嘘と英雄譚 剣魔の世界を統べる!
@HANAMIHANATABA
第1話
《ゲート》と呼ばれるものが現れてから、世界には異形の者たちが、人間の領域を犯し始めた。
─世界は、たった七時間で、全てを失った。あの頃の繁栄も、あの頃当たり前にあった『明日』も・・・。世界の半分は雪に覆われ、世界のほとんどが、『瘴気』に蝕まれた。海は汚れ、空は穢れた。それから一年半。生き残った人間は、約一割の大地に『限られた人』だけで楽園を作った。その『限られた人』ではない、一人の盗人(少年)が、魔物を統べる王を倒したのは、そう遠くない話だった。
「すんませんでしたーーーーー」
これは、その盗人(少年)が、世界を偶然救った話だ。盗人(少年)の名は、カール・マリアベル。まだ十五歳の子供だった。
「待って! まって! なんで、焚火していただけの俺が、魔物に追いかけられてるんだよ!!」
カール・マリアベルがいた場所は、人間が住める約一割の大地に存在しているカーナベル森林だが、人間だけが住んでいるわけではなく。魔物も当然のように存在している。しかも、カール・マリアベルが焚火をしていた場所は、人間が近づけない、魔物の縄張りでもあった。
─必死に逃げているカール・マリアベルに、カーナベル森林の『瘴気』が効かないのは、カール・マリアベルが持っている。光るランタンがあるおかげだった。
・・・樹木を必死に避ける。魔物は、樹木をなぎ倒しながら進んでいる。追いつかれるのは目に見えていた。
─その瞬間。魔物がなぎ倒された樹木を前へと投げた。
「えっ・・・!?」
小鳥たちが、なぎ倒されている樹木から逃げていく。
「あ・・・危なかった・・・」
本来ならカール・マリアベルに、樹木が当たり即死するはずだった。だが、奇跡的に、魔物たちが樹木を投げる力のコントロールを誤ってくれたおかげて、カール・マリアベルには、間一髪のところで当たらなかった。
─魔物たちが、カール・マリアベルを見失い、縄張りに帰っていく。それを見ていたカール・マリアベルは、安全になったら樹木から、降りるつもりだった。
「ひえっ!?」
魔物たちが、縄張りに帰ろうとしたその時だった。赤い髪の少女が、魔物たちの目の前にいた。それを見た魔物たちは、「ギャアアアアーーー」、と少女目掛けて走っていく。
「おい!魔物ども、こっちだ!!」
カール・マリアベルは、ゴリラに似た魔物を引き付けるために、樹木から飛び降りた。
「アッ」
魔物は、先ほど見失ったカール・マリアベルをすぐさま殺そうと、全速力で走りだした。
─カール・マリアベルが、魔物に対して、唯一対抗できる武器がある。
「くらえ!」
右手で持っていた白い球体を、魔物に向かって投げつける。すると─
「がっ があああああ」
カール・マリアベルが投げた白い球体が、魔物と衝突する前に、爆発した。ミノタウロスの角と爆薬が詰め込まれた爆弾。
・・・魔物は、逃げ帰った。
「大丈夫・・・」
カール・マリアベルは、先ほど助け高い髪の少女に近づいた。
「だれ・・・?」
「俺は、カール・マリアベルだ」
カール・マリアベルは、白い長い髪に、青の瞳を持つ美男子だった。
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