8話

(やばいな、決め手を見つけないと森の先、冥界のダンジョンからも魔物が溢れ出るぞ……)


 そう、森の先の荒野は冥界のダンジョンと繋がっている為。

 モンスターが、奇行……新種、上位、王位種が此方に現れてもおかしくない。


 ベルヴェールは敢えて傷のすくない。

 メース♀の地竜アース・ドラゴンに目標を、定め。

 

 自身を精霊魔術で結界を張り。

 地竜アースドラゴンを目指し。

 自らを囲うように炎を生み出し攻撃を防ぐ

 

『歌い急いで。炎霊の火唱曲サラ・サラウンド・ブレイズ……亜空間気相転移アルターフェイズシフト……|光輝緑の鎖イファルジェントベリル・チェイン風王結界衣インビジブル・エアリアル


結合融合カップリング!! 瓦礫は飲み込み。その身体にて昇華せよ。火災旋風ファイアトルネード……』

 魔石だけ残して消えた。

 羽根付きの男亜人が死に際に何故か言葉を言う。

 (サヨナラ。火拳ヒートパンチャー……エ゙ーーーすぅうう……がその拳に熱を纏う)


 ベルヴェールは聞こえない。

 それどころではないのだ。

爆攻火ヒートファーニス

対象が次に炎系列属性攻撃で与えるダメージが倍加する。  

戦火の口火ヒートファーニス

 ……

 轟!!!

火拳ヒケンサボー! 火拳ヒケンエースー!! なら俺も』


 (うるさいなあ。元、羽根付きの男)

 身体が灰になり魔石だけなのに良く喋る。

『明日のジョー……すいません』

 羽根付き男。

『餃子みたいなやつです』

 ベルヴェールは一言。

 「意味分からん」

 

 

 (こいつなんだったんだ?? えーと続きがハンバー……)

 雌の地竜アースドラゴンが嘆く。

「ぐー……」 

 最後の一言だっただろう。


 (おいおい、コイツ心を読めるのか? 魔石の状態で??)

羽根付き男は魔石になった為か、馴れ馴れしく念話してくる。

『違った。おいおいコロッケ!!……コロコミなあ』

 ベルヴェールは面倒くさいが話に付き合う。

(何か情報聞き出せるかもしれんしな)

「最初は!?」

『あー、ごんさんっ!? おけおけ』


 「…………はあ」

 雌の地竜アースドラゴンは息を引き取っていた。

「収納」


 そして、灰になり倒れて亡くなったと思った。

 羽根つきの者が、遂に死に際に一言。

『……じゃ……ん険に……するな。……ぐぅ』

「あいこだ」

『あいこで??』

「はい収納」

「意味がわからない。…………疲れた。もう、あれだ羽根付きの男じゃなくて羽虫だな。意味不明な言葉ばかりで、戦いの邪魔だ。うるさかった」

 

 (この羽根付き。身体が灰になっても、なんで、魔石だけで話せたんだ?? おかげでコイツの魔石が見つかったけど)


 他愛もない事を考えていると。

 

 急に――――怒轟!!っ断々――


 最初の地竜アース・ドラゴンが裂傷、熱傷、心労の疲弊で倒れた。

 ベルヴェールは地竜アース・ドラゴン確認する。

 

 「うん。こいつも亡くなっているな」

(変な終わり方だったな)


 ベルヴェールは、もう一匹の最初のオース♂地竜アース・ドラゴンを亜空間倉庫にしまう。

 「収納……ドラゴンの素材は無駄がないて言うし、番で狩れたのは良かったな」


 (にしても)

 

「それにしても……本当にこいつは何なんだ」

 見つめる先は灰となった羽根付きの亜人男の身体。

 (番の地竜アースドラゴンから必死に逃げてる様だったが、なんか人? 亜人だと思って助けようと思っ…………いや、あのウルサさだ。なんかずっと意味不明に喋ってたし。魔石は回収したが、灰? 身体も一応持ってくか。ゼロツーとかアンジェリカに聞けばわかるかな??)


