01-31.廃屋へ

夜が深まる中、彼女は小さな廃屋はいおくを見つけた。屋根は半ばくずれ、窓ガラスは粉々に割れている。それでも、風をしのぐには十分な場所だった。


「ここなら……少しだけ……」


ふるえる足で廃屋はいおくの中に入り、くずれかけた壁にもたれかかるように腰を下ろす。床にはほこりが積もり、壊れた家具が散乱しているが、彼女はそれを気にする余裕もなかった。


背中の翼がかすかに震えた。体の一部であるはずなのに、それは彼女にとって異物であり、同時に存在を否応いやおうなく思い出させるものだった。


「どうして……こんなものが……」


翼をでようと手を伸ばすが、その途中で止めた。触れることで、さらに自分の異質さを感じてしまう気がしたからだ。

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