第22話 同年代の男子達は一癖あるね。

 午後になって、エリザベートとアイリーンは他の授業があるということで、ジュリアと合流した。モフモフな頭を撫でながら次の授業に参加する。


 次の授業は実技授業であり、集団競技をするようだ。



 授業内容:「フラッグ奪取」



 学園戦術実践科の特別授業として、「フラッグ奪取」という団体競技が行われる。これは、チーム戦を通じて戦略的思考や指揮能力を養うことを目的としている。



 ルール概要



 1、目的:自チームのフラッグを守りつつ、敵チームのフラッグを奪取する。また制限時間内にフラッグを最も多く奪取したチームが勝利。

 


 2、チーム構成:4つのチームに分けられて陣地を決めてフラッグを配置する。


 各チームはリーダーを含む10名で編成。


 役割


・ガーディアン: 自陣のフラッグを守る。

・アタッカー: 敵陣地へ攻め込む。

・スカウト: 敵の動きを探る。


 

 3、勝利条件:敵陣からフラッグを奪取し、自陣に持ち帰る。制限時間(1時間)終了時に最も多くのフラッグを保持しているチームが勝利。



 授業内容を聞き終えて、代表決めに入れば、すぐに四人の代表が選出される。


 各国の代表が集まる学園らしいスポーツだよね。


「君が最後のリーダーか?」


 四チームの代表者が決められて、その一人に選ばれてしまった。


 そんな私に声をかけてきたのはアイス王子だ。


 爽やかでキラキラとした見た目の王子様。まさしく女性の理想的な男性が目の前で微笑んでいますね。


 もしも、私の心が女性ならば一目惚れしてしまうかもしれません。


 理想の白馬の王子様という奴が存在しています。


「これは初めまして、帝国公爵家が次男フライ・エルトールです」


 私は無難に自己紹介をして、握手を求めるように手を差し出す。


 チームは、各国や身分によって勝手に分かれているようだ。帝国の者たちからすれば、私の位が一番高いので遠慮して代表を譲ってきた。ブライド皇子がいれば彼が代表者になっているでしょうね。


 残念ながら、彼は同じ授業を受けていません。 


「うむ。私はミンティ王国第一王子、アイス・ディフェ・ミンティだ。帝国に貴殿のような男がいたとは知らなかった」

「はは、学園をサボっておりましたからね」

「何? サボっていた?」


 怪訝そうな顔をされてしまいますね。


「帝国は変わった者が多いな」

「そうですか?」

「言いたくはないが、帝国の皇子殿にはあまりいい印象を持っていない」


 本人がいないところで言ってくるのは陰口だが、アイス王子は本人がいても口にするので、陰口ではない。むしろ、真っ向から勝負を挑んでいく。そしてそれを面白いと思うタイプだ。


 ただ、交戦的な偽善者に見えるが。その実、負けず嫌いで己の信念を持って生きているので、なかなかに強メンタルの持ち主なのだろうな。


「そうですか。まぁ人それぞれじゃないですか?」

「ふむ、意外だな」

「何か?」

「君の周りの帝国民たちは、皇子のことを揶揄すれば激昂するか、苦笑いを浮かべる。だが、君はそのどちらでもない。飄々として掴みどころがないな」


 どうやら今のやり取りでもこちらを分析しようとしているようだ。アイス・ディフェ・ミルティは決してバカな男ではない。

 

 あの傲慢不遜でありながら、能力がある者を取り立てるカリスマ性を持つブライド様に対抗するだけの男なのだ。


「はは、私は平凡な公爵家次男ですよ。今日はお手柔らかにお願いします」

「ふむ。自分で平凡というのか? 本当に君という人間は面白いな」


 爽やかに笑われても、惚れてしまいませんからね。うん、でもかっこよかったです。


 立ち去っていくアイス王子を見送り、モフモフしているジュリアに問いかける。


「ジュリアは、アイス王子を見てどう思う?」

「わふ〜、ふっ?」


 ジュリアは頭を撫でられると嬉しそうな顔をしてくれるので、ついつい撫ですぎてしまう。問いかけても興味はなさそうだ。


「あいつ? う〜ん、嘘の匂いがします! だから嫌い」


 撫でている時のジュリアは語彙力を失ってしまうが、それでも確信はついているように思う。


「はは、見た目は気にしないんだな」

「見た目? う〜ん、フライ様の方が良い男」

「ありがとう」


 うん。秋田犬風の可愛い女の子に良い男と言われて悪い気はしないね。頭を撫でられてアホの子になるのも含めて可愛いや。


「ジュリア、そろそろ活躍してもらいたいから、意識をハッキリさせてね」

「はい!」


 頭をポンポンしてあげると、意識を覚醒させて焦点が定まる。


「そろそろ授業が始まるから、せっかくだから遊ぼうか?」

「遊び?」

「ああ、ジュリアに活躍してもらいたいな」

「頑張る!」

「ああ」


 不意に視線を感じれば、別チームのリーダーである獣人がこちらを見ていた。


「あれは……」

「獣人王子・ロガン・ゴルドフェング様だね」


 ジュリアが教えてくれたロガンは、何やら私に対して物凄い敵意ある視線を向けてくる。そのまま近づいてきた。


「おい、貴様! 獣人の娘を奴隷にしているのか?!」


 なるほど、ジュリアが奴隷であることを察して怒りを向けてきたのか、まぁ獣人の王子なら怒りを覚えても仕方ないね。


「そうだよ。何か問題でも?」

「なにっ?! 貴様、この勝負で俺様が勝ったなら、その娘を解放しろ!?」


 何やからいきなり賭けを仕掛けてくる王子様に私は笑顔で返事をする。


「お断りします」

「なっ!?」


 丁寧に頭を下げてお断りして、ジュリアを抱きしめる。小さくてモフモフで本当に可愛い。


「これは僕のなので」

「フワアアア!!! フライ様!!!!」

「許さんぞ! 覚えていろよ。絶対に後悔させてやる!」


 勝手に怒りをぶつけて立ち去っていく。難癖をつけてくるかと思ったが、意外に冷静なようだ。


 本当にこの学園は様々な人種が集まっているね。

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