第52話 レアキャラ登校

《sideフライ・エルトール》


 学園に入学して、気がつけばもう半年が経とうとしている。


 フラフラとしすぎて、学園都市に全く通っていない。


 その間、ジュリアやレンナの教育をエリザベートに任せていた。


 正直、学園で授業を受けなくても勉強くらいは自分でできるし、何より、のんびり過ごす時間の方が私にとっては重要です。


 だけど、そんな私の生活が、どうやら他の生徒たちには異様に映っているらしいのです。


「フライ・エルトールが今日も来ていないって?」

「本当にこの学園に在籍してるのか? 幻の存在なんじゃないか?」

「噂では、授業に出ない代わりに裏社会で活動しているとか、闇の魔法を研究してるとか……」


 どうしてそうなるんだ? ただ、授業をサボっているだけなのに、いつの間にか奇妙な噂が広がっている。


 聞いたところによると、私のことを「レアキャラ」と呼ぶ生徒もいるらしい。まぁ、学園に来ないんだから、そう呼ばれるのも仕方ないか。


 そんなある日、久しぶりに学園に顔を出してみると、校庭で待ち構えていたのは獣人の王子、ロガン・ゴルドフェングだった。


「やっと見つけたぞ! フライ・エルトール!」


 突然名前を呼ばれて振り返ると、そこには獅子の獣人であるロガンが立っていた。その目には明確な挑戦の色が宿っていた。


「うん? これはロガン・ゴルドフェング王子じゃないですか? どうされました?」


 私は、今日のエスコートをしてくれているジュリアがロガン王子に威嚇している。なので、私はジュリアの頭を撫でてあげます。


「決闘を申し込む! 貴様がどれほどの実力を持っているか、この目で確かめたい!」


 え、決闘? いきなりそんな話を持ちかけられても困るんだけど……。


「いやいや、どうしてそんなことに?」

「お前が学園でサボってばかりいるのは有名だが、そのくせ、他の貴族や王族たちから妙に注目を浴びている。ブライド皇子やアイス王子とも関わりがあると聞いた。何を考えているか知らんが、貴様の実力をここで明らかにしてやる!」


 どうやら、私がサボりすぎているせいで、実力がどれほどのものか知りたいらしい。困ったものだ。


「悪いけど、僕は決闘とかあんまり得意じゃないんだよね」

「ふざけるな! 帝国の公爵家がそんな腰抜けなわけがあるか!」

「フライ様、相手にしなくてもいいです!」

「うん? ジュリアは何か知っているのかい?」


 ロガンの目がギラリと光る。ああ、これはもう断れないパターンだな。


「こいつはずっとボクに付き纏っているのです」

「はっ?」

「つっ、付きまとっているのではない!? 俺様は、可憐なジュリアを悪辣なフライ・エルトールから救い出そうとしているのだ!」


 ふむ、どうやら私が学園に来ていない間に、ジュリアとロガンの間には何かしらあったということなのだろう。


「わかったよ。でも、君みたいな獣人王子と戦うなんて、僕が勝てるわけないと思うけどね」

「ほざけ! せいぜいその口だけの貴族の実力を見せてみろ!」


 ロガンはすでにやる気満々だ。


 周囲にはいつの間にか生徒たちが集まってきている。決闘なんて物騒なこと、できれば避けたかったけど、こうなったら腹をくくるしかない。


「ジュリア、君は彼の元に行きたいかい?」

「絶対に嫌なのです! ボクはご主人様の側にいたいのです!」

「そうか、なら僕がすることは決まったね。ロガン皇子、場所と時間を決めてくれ。それで、どう戦うかもね」


 ジュリアがどこにも行きたくないなら、主人である私がすることは彼女を守る事だ。


「今からここでだ!」

「えっ、今から? 準備とかしないの?」

「準備など不要だ! 男なら堂々と戦え!」


 ロガンがその鋭い爪を見せつけ、獣人らしい牙を剥く。ああ、これは本気だな。本当にやるしかない。


 ジュリアがこちらを見つめている。ジュリアは心配そうな顔をしているが、エリザベートはどこか微笑んでいるように見える。


「……仕方ないね。じゃあ、やろうか」


 私は内心のため息を抑えながら、校庭の真ん中に歩み出た。視線が集まる中、ロガンの視線を正面から受け止める。


「人間種が、獣人に勝てぬのは道理。だから、ハンデをくれてやろう。貴様は五分間立っていられたら認めてやる」

「へぇ〜優しいんだね。てっきり、殴り合いをして、どちらか倒れるまでだと言われるのかと思ったよ」

「ふん、獣人を甘く見るなよ。事、肉体のみでの決闘において竜人族にも負けるとは思っておらん」


 そのプライドは素晴らしい。だが、本当に面倒であり、ありがたい。


「なら、それでお願いするよ。五分間、僕が立っていたら勝ち。僕を倒して気絶させたら、ロガン王子の勝ちだ」

「よかろう。瞬殺してやりたいが、少しだけ貴様の強さも見せてもらう時間だ。存分に反撃してみよ」


 僕らは決闘のルールを決めて向かい合う。学園都市では、殺し合いはダメだが、決闘は認められている。


 学問も、魔法も、武術も、戦術も全てが競い合う方が高め合えるというのが、学園の方針だ。


 そして、僕は視線をジュリアに向けた。


「ジュリア、開始の合図を」


 二人の男がジュリアを取り合って戦うのだ。その合図はジュリアが下すべきだ。


「決闘、開始です! フライ様! 負けないで!」

「ああ、そのつもりだよ」


 私は先手を取るために、動き出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 今日はここまで!


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