第12話 邲(ひつ)の戦い(紀元前597年 鄭)
彼の名を、蔿艾猟(い・がいりょう)といいます。
周りの小国を侵略したかどうかは、個人的に気になるポイントですが。
その後、前年に貴族が君主を殺すという事件のあった
この陳での反乱(
君主を殺した貴族(
このあたりの話も書きたかったんですけどね(ため息)。
そしてさらに翌年(紀元前597年)、服従したはずの鄭がまたも晋へ通じようとしたため、荘王はまたまた鄭を攻めました。
……何回やりゃ気が済むんだこの天丼。
今回は晋の全軍(中軍・上軍・下軍)を引っ張り出すつもりだったのか、楚の全軍(中軍・左軍・右軍)で出撃しています。
そして荘王の思惑どおり晋も全軍で出撃したのですが、黄河に至ったあたりで「鄭が楚と講和し、ベテラン将軍の潘尫(はん・おう。第6話に登場)が鄭に入った」との報が入りました。
このとき晋の中軍の将(ちゅうぐんのしょう。晋軍のトップ)だった荀林父(じゅん・りんぽ。
「救援にはもう間に合わない。だったら、楚軍が撤退した後に改めて鄭を攻めても遅くはないだろう」
と言い、引き揚げようとしました。
上軍の将(しょう。軍の指揮官)に昇進していた
「荘王と
と賛成します。
しかし、中軍の佐(さ。軍の副官)である先縠(せん・こく)が、二人に異を唱えました。
「ハア!? 軍を編成して出動しておきながら、敵が強いからって退却するとか、男のやることじゃねーわ! 男を下げてすごすご帰るなんざ、おめーらジジイどもならできるんだろうが、俺はごめんだね!」
と、勝手に自分の部隊を率いて黄河を渡りはじめます。
これを見て、司馬(軍のトップである楚と違い、こちらは将帥の補佐)の韓厥(かん・けつ)が、
「もし
かくして晋軍全体も、
なんかもう既にここからグダグダのにおいが漂ってますね。
さて、晋軍が黄河を渡ったという情報は、宿営していた楚軍にも伝わります。
荘王と
「あのね、おじいちゃん。俺らは去年は陳を攻めて、今年はこうして鄭を攻めて、戦争が続いてるでしょ? 戦って勝てなかったら、おじいちゃんの肉を食うだけじゃ話はおさまらないよ?」
どんな説得だ、という気もしますが、言われた
「では、勝てたなら、
ニヤリと笑って、白くなった髯(あごひげ)を撫でました。
このクソジジイー!! とキレそうになった
そこで
「
天下の恥。これには荘王も、苦笑いして頭を掻くしかありませんでした。
「こいつぁ、
荘王に言われては、
晋軍が現れて陣を張ると、荘王は使者を送り、「俺ら別に晋と戦うつもりはネーからさ。お互い、あんまり長居しないうちに帰ろうや」と申し入れます。
晋軍が現れる前に帰っては、「王の軍が臣下の軍を避けた」と言われるおそれがあります。しかし、互いに陣を張り対峙した上での話し合いによって帰るのであれば、何ら後ろ指を指されることはない。
これが、荘王の考える「天下に恥を晒さないギリギリのライン」でした。
「すんません、さっきの返事は間違いっす。俺ら、楚軍を叩き出すように君主から命じられてるっす。だから仕方ないけど、仕方ないけど戦うしかないっす」
正反対のことを言われた荘王は、呆れて天を仰ぎました。
「マジで意見の統一できてネーんだナ、アイツら……。仕方ネー、もう一回使者を出すか」
幸い、今度は
ところが。
晋軍の中に、魏錡(ぎ・き)、趙旃(ちょう・せん)という二人がおりました。
二人とも、
ですので手柄を立てたいという気持ちが強く、最初は
「オイ、
そのため、少しでも自分を軽んじるような態度を見せた者には身分が上であろうと誰彼構わず噛みつき、力でねじ伏せてきたのです。
「先に鄭が戦を勧めてきたが、下軍の佐の欒書(らん・しょ)が反対した。今また楚が和議を求めてきたが、友好を実現できない。命令がふらついてばかりいる軍が、いくら防備を整えたとて無駄なことよ」
「テメー! 友好を実現できないって、
士会は
握った
「
しかしそれでも、
「パイセン、このお坊ちゃんにゃ言ってもムダっスわ。俺ら上軍だけでやりましょうや」
「そうだな……。だが、下軍にもこれを伝えておかねば。連絡が間に合えばいいが」
さて、楚の人を招く使者として向かったはずの
しかし、兵の勇猛さにおいて楚の右に出る国はありません。二人とも、あっさり返り討ちにあってしまいました。
おまけにタイミングの悪いことに、後になって
楚軍の兵車(古代ローマのチャリオットとは遠い親戚)は疾走し、兵士は早駆けして晋軍に襲いかかります。
防備を整えていなかった晋の中軍と下軍はなすすべもなく、飢えた狼に食べられる草食獣のように蹂躙されていきました。
パニクった
しかし舟は少なく、とても全員が乗ることはできません。先に乗った兵士が、後から乗ろうと舟の縁を掴む兵士の手の指を斬ったため、船底には斬られた兵士の指が両手ですくえるほどに転がっていたそうです。
三軍中二軍が壊滅した一方、防御態勢を整えていた上軍は動きに乱れがありません。そこで荘王は、
「楚軍の勢いは絶頂だ。全軍で集中攻撃をかけられてしまえば、上軍は全滅する。ならば敗北の非難を三軍で分散し、戦わずに民を生かすのも悪くはない」
と、自ら
俗に、撤退戦の
報告を受けた楚軍首脳部、特に荘王は、「ええい、連邦のモビルスーツ……じゃない、晋の士会は化物か!」とか、「あの士会何回やっても倒せないorz」と叫びたかったことでしょう。
いやほんと冗談抜きにチートだよこの人の強さ。
その後、楚軍は邲(ひつ)に陣を張りました。
しかし荘王は、進言を拒否しました。
「お前は解っていない。そもそも『武』という字は、
結局荘王は、黄河の神を祀り、先君の廟を建て、戦勝を報告したのみで引き揚げました。
実際のところ、「武」の字は「
この(二大国決戦の割にはえらいグダグダな)
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