「なんか、嫌だけど収納」

 

 ベルヴェールは戦闘中、羽根付きの亜人男が喋ってた言葉が、地球の言葉だと理解していれば。

 対応が変わったかもしれない。

 ただただ、今はもう後の祭りである。


 ベルヴェールは戦争を経験している影響か融合の影響か、いや両者だろう。

 人らしき者がが亡くなっても、特に悲壮感無く。

 魔物達とも対峙していた。


 ベルヴェールは辺りを見渡す。

 地竜アースドラゴンとの、戦いでも、この森周辺を火の海としてしまった。

 また、地竜アースドラゴンの血肉に誘われた魔物達も最初は近づいて来た。

 だが、周囲の熱さで火に焼ける同族を見て。

 此方を覗うだけに今はなっている。


 ベルヴェールはふと戦闘の時を思い返す。

(……なんか火魔術の武技て連撃ばかりだよな、夏の虫のやつとか一応固有魔術見たいなんだけど)

「求めすぎ? 欲張りすぎか??」

 気持ちの声がボソッと漏れる。

 

 欲張りすぎである。

 シャンゼリオンにおいて、属性魔力を身体や武器に乗せる。

 または、生み出す。

 『魔装』が出来るのは今回ベルヴェールがした『王火キルシュバオム』を合わせても、シャンゼリオンでは片手で数える程だろう。

 


「ゼロツーの知識だと芸術?? 見たいな魔術も使ってた見たいだけど。俺も考えて見るか」


 物欲しげにあれもこれもと、これは出来る出来ないと色々想像が捗り。

 気づけば森を抜ける一歩手前まで足を進めていた。

 森を抜けると荒野になり。


 冥界のダンジョンとの狭間が近いのか、更に重苦しいプレッシャーを感じる。

 実はそれだけではない。


 ベルヴェールが森を戦闘で焼いた事で(魔巣窟の森の三分の二、程)

 魔巣窟から荒野の先ダンジョンに、逃げ込んだのだ。


 ただ、先程の羽根付きの男と同じで、ここにいる魔物はシャンゼリオンの中でも強い。

 強い、最強の部類に入る。

 だが、冥界と比べると、十八禁か子供向け作品程違うのだ。


 ゼロツーには嬉しいのだが、冥界のダンジョンで死んだものは人も含めて、必ずリポップする。

 つまり死ねない。

 ある意味? いや文字通り地獄だ。

 ただ、それが繰り返されると器(身体)。

 そして魂と変異して別種や進化を繰り返し、どんどん強くなる。


 ゼロツーには、その気は無くとも。

 残念ながら、最強最恐の軍勢を生成している場所としても兼ねてしまっている。

 


「索敵は特にしてないけど? 見た所モンスターも見えないから、さっき考えた。魔術でも試して見るか」

 ベルヴェールは魔術を思いつきで作ってみた。


火の薔薇ファイアローズ

 中位初期相当の魔術だろう。

 二、三階建ての大きさの炎の薔薇が一輪咲き。

 ぽんっと気の抜ける。

 勢いで、矢と言うよりか花粉? と言った方がしっくりくる炎の矢が飛ぶ。

 

 !! と言わんばかり。

 撒き散らす。


 吹〜ぴゅ〜

 ぴゅ〜ポトン――落

 ぴゅ〜落

 吹〜


「うん、術もダサいし。名前もダサい。アローとローズを掛けたんだが……これもきっと融合した影響だな」

 (ゼロツーみたいだし)

 そんな事を、考えていると森の周囲一体が、火の薔薇ファイアローズの花粉の火で爆発の連差が引き起こされていく。

  

 ――怒轟!!!!

 

「なっ!?」

 突然の爆発音。

 ベルヴェールはすぐに空へ飛ぶ。

 (無限の彼方へさあ行くぞ!!)

 

 轟!!

 

 ドッ

 ドドドーン

 

 轟


 空中に避難したベルヴェールは下の森。

 焼かれていく惨状を目に思い出す。

  

「……ああ、忘れてた。地竜アースドラゴンとの戦いの時に複合魔術で爆薬、地雷を作ってたんだった」 

 

 轟!!

 ドッ

 ドドドーン

 轟

 ――怒

 轟!!!!


