性の意見を聞きたい男性リスナーからの相談も沢山ある。
ただそれでも、恋愛相談の回は女性リスナーの割合がグッと上がる。ゲーム配信などは男性の割合が高いが、こう言った企画では女性が半数を占める。
他にもメイク関連などの美容系だと、女性が7割を超えるというのがマリアリスナー達の動きとなる。
「そんな男は別れた方が良いね、最悪。終わってる」
『バッサリいったw』
『それはそう』
『マジむり』
『ありえん』
『クズすぎ』
今回最初の相談は、女性からのもの。彼氏が自分の友達ともデートに行っているらしく、平気で泊まったりもしている彼と別れるべきかと言う相談だ。
二股されているのはほぼ確実と思われる。最近は自分に黙ってテーマパークのお泊りデートまでしているとの事。
でも相談者は彼にまだ好意があり悩んでいるという。それに対するマリアとしての美佳子の回答はあっさりとしたものだった。
これはマリアとしてのキャラ作りではなく、美佳子自身の価値観から来ている。彼女としては、浮気二股は絶対にNGなのである。
「浮気する人は治らないからね。男女関わらず。関わらないのが一番だよ」
『ほんとにそう』
『まじで治らんよね』
『そのタイプ友達にいたけど縁切った』
『その点ワイは彼女が居ないから浮気もゼロ』
『悲しいなぁ』
1人目の相談にある程度のキリが着いたので、2人目の相談者へと移る。今度は男子大学生からの相談だった。
好きになった同じ学部の子とご飯に行く約束が出来たが、これはチャンスかどうかと言う内容であった。
しかしこれには必要な情報が足りておらず、その事を指摘する目的で選ばれた相談であった。
現状ある程度の想像なら出来ても、的確な回答を出すのは難しい。美佳子としては、中途半端な情報で答えを出すのは好きではない。
情報不足で誤ったアドバイスを出したくは無い。そのせいで大失敗があっても責任が取れないからだ。
「ボク毎回言っているけどさ〜自分の客観的な立ち位置とか、相手との関係性とかちゃんと詳しく書いてね? 分かんないよこれだと」
『陰キャではなさそう?』
『誘う勇気はあるみたいやし』
『いうて誘っただけじゃなぁ』
『飯行く程度じゃ五分五分だべ』
『私ならご飯ぐらい行くよ』
「とりあえず言えるのは、焦らない事かな。コメントにもあるけど、ご飯行く程度じゃ脈アリ確定とは言えないね」
2人目の相談者も終了し、続いて3人目の相談者へと移る。今度は再び女性の相談者である。
まだ中学2年生の女の子で、出せる限りの情報を必死で書き殴ったと分かる内容がびっしりと書かれていた。
途中で分割しないと画面に収まらない程の文章量だったが、その分2人の関係性は分かりやすかった。
幼稚園の頃から一緒だった男の子の事が好きで、今は毎日2人で塾に通っている関係だそう。
自分は平凡で地味なタイプなのに対して、男の子はバスケ部に所属する密かに女子人気が高い子だという。
物凄いイケメンではないが、カッコよくて優しい男の子ではある。彼には毎年バレンタインにチョコをあげているが、毎回手作りのお返しをくれているとの事。
しかしその男の子は誰にでも同じお返しをするので、自分だけが特別な扱いをされているのではないとの事。
ただ毎晩おやすみの連絡をくれていて、これはどう判断したら良いのかと言う内容だった。
「絶対に逃したら駄目! そう言う子が結局一番良いの! マメで料理が出来る男子は最強だよ!」
『急に早口になるやん』
『声デカw』
『ああ、マリアの推しタイプやから』
『家事スキル……』
『あっ(察し)』
「クラスで一番とか大人になったら無意味だから! 生活能力のある男子が結局優勝なんだよ!」
マリアというか美佳子としての魂の叫びであった。文章を読む限り咲人の様な男の子だったからだ。
自分と同じ様に手遅れになる前にと、猛烈にプッシュしている。そして同時に
自覚してしまった恋心。惹かれていると分かっているからこそ複雑なのだ。家事代行を続けてくれる限り、定期的に会う事が出来る。
恋人ではなくとも、咲人の手料理は食べられる。同じ空間に居る事が出来る。せめてそれだけでも、ずっと続けば良いのにと願う美佳子。
「本当にね、逃がしちゃ駄目だからね……」
『情緒どうした?』
『どしたん話きこか?』
『やめろw』
『なにかあった?』
『フラれた?』
「うるさいなぁ!! フラれてないよ!!」
『今日一声デカくて草』
『効いちゃった』
『顔真っ赤』
『どんまい』
『次いこ次』
そう、フラれたのではない。ただ勝手に諦めているだけだ。自分にはその資格がないからと。
15歳という年齢差が、美佳子の前に高い壁として立ちはだかっているのだ。だからこそ気づけない、咲人がどう思っているかという事に。
咲人から向けられる視線の意味が、以前とは変わっている事に美佳子はまだ気付けない。本当は存在しない幻の壁が、美佳子の心を苦しめていた。
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