夢幻戦記 骸帝聖戦(デモンカイゼル・クルセイド)
QUESTION_ENGINE
EPISODE1
■■プロローグ■■
001:プロローグ 冥夜の狂宴(Ⅰ)
立っている事が困難なほどの大嵐。散弾銃に撃たれてしまったかのような雨粒が全身に打ち付ける。
破戒僧の
それでも破戒僧は精神集中。鬼神の如き形相で法術陣を維持し続ける。手にした数珠。
数珠が破戒僧にとっての
「小娘が! この果たし合い、我等が相手だった事に後悔するのだな!」
「…………」
敵からの返答無し。臆したのか?
破壊僧は
「……互いに死に果てし身、もはや女子供とて容赦せぬ。いざ参る」
死霊法術師の補助と制御により、鎧武者は天下無双と噂されていた生前の戦闘力を完全に取り戻していた。
「カァーーーーツ!」
破戒僧は気合いを入れ直した。自身の
生成された強大なエネルギー。術者は「法術陣」を構築することによって様々な物質やエネルギーへと「変換」を必要とする。
破戒僧は
破戒僧は威気を高めながら、高度で複雑な法術陣を維持し続ける、強靱な精神力。
同じく法術で構築した
それを可能にしている破戒僧、かつては神童と噂された才能溢れる法術師。
「ウオオオオオオオオ!!」
鎧武者は
戦闘用に高められた威気、「
「グオォ!」
「ウオゥ!」
鎧武者は大太刀を自在に操り、敵アンデッドを追い詰める。
かつて天にも届く、千メートル近くの高さを誇った超高層ビル。
転移によってビルは半分に折れていた。風化、朽ち傾きかけたビルの壁面を鎧武者と少女が縦横無尽に駆け回る。
決闘の相手は小柄で華奢な少女。容姿はフードとマントに隠され不明。
「斬れぬ!?」
破戒僧は焦り、苛立つ。我が
「そんなはずは……無い!」
何度刀を振るっても、紙一重で躱されてしまう。それでも鎧武者は記憶と身体に刻まれた剣技を駆使し『少女型アンデッド』を攻め続けた。
「オオオオオッ」
鎧武者の猛攻。大嵐の中、倒壊したビル、水に濡れたコンクリート、足場は極めて悪い。
「ムン!」
それでも巨体を何度もジャンプさせ、少女型のアンデッドを追い詰めていく。
「もう何度斬られてもおかしくないはず……なのに!?」
少女型アンデッドの動きは不安定な足場の中、まるでダンスを舞い踊っているかのように優雅。
「おのれ。逃げ回ることしか出来ぬのか!?」
アンデッドは意識や人格「人の心」は完全に失われている。だが、脳や神経、身体に刻まれた「生前の記憶」は死後暫く肉体に留まっている。
死後直後ならより多く、
それが死体を動かす
鎧武者の記憶は、破戒僧にある技を発動するよう告げた。
「承知!」
敵の動きは見切った、敵もこちらの斬撃がどれ程の速さか、慣れ始めているはず。
故に鎧武者が繰り出す必殺技は躱せぬだろう。
「
瞬間、鎧武者の巨体は残像を残し少女の視界から消えた。
二本の大太刀をX字に構え超音速で突進、達人でも反応出来ない超高速の必殺技が少女型アンデッドに襲いかかった。
先刻までの速さに慣れた敵は為す術無く斬られ……
鋭い金属音! 斬ったはずの少女が斬られていなかった。二本の大太刀は少女の首筋に届く前、ほんの数ミリ、見えない鎧に阻まれていた。
「何!! ……防御闘気!? ……なのか」
少女の身体は、全身が強力な闘気によって守られ、鋼鉄をも断ち斬る鎧武者の斬撃が弾かれていたのだ。
「
鎧武者は何度も大太刀を振り下ろした。金属同士が衝突しているかのような火花が飛び散る。
「斬れろ!」
「斬れろ!」
「斬れろ!」
少女は避けようとすらしなかった。
全ての重斬撃は少女が纏っている闘気の鎧に防がれ、身体には届かない。鋭い金属音が嵐の夜に鳴り響き続けた。
「斬れろ! 斬れろ! 斬れ斬れ斬れ斬れ……」
狂ったように刀を叩きつける。
鎧武者渾身の一撃、太刀は刃こぼれ。
「ウオオオ!」
最後は大太刀が一本折れてしまった。
「
魂無き死者が魂より発する生命力、オーラを発生させる事は絶対不可能。「オーラを発生させられる」。それは生きているという
だが、敵の死霊は間違い無くオーラ……否、極限まで高められた戦闘用の威気である「
「有り得ぬ!! 絶対に有り得ぬ!! バーストせずこれほどの闘気を……」
破戒僧は少女の後方で腕組みして立っている術者、死霊法術師に視線を移した。
「何もしていないのか? 一体どの様な秘術を用いているのだ?」
目の前で戦っている少女は
「何をすれば、死霊のみで闘気を? 解らぬ!? 何の術式も展開していない……敵は拙僧以上の……」
目の前で戦っている少女型のアンデッド、生前どれ程の強者だったのか? そして、ただ立っているだけの死霊法術師も自身以上の
破壊僧の自信が大きく揺らいだ……
『冥夜の
「認めぬ! 拙僧は絶対に認めぬぞ!!」
鎧武者は一旦飛び退き、少女型アンデッドと距離をおいた。
「全力で参る! 『バースト』!!」
対峙した両者。死闘に相応しい大嵐の夜。戦いは次の局面を迎えようとしていた。
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