第8話 スサーの街


 深い霧の中で、ロロギアさんが運転する魔機車を走らせいるのですが、何故か全然迷う事はありませんでした。


「しかし、何でこんなに霧が濃いのに迷わないんだ? 可笑しくないか? まるで何かに導きかれている様な……」


「ええ、多分、導かれていますね。実際、マリアさんが手に持っている〖天のルルエラ像〗が発光して、光の道標として何か出してますし」


「はい、出てます。リク先生」

「そうね、で出るわね」


「お、お前ら! そういう変化は直ぐに俺に言えよな。ここは準禁則地だぞ。何かあるか分からない……つうか、呑気に菓子を食ってんじゃねえー!」


 ロロギアさんが素晴らしいツッコミを披露してくれました。その時でした、いきなり渓谷の霧が晴れ、私達の目の前に大きな白い羽根の形で作られていた門が、目の前に姿現れたのは。


「リク先生。あれは…」


「未踏の地に人工的な…いえ、この場合は人鳥的なと言った方が正しいでしょうかね……ですが着きましたね。僕達の目的地である幻神鳥(ハーピィー)に有りそうな場所に」


「こんな場所がか? 奥が少し見えるが、何か普通に街みたいなのが見えるぞ。幻の種族・幻神鳥(ハーピィー)にそんな技術があるなんて聞いたことないぞ」


「……ロロ、違うわよ。あれは多分、外の世界の技術よ」


「外の世界の技術? 何だよは、アイナ」


「この白くて綺麗な門、見てみなさいよ。普通〖魔機世(マキナ)〗の世界では魔法と機械の技術を融合して、使用するのにこれは違うは、純粋に魔法の力だけで動いてるわ。ううん、それだけじゃない。奥にありとあらゆる建物に機械の技術が無い。魔法の技術だけで構成された世界が広がっているんだわ」


 アイナさんが白い羽根の門の柱を、魔境眼(ルアイ)を使って観察を開始しました。


「皆さん、外へ出ましょうか。周りを調べて、目的の人物である〖帰還者〗を捜索しなくては」


「そうですね。リク先生行きましょう…」


ガチャ…


 私とリク先生が魔機車から降り、白い羽根の門へと近付くと空から白い羽根が数枚落ちて来ました。


「羽根ですか? もしかして…天魔獣」


「いえ、あれは違いますね……あれは幻神鳥(ハーピィー)です。ビンゴですね」


 ビンゴ? リク先生は何を言って…


「「ようこそいらっしゃいました。〖天朝のルルエラ〗様の眷属様。悠久に渡る長き旅、お疲れ様でした。どうかこの〖スサーの街〗で安らぎのひとときをお過ごし下さい」」


 突然でした。突然、私の前に腕と羽根が合わさった天鳥族が現れ、私に膝を着き、頭を下げたのです。


「な、何ですか? 貴女達は? 私が〖天朝のルルエラ〗様の眷属? 貴女達は何を言っているんですか?」


 私は混乱していました。私がルルエラ様の眷属? い、いったいどういうでしょうか?


「形式の挨拶も終わった事だし、もういいよね? リリカラ。初めましてー! 私はリエラ。ハーピィーだよ」


「リエラ、アナタ……ルルエラ様の眷属様に向かって失礼な。リリカラです。長い旅、お疲れ様でした。どうぞこちらへ、幻神鳥(ハーピィー)の長(おさ)の娘。ハルピュイア御姉様がお待ちです」


 凄い畏まれていますね。リ、リク先生。私はどうすれば。という合図を送ると。


「お話し中申し訳ありません。初めまして、僕はリク・テリクスと申します」


「そんで、俺がロロギアだ……歓迎している所、悪いんだがな。ちゃんと俺達にこの場所の説明やら、マリーと〖天朝のルルエラ〗様との関係をちゃんと説明を……」


「おや? 貴方方は……リエラ」

「んー? 何、私はルルエラ様の眷属様をこのスサーの街を案内しないと……マジ?」


「三人も居るなんて、ビックリね……もしかして、そちらの女性の方も関係性があるのかしら? どうぞこちらへ…ご案内致します。ハルピュイア御姉様の元へ」


 リエラとリリカラと名乗った幻神鳥(ハーピィー)さん達は、突然、飛び上がり。スサーの街へ、ゆっくりと飛び始めました。


「どうやら案内してくれる様ですね。参りましょう。マリアさん」

「は、はい。リク先生」


 私はリク先生に突然、右手を握られてドキッとして、嬉しくなりましたが。なんとか表情には出さず堪えました。この緊張感がある場所で、ニマニマしてはいけませんよね。


「何? どうしたのよ? 後ろの深い霧何か見つめちゃって? 何か怪物でもいたの? ロロ」

「……いや、気のせいだ。それより、アイナ。スサーの街に入ったら俺から離れるなよ。色々とヤバそうな街だからな」


「……う、うん。分かったわ。(何? 何でこんな真剣な顔してるのよ? いつもはおちゃらけてるくせに……たまにカッコいい所あるんだから。コイツは…)」



〖ハーピストの渓谷 魔鳥の巣窟〗


「「「「「ギャギャギャギャ!」」」」」


「アーノルド様! お助け下さい! このままで、私は殺されてしまいます」


「……ええ、私の為に死んで頂戴。シシル……そして、さようなら。私の大切なお友達。光栄に思いなさい。貴方は私とテリクス様が結ばれる糧になるのよ……さようなら」


「アーノルド様! そんな……騙したな! サーシャ・アーノルド! 私を騙したな。貴様の願いである。テリクス家の長男と貴様の婚姻を結ばせる。それが叶えば私を恋人にすると言っていたのは、嘘だったんだな?」


「恋は人を曇らせるわね。この深い霧の様に……今までありがとう。私のシシル……フフフ、さようなら」


「己! サーシャ・アーノルド! 貴様はぁ!! あぁ、止めろ。私の身体を啄むなぁ!!」


「「「「「ギャアギャギャギャアギャギャ!」」」」」



「フフフ、何とか乗り切ったわよ。未踏の地……後は、アークス教団から貰った、あれを使えば殺されるわ……恋敵マリア・シュリルを! そして、手に入れるのよ。私の旦那様。テリクス様を……フフフ……フフフフフフフフフ!」


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