第35話

 ドキドキしながら生徒会執行部室へと向かう。


「戸崎です。入るね」


「あぁ」


 低音のボイスで帰ってきた。


「一条くんを連れてきたよ。私はこれで」


「すまないな」


 生徒会執行部室には姉さんや二条さんを含め8名ほどが居た。

 生徒会長と思われる方は学生と思えない威圧感で鎮座している。


「すまない、いきなり呼び出してしまって」


「いえいえ全然大丈夫です」


「私は生徒会長の飯塚涼音という。以後よろしく頼む」


「僕は一条奏音と申します。こちらこそ今後よろしくおねがいします」


 どうやら怒られる雰囲気ではないようだ。


「まず、盗撮カメラを見つけてきてくれてありがとう。感謝する」


「いえいえ。大丈夫です」


 そのことか。よかった〜。


「そしてだな...すごく言いづらいんだが...」


「私からいいましょうか?」


 二条さんがいう。


「いいのか?」


「ええですよええですよ。吹奏楽部が起こしたことですし吹奏楽部の代表として話はせんといかんです」


「すまないな」


 吹奏楽部に関すること...?吹部との関係は昨日の部活体験だけなんだが...


「奏音くん、昨日部活体験に来てくれとったな」


「はい。その節はどうもありがとうございました」


「ええねんええねん。それで...マウスピースやねんけど私が洗っとくって言うたやんか」


「そうですね。そうだった気がします」


 二条さんは数秒固まった後に口を開いた。


「そのマウスピース...盗まれてしまってな」


「え?」


「裏サイトに流されてしまったようやねん」


「はい?」


 空気が重くなる。

 マウスピースが盗まれた?俺のを?しかも裏サイトって何?流されるって何?


「なくしたとかじゃなく?」


「盗まれてしまった」


 生徒会長がいう。


「で??裏サイトに流されてしまったんですか?」


「...あぁ」


 えええ?はい??

 鈍感な俺でも12年間この世界に住んで、その出来事の重大性は理解している。

 この世界においてこの事件が起きたということは信頼性を大きく揺らがすことになる。


「僕の使ったマウスピースを盗んだって…誰がいったいそんなことを?」


「...まだわからないの。必死になって探してはいるんだけどなかなか情報が出てこなくて」


 姉さんが言った。外行きの声色や性格で話されるのはなんだかむず痒いな。


「あぁ...正直これ程とは思っていなかった。相手はなかなかやり手だ。これが初めてとは思えないレベルでな」


 続け様に飯塚さんは仰る。


「他にも君の私物が沢山売られているようなんだ。下...着も売られてしまっているようだ」


 あぁ〜確かに替えの下着がなくなってたような。


「君には生徒会としての謝罪と、申し訳ないが君にももう少し自己防衛をしてもらおうと思って今回は呼び出させてもらった」


「は、はぁ」


 別に生徒会が悪いわけでもないんだから謝罪してくれなくていいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る