 この、爆発を持って。

 魔巣窟の森の三分の一のこってた森が全焼した。

 生きている生き物、魔物は急いで荒野を抜け冥界のダンジョンへ向かう。

 …どの道助からないだろう。


 ベルヴェールはゼロツーに言われた事を思い出してポツリと一言。

「ゼロツーが言うには森も、冥界の魔素で復活するみたいなんだが」


 ベルヴェールは呟いていると、あることに気付く。

 (森からでる物が少ないな)


 生き物、魔物達は炎に焼かれてしまったのか? 冥界へ進む物が少ない。

 そして好都合だったのは空を飛ぶモンスターが今、いなかった事だろう。

 ベルヴェールは身体、魔術に慣れたからと言っても索敵等の力量はまだまだだった。

 

 

 ベルヴェールは下の惨状を見ながら思い出したかのように言う。

「あっそういえば、この黒刀、闇の最大魔術使えるんだよな??」


 闇の最大魔術……つまり神呪だ。

 その威力は世界を割り次元を歪め国が滅ぶ。

 ゆえに神呪なのだが……


 ベルヴェールは黒刀に魔力をドクドクと自分の血を送り込むように流す。

 また黒刀も、それに答える様に脈を打つ。

 

 ドク……ドクッ

 ドクドク

 ドク

 

 黒刀は魔力を呑み込み喰らっていく。

「…………」

 (まだ呑み込むのか?)

 

 ドク……ドクッ

 ……ドクッドクドク

 ドク……ドクッ

 

 (そろそろキツいんだが)

  ドクドク……ドクッドクドク

「だあ……はっ!?」

 黒刀は意思が有るように、まだまだと魔力を喰らい続ける。


 ドク……

 ドクッ

 ……ドクッ

 ドクドク

 ドク……ドクッ


「駄目だ……」

 ベルヴェールはあまりの失いすぎた魔力量に思わず地上に降りたち。

「………………」

 ドク……

 ドクッ

 片膝をつきながら。

 行き場を失った魔力を纏め調整して行く。

 

 

 本来、黒刀。

 闇魔術に特化した魔力媒体と武器。

 詠唱破棄や無詠唱で発動出来る。

 

 だが……現に今、魔力暴走起こし。

 自分を含め周囲を吹き飛ばしてしまう程。

 魔力が散乱している。



 ベルヴェール膝を折り黒刀を地面に杖代わりに突き刺しながら言う。

「自分のケツは自分で拭けてね」

 …… 

 ベルヴェールは散乱した魔力。

 暴走している魔力を黒刀で従え纏める。

 それは今までと違い。

 詠唱破棄等ではなく。

 ゆっくり確実にし、形にして詠唱を唱えていく。

 


『空数ある一つは青。小さく届く汝に年重なり。流れ二つに一つ、一つと二つ。激しく儚く理を外れ汝変わらずの者へ、届かぬ音は空数に響く、気づく、歩く、暗い道のり日々照らす月。握りしめた手、汝離すことなく。永遠に近い永遠の淵。無音の歌を抱擁し、夢見夢喰いのまま望まぬ目覚め。夢見心地の汝と共に』


 飛散した闇の魔力が魔巣窟の空間を大きく渦巻く。

 それは台風の目の様に一点だけ虚空を描く。


夢喰いし日々小さき少年少女の音楽祭ディア・ラル・ラリ・ドゥ・パル・トゥ・ハーメルン

 ……

 

 闇属性、推定十五階梯の神呪。

 ベルヴェールの魔力に合わせた固有魔術。

 だがベルヴェール自身、闇属性では無いため黒刀が無いと使えず。


 尋常ではない膨大な魔力を消費し行使する。

 

 地表と上空に展開した。

 魔術陣から均衡を崩す。

 ――天変地異を起こす。

 空も地も、青色の空間に覆われ。

 ガラスの中に居る様に感じる。

 だが次第に空間はヒビ割れ……


 ――破!! ――破!! ――パリンッ

 パリッ破……

 

 狭間から宇宙が見え。

 星が覗き引力に引っ張られ。

 空に近い物は上へ。

 地面に近い物は下へ吸込まれる。


 ――吹

 「GOOOO」「ゴーーーー」

『レディセディゴー』

 吹きこんでゆく……風景〜なんとかとか〜

「夢中で〜」か「早くー」「GOHON!!」

 ――吹! 「IWASENEYO」

 

