第3章
1.ローズの目覚め。
――その魔族の少女は、最弱とされていた人型だった。
魔族の父親に、人間の母親。異種族間ではありながらも珍しく、捨てられることのなかった彼女は女手一つで育てられた。しかし母は人間側から迫害される。行く先々で差別され、住んでいる家が燃やされることもあった。
『お母さん、お願い……』
『あぁ、あたしの最愛のローズ……あなたは、強く生きて』
そして、ある時。
暴力的な村人の手によって、少女の母親は命の灯火を失いかけていた。力なき彼女たちは逃げ惑いながら、身を寄せ合いながら別れの時を待つしかない。
少女は呼吸の途絶えそうな母の頬に触れながら、大粒の涙を流していた。
そんな彼女に、母は最期の祈りを届けるのだ。
『そう、強く……』――と。
強く生きて、苦境に負けないでほしい。
母は当たり前の生涯を願った。
『お母さん……!』
そして、最愛の娘の胸に抱かれて息絶える。
娘――ローズは喉が張り裂けんばかりに泣き叫び、己の無力さを悔いた。
『ああ、ああああああああああああ……っ!?』
◆
「――あぁ、眠っていたんだな。僕は」
椅子に腰かけていたローズは、自身が記憶の旅をしていたことに気付く。
正式ではないものの、いまや次期四天王の一角。彼女は大きく伸びをしながら立ち上がって、窓から荒廃した魔族領を見下ろした。
そして、眉をひそめながら口にする。
「この世界は、強くなければ生きてはいけない。でも、あの方は――」
先代の四天王――リクのことを想いながら。
彼女は胸に手を当てながら、傍らのテーブルに置かれた『押し花』を見た。
「そんな僕に、居場所をくれた」
そうして静かに、目を細めるのだ。
――
体調崩してました。
今回短いですが、次回からどうにか戻します。
※他の件諸々で、更新できずすみません!
頑張りますので少しお待ちを!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます