第73話 グラディエーター・アリーナ決勝戦 中編
アリーナでは試合が進むにつれ、熱気と興奮が最高潮に達していた。それぞれの戦いが繰り広げられる中、観客たちは次に訪れる試合の行方に息を呑む。
準決勝:ロガン vs ドラガ
「次の試合は、獣人王国の《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手と、《鉄の竜槍》ドラガ・ヴォルケン選手の対決です! どちらも力と技を兼ね備えた猛者! 一瞬たりとも目が離せませんよ~!」
実況ちゃんの元気な声が響く。
ロガンとドラガがアリーナ中央で対峙した瞬間、観客席からどよめきが起こる。
ロガンは相変わらずの堂々たる姿勢で、ドラガはその豪槍を構えながら闘志をみなぎらせている。
「おい、竜人族の兄ちゃん。お前も王族の血筋か?」
「いや、ただの戦士だ。だが、勝利のために戦うのは俺たちの誇りだ!」
ドラガが槍を振りかざし、ロガンへと突撃する。その槍さばきは鋭く、獅子王ロガンの素早い動きを封じるような連続攻撃を繰り出した。
「ドラガ選手、攻めて攻めて攻めまくる! ロガン選手、どう出るのか!?」
「すごい! ドラガ選手、本当に強いっチュ!」
ミミが思わず声を上げる中、ロガンは槍をかわしながら距離を詰める。そして、一瞬の隙を突いてドラガの槍を掴み、全力で振り払った。
俺たちはアリーナの中を下に下にと降りていた。アリーナの中ではな、内部に入らない限りは試合の観戦ができてしまう。
「これで終わりだ!」
ロガンの拳が炸裂し、ドラガは地面に叩きつけられる。観客席からは歓声が沸き起こった。
「勝者、ロガン・ゴルドフェング選手!」
「ロガン王子だな! 力も技も圧倒的だ」
私は素直に勝利を感心した。
準決勝:ノクス vs バクザン
「続いての試合は、《無名の剣士》ノクス選手と、《雷鳴の豪拳》バクザン選手。鬼人族の若き戦士で、豪快な拳闘スタイルで、剣と拳の対決が注目です!」
ノクスは剣を構え、静かにバクザンを見つめる。一方でバクザンは余裕の笑みを浮かべながら、拳を打ちつけた。
「小僧、鬼人族と戦うのは初めてか?」
「ああ、だけど負けない」
「くくく、いいねぇ、その目にそそられる。だが、兄貴からの依頼だ。お前に負けるわけにはいかないんだよ」
バクザンが放った拳がアリーナ会場の床を割る。だが、ノクスは冷静に一つ一つの拳を見極めてその全てを紙一重でかわしていく、接近戦で繰り広げられる二人の戦いは、準決勝に相応わしい攻防が繰り広げられている。
「ヒュ〜やるねぇ〜なんて速さだ!」
バクザンが驚愕する中、ノクスの剣で切りつけた。そのまま剣を喉元に突きつける。だが、バクザンはそこでニヤリと笑う。
「それで勝ったつもりか?」
「ああ、後は突けば終わりだ」
「やってみろよ」
「なにっ?」
「やれって言ってんだ!」
バクザンの気迫に、ノクスが慌てて突きを放ったが、その瞬間にバクザンは、首を横にそらして、体を逸らした状態で、ノクスの脇腹に拳を突き刺した。
「強烈!!!! バクザン選手のボディーブロー!!! これまで一撃も受けなかったノクス選手! 初めてのダメージだ!!」
バクザン君はやっぱり強いね。経験値がノクス少年とは違う。
「ガハッ!」
「お前は強いよ。これから鍛えれば、俺を超えるかもな。だが、未熟だった」
「まだ!」
ノクスは立ちあがろうとしたが、バクザンに油断はない。
「寝ていろ!」
「ぐっ?!」
決着はついた。
「勝者、バクザン選手!」
観客席からは驚きの声が上がる。これまで無名で、致命的な傷を受けないまま勝ち上がってきた剣士を打ち破るという快挙に、バクザンに向けて歓声を上げた。
「バクザン選手、強い!」
「すごいぞ!」
「これはロガン選手も危ういんじゃないか?」
決勝戦:ロガン vs バクザン
本来の小説とは異なる結末が、そこには展開していた。
「フライ様。こちらなのです」
「ああ、行こうか」
決勝戦は見れそうにない。だけど、ロガン王子が勝とうと、バクザンが勝とうと、すでに小説とは違う結末が待っている。
ここで、優勝するのはノクスだった。
無名の天才剣士。
それが、ノクスというキャラクターの始まりだった。
ロガン王子に勝利した平民出身の優勝者として、名を売り革命軍の勢いをつけさせることになる。
ブライド様が、大陸統一を唱える前に、すでにリベルタス・オルビスは動きを見せていた。
どちらが先なのかわからないが、もしも、革命が起きなければ、ブライド様も兵をあげないかもしれない。
私は将来を知っているからこそ、戦争が起きることを止めたいと考える。
人が一人動いたことで、歴史が大きく変わるとは思わない。
だけど、一つの事件が未然に防がれることで、失われるはずだった命が生き残れるかもしれない。
全ては、IF、もしもだ。
「ここです」
ミミが案内してくれたのは、アリーナの中心であり、実際に戦いが行われている真下だった。
「貴様! そこで何をしている?!」
どこから現れたのか、武装した集団が私たちを囲みました。
「フライ様!」
「大丈夫だよ、ミミ」
私はこんな危険な状態なのに笑っていた。
自分が歴史を変える瞬間にいる。その瞬間を味わっていると思えた時、どうしようもなく楽しいと思ってしまうのはエゴだ。
だけど、エゴを持って何が悪い?
「君たちに問おう。君たちはリベルタス・オルビスか?」
私の問いかけに、武装した集団の一部の肩が震える。
どうやら当たりだね。
「なら、君たちを拘束させてもらう」
「殺せ!」
私の問いかけに、返ってきた言葉は問答無用だった。
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