間踊 太陽の捜し物
宮本いづみは、昔から「太陽みたい」と言われる子だった。
小学生の頃も、中学生の頃も、周りの空気を明るく変える力を持っていた。
誰かが元気をなくしていれば、そっと寄り添い、笑顔を引き出す。
いつの間にか、彼女の周りには自然と人が集まり、笑い声が絶えない。
でも、それは同時に、いづみにひとつの思いを抱かせるきっかけになっていた。
(私はみんなを照らしてるけど、私を照らしてくれる人っているのかな。)
いつも笑顔でいられるわけじゃない。
時には疲れて、何も考えたくない日もある。
そんなとき、誰かに自分を優しく包み込んでほしいと思うことがあった。
けれど、そう思う自分を見せるのは、いづみにとって恥ずかしくて怖いことでもあった。
4月9日、入学式の日。
新しい高校生活に胸を弾ませながらも、どこかで変わりたいと思う自分がいた。
(よし、まずは1組を楽しくしちゃおう!)
体育館への移動中も友達と笑い合いながら、いづみは自分にそう言い聞かせた。
クラスメートとのおしゃべりに夢中になっていたいづみだったが、ふとした瞬間、隣の列に目をやった。
向こうもこちらを見ていたのだろうか。
目が合ったのは、黒髪の静かな少年だった。
いづみは自然に微笑んだ。
ただの習慣のような微笑みではなく、なぜか心の奥に響くものを感じる笑みだった。
彼はすぐに目を逸らしてしまった。
(……なんか、ちょっと違う。今まで出会った人とは。)
「いづみちゃん、どうかした?」
「ううん、なんでもないよ~!」
友達にそう言いながらも、彼女の心には小さな期待が芽生えていた。
もしかしたら、この出会いは何かを変えてくれるかもしれない。
そんな人が、隣のクラスにいる気がした。
桜の花びらが風に舞う中、宮本いづみは、これから始まる物語に胸を膨らませていた。
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