第3章

1.ローズの目覚め。








 ――その魔族の少女は、最弱とされていた人型だった。

 魔族の父親に、人間の母親。異種族間ではありながらも珍しく、捨てられることのなかった彼女は女手一つで育てられた。しかし母は人間側から迫害される。行く先々で差別され、住んでいる家が燃やされることもあった。



『お母さん、お願い……』

『あぁ、あたしの最愛のローズ……あなたは、強く生きて』



 そして、ある時。

 暴力的な村人の手によって、少女の母親は命の灯火を失いかけていた。力なき彼女たちは逃げ惑いながら、身を寄せ合いながら別れの時を待つしかない。

 少女は呼吸の途絶えそうな母の頬に触れながら、大粒の涙を流していた。

 そんな彼女に、母は最期の祈りを届けるのだ。



『そう、強く……』――と。



 強く生きて、苦境に負けないでほしい。

 母は当たり前の生涯を願った。



『お母さん……!』



 そして、最愛の娘の胸に抱かれて息絶える。

 娘――ローズは喉が張り裂けんばかりに泣き叫び、己の無力さを悔いた。




『ああ、ああああああああああああ……っ!?』







「――あぁ、眠っていたんだな。僕は」



 椅子に腰かけていたローズは、自身が記憶の旅をしていたことに気付く。

 正式ではないものの、いまや次期四天王の一角。彼女は大きく伸びをしながら立ち上がって、窓から荒廃した魔族領を見下ろした。

 そして、眉をひそめながら口にする。



「この世界は、強くなければ生きてはいけない。でも、あの方は――」



 先代の四天王――リクのことを想いながら。

 彼女は胸に手を当てながら、傍らのテーブルに置かれた『押し花』を見た。



「そんな僕に、居場所をくれた」




 そうして静かに、目を細めるのだ。




――

体調崩してました。

今回短いですが、次回からどうにか戻します。


※他の件諸々で、更新できずすみません!

頑張りますので少しお待ちを!

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