第61話 グラディエーター予選
第一競技として、最初の一週間目に行われる《グラディエーター・アリーナ》。
学園都市の様々な場所で、参加した者たちが1対1の決闘を行って競い合う。
反則として。
・多勢での襲撃(戦いは1対1であること)
・決闘中の横槍(妨害行為と見做された場合は即失格)
・審判のいない場所での決闘は無効(誰もいない場所での決闘は禁止)
反則や無効となる判断はいくつか存在するが、この競技の見どころは単なる力比べではなく、種族ごとの異なる「個性」をどう生かすか、そこに尽きる。
観客となる学園都市にやってきた者たちに自分の力をアピールする。
それは今後の就職や選びたい道に繋がることになる。
勝負に負けたとしても目立った者には注目が集まり、祭りは大いに盛り上がる。
予選では三勝した者から勝ち上がりとなり、誰が勝ち上がれるのか予想する。
予選の予想と、決勝の予想の二つが賭け事として行われる。
グラディエーター・アリーナの開始日が迫る中、学園都市全体が異様な熱気に包まれていた。
「決闘の勝者を予想するのって、面白いね」
私はジュリアとエリザベート、アイリーン、そしてレンナと共にアリーナの観客席で、予選の様子を見守っていた。
グラディエーター・アリーナは、参加者が1対1の決闘を通じて自らの力を示し、勝者だけが栄光を手にする競技だ。しかし、ただの力比べではない。
魔道具の使用や、魔法の使用も認められている。
戦闘スタイルや種族特有の能力が勝敗を大きく左右するため、観客にとっては驚きと感動の連続だ。
「さぁ、フライ様。今回の優勝候補は誰だと思いますの?」
エリザベートが興味津々の表情で尋ねてくる。
「うーん、僕としては予想するのは難しいな。参加者の中には、全く知らない実力者もいるからね。強さだけならロガン王子だろうし、魔法を使って戦略を組み立てれば、アイス王子なども候補に入るかな。それにまだ力を見せない強者もたくさんいるからね」
私がそう言うと、ジュリアが少し不満げに口を挟んだ。
「ボクはご主人様が参加していたら、間違いなく優勝だと思うのです!」
「いやいや、僕は平凡だから無理だよ。それに、こういうのは見る方が楽しいんだ。賭け事は参加してしまうとフェアじゃないからね」
ジュリアがプンプンと頬を膨らませる一方で、レンナが肩をすくめた。
「でも、実際、ご主人様が優勝候補だろ? それがいないだけで、かなり絞られているんじゃないのか? 種族ごとの能力差もあるわけだからな」
学園都市では、様々な種族の選手が熾烈な戦いを繰り広げていた。
魔道具で作られたモニターが学園都市の様々な場所に設置されてスポーツ観戦をするように楽しまれている。
魔法を使用する際には、結界がある場所になるので、一定の場所で戦い。それを承諾した者としか戦えない。
観客席から見えるのは、戦場で繰り広げられる華麗な技と圧倒的な力のぶつかり合いだ。
「皆様、今回の大会の実況をさせていただきます。ジョウ・キョウです! どうぞ実況ちゃんと呼んでやって下さい」
元気溌剌な実況を行う少女が、モニターに映し出される。
「それでは今大会の優勝候補の説明をしていきたいと思います。昨年は、エリック・エルトール様の全属性魔法による圧倒的勝利で幕を閉じた今大会ですが、次なる優勝者は誰になるのか?」
エリック兄さん、優勝者なんだね。圧倒的な魔力で無双しているのが、想像できるよ。
「まずは、一学次在籍でありながらも、今大会最有力優勝候補! 獣人王国の王子、獅子王ロガン・ゴルドフェング選手!!! 獣人の身体能力に加えて、彼の戦闘経験は並じゃない。予選は圧倒的な勝利を収めてくれることでしょう」
モニターと連動して、実況ちゃんの声が学園都市全体に響いて、ロガン王子の戦闘風景が映し出される。
モニターの戦いぶりは圧倒的で、彼の鋭い爪と力強い拳はまるで嵐のようで、どんな相手も蹴散らしてしまう。
「続いては、三年次在籍、昨年準優勝者セリーナ・シルヴァ嬢!!! 精霊族ならではの優雅な動きと、魔法の制御が素晴らしいので美しさが見どころです!」
実況ちゃんの解説に、エリザベートも同意するように頷く。
セリーナ嬢は身体能力ではロガン王子に劣るが、魔法で相手の動きを封じたり、瞬時に回避したりと、テクニックで勝負するタイプだ。
「次に映し出されたのは、三年次在籍のレオポルド・シュトラウスも人気だね。人間族でここまでの実力者は珍しい」
彼は地道な努力と鍛錬で勝ち上がった選手で、堅実な戦闘スタイルが観客にも好評だった。
卒業後は、護衛などで引く手数多になることだろうな。
「そして、ロガン王子と優勝候補を二分する二年次ドラガ・ヴォルケンの力技も見ものです! 竜人族の圧倒的な筋力と耐久力は、他の種族では太刀打ちできないでしょう」
実況ちゃんの有力候補説明にモニターを見ている、学園都市の人々にも熱が入る。
決勝戦は、アリーナで行われる。
予選は、各地でモニターを見ながら誰が強いのか見極める段階だ。
つまり、賭けが生じている以上は、戦いは表向きは正々堂々としているが、裏では様々な思惑が交錯している。私はその動きを冷静に観察していた。
「それにしても、リベルタス・オルビスが動いているという噂が気になるね」
私はアイリーンに小声で話しかける。彼女はいつもの笑顔のままだが、そっと私に耳打ちをしてくれた。
「ふふ、さすがはフライ様です。調査を進めておりますが、未だに掴めてはおりません。」
世間話のつもりだったのに、調査しているの? うん、アイリーンって何者なんだろうね。小説には死んでいて出てこないから、ちょっと謎めいているよ。
予選が進むにつれ、観客席はますます熱気を帯びていた。
「ロガン様! 次も勝利を!」
「セリーナの魔法がすごいわ!」
「レオポルドがこんなに強いなんて!」
それぞれの応援が飛び交う中、私はふと一人の平民が活躍しているのをモニターで見つける。
「ノクス選手勝利!」
二勝目を挙げた平民の少年は、ゆっくりと息を吐いて剣を収めた。
彼の姿が、探していた人物に似ているような気がして、どうしても気になる。
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっと探している人に似てると思っただけだよ。さて、誰が勝つのかな」
私はジュリアやエリザベートと会話を楽しみながらも、頭の中では別の計画を練っていた。
このアリーナは単なる競技ではなく、種族間の力関係や社会的な地位が浮き彫りになる場だ。
それぞれの種族の代表者たちがどのように戦い、観客たちがどのように受け止めるのか、思惑が交錯している。
「どちらにしても、僕はただの観客として楽しむだけさ」
そう言いながら、私は観客席でのんびりと椅子の背に体を預けた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
今日はここまで。
十二月も残りわずか、年の瀬も執筆頑張ります!(๑>◡<๑)
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