01-33.眠りと囁き

 疲労は限界に達し、やがて彼女のまぶたは重くなっていった。目を閉じると、意識がふわりと遠のいていく。


 その時、不意に誰かの声が聞こえた。


「あなたは……まだ終わっていない……」


 優しく囁くような声だった。それが誰のものなのか分からない。ただ、その声には不思議な温かさがあった。


「私は……何をすれば……?」


 彼女の問いに答える者はいない。けれど、その声は続けて言った。


「あなたにはまだ、たすべき役割がある……」


 その言葉が意味するものを彼女は理解できなかった。しかし、声が消えた後、心の奥底に小さな光のような感覚が芽生めばえていた。それはほんのかすかな希望だった。

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