第16話
ジェシカに手を叩きつけられるというアクシデントがあったが、ついに婚約破棄の決行日が来た。
俺は貴族のパーティー中に高らかに宣言するのだ。ツインローズ王国第一王子にして王太子マグーマ・ツインローズとして!
「リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことマグーマ・ツインローズ第一王子との婚約を破棄させてもらう! それと同時に、貴様をアノマ・メアナイト男爵令嬢をいじめた罪で訴える!」
俺の隣には望まぬ婚約者ではない。俺の運命の相手アノマ・メアナイト男爵令嬢だ。ドレスは少し安っぽいかな。でも俺は彼女がそれでいいなら気にしなかった。それにそれどころでもないしな。
「はあ……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」
一応俺の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナムは呆れたふりを装って聞いてくるが、内心では分からない。きっと王太子妃の立場を失うと思って焦っているはずなんだ……と思うのだが面倒くさそうにしているのは何故だ? だが、その余裕そうな顔も直ぐに駄目にしてやる!
「フン! しらじらしい! 素直に認めたらどうだ、この可愛く可憐なアノマをいじめた罪を!」
「いじめた罪?」
いじめた罪と俺が叫んでもリリィは不思議そうな顔をするだけだった。何だその顔は? 何様のつもりだ!
「何かのお間違いでは? わたしには全く身に覚えがございませんが?」
「何をいうか! 俺がアノマと仲良くしているから、嫉妬したお前がアノマに罵声を浴びせたり、教科書や服を破るといういじめを行っているということは分かっているんだ!」
「ああ、それでしたら罵声ではなく注意をしただけですよ。『婚約者のいる男性と深く付き合うのははしたないですよ』と言いましたが?」
「え?」
「それと、『格上の、ましてや王族の方とはもっと礼儀をもっと接しなさい』とも注意をしましたが、決して罵声ではありません」
「な、何!?」
は? 罵声を浴びせたんじゃなくて注意しただけ? そんな? どういうことだ? 俺が動揺する間もなくリリィの言葉を支持する者たちが次々と現れ、私の言葉を打ち消し始めた。
「リリィ様の仰ることは事実ですわ。わたくしはリリィ様が優しくアノマ嬢に注意しているのを何度も拝見しましたもの」
あれはライア・マネー伯爵令嬢。宰相の娘でリリィの友人にして取り巻きのような令嬢だ。っていうかジェシカほどではないにしろリリィに執心しているから庇っているだけで、
「僕もこの目で見ましたが、リリィ嬢に何の落ち度もありませんよ。むしろ何度も注意されて反省しないメアナイト男爵令嬢に問題があります」
え? あれはジュエール・アイスエージ辺境伯令息。我が国の外務大臣の息子でリリィと成績を競い合うライバルのような男のはずなのにリリィを肯定するだと?
「殿下、私もメアナイト男爵令嬢のことは困っておりましたぞ? プラチナム公爵令嬢が何度も優しく丁寧に注意されていたというのに……殿下は何を根拠にいじめたと?」
学園の、それも俺のクラス担当の教師ジン・パペティア先生までも……え? もしかしてリリィは本当にアノマに罵声を浴びせたんじゃなくて注意しただけ? そんな……いや、だが!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます