第31話 エッチな表情

◆◆◆◆


 今回の王様は千堂さんの友人で、王様ゲームを提案した人物じゃない方。まあ、先ほど俺が全然過激ではない命令を指定したし、まだ2回戦目なので大した命令は出てこないだろうと高を括っていたら――。


「命令決めたよ~。王様の命令は~。」

「「「「「「ぜった~い。」」」」」」

「1番の人が5番の人の膝の上に座る。そして5番の人が1番の人のおっぱいを10秒間揉みしだく。」


 危うく飲んでいたジンジャエールを吹き出しそうになった。俺は2番であり1番でも5番でも無い。しかし、1回戦目と2回戦目の命令のギャップが激しすぎる。というか、俺が5番だったらどうなっていたんだ? 誰かの胸を揉みしだいていたのか? それに、3回戦目以降はどんな命令が出てくるんだ……。


 そんなことを考えている内に、千堂さんが夜空さんの膝に跨がり、ゆっくりと腰を下ろす。それと同時に「キャー」という歓声が上がった。どうやら5番は夜空さん、1番は千堂さんのようだ。


 夜空さんは背中越しに、千堂さんの胸へと手を当てる。千堂さんの口元から「んっ♡」という可愛らしい声が漏れた。


「い~~~ち。」


 俺を含む5人のギャラリー達がカウントダウンを始める。しかしカウントのスピードが遅く、1数えるのに3秒くらい掛かっているのではないか。


 夜空さんの手つきがどんどんと激しくなる。可愛らしいフリルの付いた、黄色い水着に守られている千堂さんの胸が、夜空さんの手の動きに合わせてグニュグニュと形を変えた。そのたびに、千堂さんの閉じられた唇の隙間から「んっ♡んんっ♡」といやらしい声が漏れ出る。


 夜空さん手から逃れようと腰を体をくねらせる。その仕草が官能的で、何かいけないものを見ているような気分になった――。いや、いけないものなのだろう……。


「よ~~~ん。」


 カウントはまだ半分も経っていない。


 夜空さんは一瞬だけ手を止めたかと思うと、千堂さんの水着の上に人差し指と中指の爪を立て、胸の中央あたりを引っかき始める。それと同時に千堂さんの身体は、まるで電流が流れたように”ビクッ”と震え「ひゃんっ♡」と、今までで一番大きな声を上げた。


 夜空さんは獲物に襲いかかるサキュバスのように、妖艶な表情でにやりと笑い千堂さんの耳元で囁いた。その言葉が俺にもギリギリ聞こえた。


「萌華ちゃんの弱点、見つけちゃった♡」

「やめ……て……♡」


 千堂さんは震えるような声で呟くが、夜空さんは、千堂さんの呟きを無視して水着越しの胸に指を深く沈み込ませ、指先の動きを激しくする。千堂さんは両手で口を抑ているが「んんん~~~~~~っっっ♡♡♡ んんん~~~~っっ♡♡♡」と喘ぎ声とも悲鳴ともつかない声が漏れ出る。


 目の端には涙を浮かべながら、夜空さんの膝の上で足をバタバタと動かして耐えていた。


 あまりにもいやらしい光景で、王様ゲームの参加者以外が見たら妙な勘違いをされかねないだろう。


 俺は早くカウントを終わらせようと早めに切り上げるが、酒の入っている周りのギャラリー達は彼女達に見とれ、カウントが遅くなっていた。


「な~~~~~~~~~~~な。」


 まるで、息が続く限り進まないのではないかと思う程長いカウントダウン。その間も千堂さんは身体をビクッビクッと痙攣させ、時にバタバタと動かしている足を、つま先までピンと強張らせながら夜空さんの指の動きに耐えている。


「じゅ~~~~~~~~~~~~~~~~う。」

 

 長い長いカウントダウンを耐え、解放された千堂さんは、涙とヨダレを垂らし恍惚の表情を浮かべ、ぐったりとしていた。


 俺と話していた時の可愛らしい彼女からは想像もつかない――何と言うかエッチな表情だ。


 彼女は夜空さんに抱えられて膝の上から立ち上がると、直ぐにプールサイドに座り込んだ。


「く、九条社長……ヤバかったです。上手すぎ……♡」

「ありがとう♡」


 夜空さんは、そう答えると千堂さんの胸を鷲掴みにする。千堂さんは恐らく、今まで責められ続けたせいで敏感になっており、その上身構えてもいなかったのだろう。「ああんっっ♡」という、今までで一番いやらしい声を上げて急いで口を抑えた。そして指先で涙を拭いながら、


「もう……九条社長……♡」


と力なく声を上げた。恐らく怒りたいのだが頭の中までトロトロで、強い声が出なかったのだろう。夜空さん……これ、もしも千堂さんからセクハラで訴えられたら勝てないのでは……?


 夜空さんは千堂さんの濡れた髪を撫で、


「ごめんごめん。萌華ちゃんが可愛い過ぎて、ついついやり過ぎちゃったわ。」


と言いながらドリンクを飲ませた。


◆◆◆◆


 5分程度で千堂さんは回復し、王様ゲームの3回戦が開始される。


「「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」」


 今回俺の引いた番号は5番だ。2回戦では1番と5番が命令を受けていた。心理的に、2回連続で同じ番号は指名しにくいはずなので、番号としては良い方だろう。まあ、理想を言えば王様になりゲームの方向性を修正したかったが、こればかりは運なのでどうすることも出来ない。


 今回の王様は、千堂さんの友人で王様ゲームを提案した人物だった。


 まあ、彼女は過激な命令を出しそうではあるが、まだ3回戦のなので、最も過激な命令が”キス”や”口移し”と決まっている以上、それより優しい命令が出ることは決まっている。


「命令決めた! 王様の命令は~。」

「「「「「「ぜった~い。」」」」」」

「1番と5番がポッキーゲーム。因みに失敗したら、罰ゲームで10秒間チューね」


 そ……そんな馬鹿な……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る