第6話 日常

「ふむ、この娘、良い闇を抱えているな……」




 学園に来て一ヶ月が過ぎた、最初は少し不安だったけど、今では慣れたものだ、友人や部活、僕の学園生活は順風満帆だった。


「アスター、今度俺と模擬戦しようぜ!」

「模擬戦か、僕はいいけど」


 僕はアランに答えた。


「やめておいた方がいいわよアラン、アスターは強いから」


 ステラがアランに忠告する。


「俺も鍛えてるし、アスターの実力を知りたいんだよ」

「でもアラン、星霊と契約してないじゃない、怪我するだけよ」

「ぐぬぬ、何で俺だけ星霊と契約出来ないんだー!」


 アランは叫ぶ。


「筋肉が付きすぎて、星霊も寄り付かないんじゃない?」


 ステラはアランをからかう。


「そうだな、星霊と契約するまで、模擬戦はやめとくか」


 アランは諦めたようだ、残念、純粋な力比べで勝てるか知りたかったな。


「いつまで、私語をしている……君たち……」


 ブラーエ先生が背後から急に現れてそう言った、ビックリした。


「ミモザ君、後で話があるから、私の研究室に来なさい……」


 ステラが先生に呼び出しを食らった、何したんだ、ステラ?




「どこまで話したかな……」


 先生が本を捲りながら言った。


「そうだ、二等星霊以下との契約についてからだな……」


 先生は変わっているけど、授業は分かりやすい、研究者としても教育者としても優秀だ、変人コンビの双璧だけど。

 トリオだぞ! とメグ先輩の声が聞こえた気がしたが気にしない。


「今日は一等星霊とそれ以外の星霊との違いについて教えよう、最初に質問だ、一等星霊とそれ以外の星霊、その決定的な違いは何だ……?」


 先生が僕達に問いかける。


「一等星霊は継承者と、次の継承者しか契約出来ません、つまり二人しか、力を使うことが出来ません、ですが一等星霊以外は多数の人と契約が出来ます」


 ステラがスラスラと答える、流石は優等生だ。


「教科書通り、まあ、九十点ってところだな……」


 先生は口角を上げながらステラを煽る、ステラも少し怒ってるようだ。


「一等星霊は強力な力があり、それ以外の星霊は力が弱い、そう世間では思われている、しかし私はこう考える、一等星霊もそれ以外も力自体に大差はない、例えるなら、樽の水を一人で使うか、コップに分けて、みんなで使うかくらいの違いだろう、そう考えるとむしろ、一等星霊以外の方が優秀ではないかね?」


 ドゥーちゃんは一等星霊ではないから、ミモザの力に対抗出来たのはそのおかげか?


「私は恐ろしい考えに至ってしまった……」


 先生が大げさにポーズをとる。


「契約者を減らせば、二等星霊でも、一等星霊に対抗できるのではないかとね……」


 減らす、文字通り捉えれば、殺すって事か?


「まあ、仮説にすぎない、忘れてくれたまえ……」


 仮説を披露した先生は、もう終わりと言わんばかりに、さっさと教室から出て行ってしまった。



 

「先生怖いよなー、契約者を殺して回るかと思ったぜ」


 アランが僕のそばに来て言った。


「先生は変人だけど、そんな事はしないよ」


 僕は星霊研究部で、いつも先生を見ているから、先生の事は信用している。


「でも最近、王都で殺人事件が起きているらしいぜ、案外先生だったりしてな……」

「アラン! 冗談が過ぎるぞ!」


 僕は怒った。


「悪い、悪い、言い過ぎた」


 殺人事件か、でも学生の僕に出来る事なんてないよね。

 これは大人の仕事だ、僕は自分を納得させ、次の授業に臨んだ。

 



「アスターくーん! 遊びに来たよ!」


 教室のドアが大きな音を立てて開き、可愛らしい声がした、クラスメイトは反応しない、もう慣れたのだろう。


「メグ先輩、毎日来ますけど、友達とか居ないんですか?」

「友達ならここにいるじゃあないか!」


 彼女は自信満々に答える。


「友達? 僕は彼女だとおもってたんだけどな」


 彼女を見てるとからかいたくなってしまう、なぜだろうか?


「かっ、彼女!?」


 彼女は顔を真っ赤にする、本当に面白い人だ。


「また漫才か? アスター、メグ先輩」


 アランが笑いながら言った。


「まあ漫才? かな」


 僕がそう言うと、彼女は怒りだした。


「先輩をからかうんじゃなーい!」


 本気で怒ってないってのは分かる、彼女と話すのは気楽で良い、これが親友ってやつか。


「あら、仲が良いわね、私もいいかしら?」


 ステラが来て、輪に混ざる。

 すると、突然先輩が僕の腕に抱き着く、先輩の控えめな膨らみが、腕に当たって僕は動けなくなる。


「ちょ、ちょっとメグ先輩?」


 僕は先輩の方を向く、すると先輩はこう言った。


「私の勝ちだよ! ステラくん! 私はアスターくんの彼女だからね!」


 さっきの反撃をされてしまった、身から出た錆なのだが。


「か、彼女って……?」


 ステラは声を震わせながら言った。


「冗談だから、メグ先輩も冗談って言って下さい!」

「じょーだん、じょーだん、ではさらば!」


 そう言うと、先輩は僕から離れて、去り際にステラに何か耳打ちをして去っていた。


「二人のオーラが凄すぎて、何も言えなかったぜ……」


 アランが何か言っているが、僕はステラの顔を見るのが怖くて下を向いていた。


「別に何とも思ってないわよ、顔を上げなさい」


 ステラはそう言ったが、明らかに怒っていると感じた、もしかして僕の事が好きなのか? なんて自惚れがすぎるか。


「メグ先輩には敵わないな」


 僕はそう言いながら、顔を上げた。

 先輩をからかうたびに、手痛い反撃を受けている気がするな、僕は苦笑した。



 



「ソフィアお姉ちゃん、何で……私を捨てたの……」

「あなたも私を捨てるの……」

「何で……」

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