逃げられない

天川裕司

逃げられない

タイトル:逃げられない


ある日、街を歩いていたら、

絶世の美女に出会ってしまった。


そのとき俺はちょっとムシャクシャしていたので

その子のあとを何となくついて行ってしまった。


別についてって何かしようってわけでもない。

ただ仕事もリストラされて就職もうまくいかず

時間がずいぶん余ってたから

そのあとをついて行っただけ。


でもその子はどんどん郊外へと歩いて行き、

人気の引いた道をずっと歩き続け、

後ろは1つも振り返らず、

寂しい景色の中に消えて行く…ようだった。


「…一体どこまで行くんだろう?」

その子の家に帰ってるだけなのに、

俺はふとそんな不思議を思う。


そろそろ引き返そうかなと思ったのだが

ここが不思議だった…

なぜかあの子のあとをついて行ってしまう。

その尾行をずっとやめられないのだ。


(20分ほど歩いた先で)


「…え、こんなトコに…」

あの子の家が本当にあるのか?

と強烈な疑問が漂ってきた。


全くの林道、山奥?

もちろん民家は周りに1つも無く、

コンビニも無ければガソリンスタンドさえ無い、

本当にこんなトコで人が住めるのか?

と十分に思わされるほどの環境。


そしてその女の子が入って行った先は…

「…ウソやろ…」

全くの廃屋だった。


廃屋と言うかもう崩れかかってるバラック小屋で、

物置にもならない土蔵造りの、

ほんと「大正時代から明治時代

に建てられたんじゃないの?」

って思わされるほど、それを見ている

その場からさえ立ち退きたくなる

ひどく寂しい景観だった。


そしてそのとき初めてその子は

俺の方を振り向いた。

そして何かしゃべったようで、

その声は俺の心に直接届いたような

そんな感じがしたんだ。


「ふふふ もう逃げられないわよ…」と。


そのとき瞬発的に体が動き、

俺は自由になれた。


そして急いで引き返し、

もう暗くなった道をどんどんどんどん歩き、

都内へ帰り、やっと自分のアパートに到着。


「はぁはぁ…帰れた…」

たったそれだけの事だったんだが変な話、

正直にそう思えた。


で、ドアを開けて部屋に入ってみると

「なっ…!」

部屋の中は真っ暗なあのバラック小屋…?


恐怖で急いで部屋から出てみたが、

「な、なんで?!」

またバラック小屋のその部屋に戻ってる。


瞬間、思った。

「あの子がその内どっかから出てくるんじゃねぇか…」

と。

しかも次に現れるのは、美人なあの様相ではなく、

恐ろしい何かの形に姿を変えて現れるんでは…

なんて勝手な妄想だが、密かに思ったりしてる。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=8ZADFmGxxXY

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逃げられない 天川裕司 @tenkawayuji

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