 運が良いものは、そのまま宇宙に放り出される。

「ギャーギャー……ー」「ギャオギャオ……ギャオ……」

 だが狭間に引っかかった者は、狭間と間に切られ吸収されてく。


 ――斬

 斬

 ――ザ斬


 運悪く引っかかった場合、空間に詰まり。

 それが、次々と対象が重なり。

 圧死。

 ……林檎の様に潰される。


 愚者

 グシャ

 グチャ

 砕者……チャ

 

 その音は豪風とは形容し難く。

 場所や位置、状況によって異なり。

 吹

「ぎゆーーーん」

 吹

「ゴーーー」

「ぷっプップーーー」

 轟!!


 ――愚者

 ――砕者。

 笛の音やラッパの音、ドンと太鼓のような物等、様々な風と肉の音達が響き渡る。


 その範囲は数キロに渡り。


 魔術終了時……青色の空間だった。

 そこは木々や山は無く。


 海も地も割れ。

 血の雨が降り。

 血の海になり……

 臓物の山となって赤く染まる。


 ――怒土砂!!

 サーーーーーー…………………

 

「Gyaaaaaar」「ショオーッ!!」

 竜種や大型の類のモンスターか空間に気づき。

 警戒の雄叫びか? 狭間に呑み込まれた刹那か?


「………………」


 ベルヴェールは魔術を限界まで使い。

 横になって状況を見ていた。

 

 ――踏々、踏々!!踏々!!

 

 ドドドッと異変に気づいた動物や魔物達。 

 右に左に縦横無尽に走りながら。

 躓いた者も踏まれ、のたうち回りながら……

 様々な生き物が必死に、死に物狂いで逃げていく。 

『GYOGYO』「みーみっ!!」「きゅううううん」

「Pyeeッ!Pyee!」『ガガウガウワウ』


 ――踏々、踏々!!踏々!!

 

「ォウオェェエーー……」

 魔力が無くなり。

 心身が擦り切れていた為。

「……………」

 あまりの悲惨な光景に……耐性のある。

 ベルヴェールでも思わず吐く。

 (この世の終わりだ。前世では散々、火の雨や戦地に行って。戦って!戦って、戦い抜いて……)

「生き死を分けながら。生き抜けていたんだがな」

 その言葉を最後に、あまりの気怠さで話せくなる。

「オエーーーーー」

 再び戻すベルヴェール。神呪。

 闇魔術を自由に使える使い勝手の良い黒刀。


 それでも自分に備わっていない。

 属性をしかも改めて言うが神呪の発動だ。

 

 ベルヴェールは立つことも、口を動かす事も出来ず。

「ぐぇ………………」

 吐いたまま倒れ込む様に横たわる。

 その惨劇惨状を見てベルヴェール、いや大地は思う。 

 (これを見ると、この力があれば前世でも……ちっ! やるせないな。今更考えた所でだ……仕方ないだろ)

 

 今、こうして居られるのは、幸いな事にベルヴェールが魔術を数十キロは先に指定して発動した事。

 

 こうして安全と言うべきか?? ベルヴェールは種族が天使族になった為、五感を含め。

 人外の鋭さなのだが……

「…………?」

 

 (なんだ? 焼いた森が騒がしいな。火魔術か? 闇魔術か……今更、異変に気づき始めたのか、だが遅い。終りだ)

 

 吹〜

「ゴーーー」

 ドッ!! 斬

 ――ザ斬

「みーみっ!!」

『ガガウガウワウ』

 愚者、砕者

「きゅううううん」

 轟

「Pyeeッ」

 ――怒

「Pyee!」

 轟!!!

 

「…………」

 ベルヴェールは願う。

 (原因であるこっちに、魔物が出ないのを祈りたい……だが、最悪……)

 

 ベルヴェールは徐ろに亜空間倉庫の腕輪から『子猫の転移魔法陣』を出す。

 

 (話しが出来る? 確かて言ってたが、今の俺には無理だな)

 

 ベルヴェールは『子猫の転移魔法陣』に魔力を流す。

 

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