第31話 手に入れた奴隷を理解しよう。

 学園にも戻って授業を受けるようになった私は、ジュリアにマナーを教えながら勉強も教えていく。


 同級生で入学した各国のお偉いさんにも挨拶を終えたので、私としてはあとはのんびりと、エリザベートやジュリア、アイリーンさんとのんびり過ごして三年間を終えれば、何事もなく領地に帰れる。


 まぁ、まだまだ自分が安全なモブライフを送れるのか不明なので、出来ることはしていくんだけどね。


 奴隷であるジュリアや、ボートレース場でお爺さんにもらった奴隷たちの教育をすることにした。


 奴隷はジュリアを含めて、7名いる。その内、女性が6名、男性が1名だ。


「さて、君たちの名前を教えてくれるかい? その前に僕の自己紹介からするね。僕が君たちのご主人様になったフライ・エルトールだ。帝国公爵家の次男で後々は領地に帰って、悠々自適な老後生活を送るために、兄上の手伝いをして領地の発展を目指すつもりだ」


 まぁ、実際はブライド・スレイヤー・ハーケンス様が大陸統一を目指して、動乱が始まるから、自分の領地だけはしっかり守ろうというだけなんだよね。


 情けない話だけど、平凡な私が世界を救うとか、戦争を止めるのは私だとか、志が高くはない。まぁ、精々自分の周りにいる人たちを守るぐらいのことはやろうと思うけどね。


「はいはい! ジュリアは獣人族です。年齢は十五歳です!」

「うんうん。ジュリアは偉いね」


 ジュリアは年齢こそ、僕よりも一つ下ではあるが、これまで教育というものを受けたことがないので、少し幼い。逃走している時には常に気を張っていたので、警戒を強めていたが、今ではすっかり素直で可愛いワンコ娘だ。


「へへへ」


 モフモフの頭を撫でてあげるととても嬉しそうな顔をする。

 

 僕は残りの六人に視線を向けた。


 コウモリのような羽に黒髪に赤色のメッシュが混じる少女は、自身なさそうな顔をしながらもこちらをチラチラとしてみる。


「君の名前は?」

「メムです。夢魔族なのです」

「メムか、よろしく。今日から君の主人だ」

「あのっ?! あの!?」

「うん?」

「メムは夢魔族なのです。十八歳なのです!」

「ああ?」

「だから、ご飯を食べないと死んじゃうのです」


 うーんと要領を得ないご飯を食べたいということはわかるけど、夢魔族のご飯といえば、普通の食事じゃないってことか? 魔人族はそれぞれ特殊な食事を取ると聞いたことがある。


 つまりは、夢魔族の食事について……あっ、そうか。確か生命エネルギーが欲しいってことか? てか、この世界は魔力もエネルギーになるんだよな?


「メム、ちょっときて」

「はいです!」

「これはどうかな?」


 僕は無属性の魔力をメムに与えてみた。


「あわわわっわわわわわあっわはぁあー!!!」


 何やら物凄く艶かしい声をあげて、座り込んだ。しかもお漏らしして気絶した……。仕方ないので、メイドさんにメムのお世話を頼んで片付けをしてもらいました。


 気分を取り戻して、私は次の少女に意識を向けました。


 緑色の肌に、頭にお皿を乗せて、背中に甲羅を背負った少女。


「カッパ族のモムモです。十八歳です。私も少し良いですか?」

「うん?」

「カッパ族はお皿が乾くと力が出なくて、死んでしまいます。常にお水をいただけないでしょうか?」

「なるほど、携帯水が必要ってことか」


 水筒を用意してあげれば良いかな?


「わかった。なら水筒を常に持ち運べるようにしてていいよ。あとは、水仕事関係をしてもらえるかな?」

「ありがとうございます!!!」


 落ち込んでいた顔が明るくなる。


 三人目に視線を向ければ、高身長のボーイッシュ男子。細身の体ではありますが、筋肉質で引き締まった体をしている。


「君の名は?」

「僕は農家をしておりましたテルだよ。十六歳だよ」

「テルか、唯一の男子だから期待しているよ」

「それ」

「えっ?」

「僕は体は男だけど、心は女だから、女として扱って欲しいよ」


 うん。ムッズ。つまりあれだね。男の娘なんだね。確かに顔は可愛い。雰囲気もどこか柔らかで、女性っぽいなって思ってたよ。


「わかった。テルは、女の子なんだね。それで? 何かしたいことある?」

「僕は農家だったから、農業がしたいよ。作物を作るのが好きだから、奴隷として売られたちゃったけど、家で働くのは嫌いじゃなかったよ」

「わかった。今は学園都市だから、なかなか農業は難しいと思うから、中庭か、そういう農地が確保できたら用意するよ」

「うん! ありがとう。ご主人様大好きだよ!」


 まぁ中性的な可愛い系男の娘もありだね。私は多様性にも対処していく。 


 次の女性は耳の長いエルフだ。異世界定番なので、若干興奮を覚えるけど、警戒心が一番強い。ずっとこっちを睨んでるよね。


「えっと、君は?」

「精霊族、森の守人シーバ、130歳」


 名前と種族だけ告げて、さらに睨んでくる。エルフだから年齢はみんなよりも上だけど精神年齢はわからないな。


「えっと、シーバは何の仕事をしたい?」

「……自然」

「えっ?」

「草木に触れていたい」


 なるほど、精霊族で自然に関わる仕事をしたいということか、テルと近いが、農作業とは違うのか?


「中庭で草木の世話を頼めるか?」


 私の言葉に耳がピクピクと動いている。案外、素直な子なのかもな。


「それで良いかい?」

「いい」

「そうか、ならよろしく頼むよ」


 慣れるのにもう少しかかりそうだけど、素直なところは可愛いね。


 五人目は全員の中で一番小柄な少女だ。ただ、小柄な割に筋肉質だ。


「えっと、君の番だね」

「はいです! 私はドワーフ族のチョコって言います! 20歳です! 私はものつくりがしたいです!」


 先ほどのエルフとは違ってハキハキと自分の意見をいう子だな。


「わかった。出来る環境を整えるようにしよう」

「ありがとうございます!!!


 深々と頭を下げる20歳ではあるが、見た目は一番ロリだな。


 そして、最後はドラゴンのような尻尾に腕を組んでこちらを威圧している。


 そう、シーバの睨みとは違って、威圧を向けてくる。

 ボートレース場のお爺さんにもらった奴隷だ。


「我が名は赤龍王の娘、レンナ! 奴隷には落ちたが、私は自分よりも弱い者に従う気はない。貴様は私よりも強いと証明できるのか?」


 また厄介な奴隷を押し付けられたようだ。

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