アラサー魔法使いの学生ライフ~30歳になったら本当に魔法が使えるようになったので青春を取り戻します〜

山下 勝也

第1話 孤独の誕生日

真っ暗な汚部屋で俺は1人酒を飲んでいた。

夜に酒を飲むなんてよくある事だろ?



だがこの日に1人で飲むなんておかしいと思われるのが正しいと思う。


何故なら今日は、俺の誕生日だからだ。「はぁ、、」口からため息が漏れるだなんて俺にとっての日常だ。「色々疲れたな」ため息と共に言葉を吐き捨てた。


それもそうだろ?

全然増えない給料、いくら頑張って結果を出しても給料が増えて得をするのは上の人間だ。


俺みたいな資格も学歴もない夢や希望も何も無い、何も考えず他人に関心を持たず生きてきた俺は今日30歳の誕生日を迎えた。寂しくないのか?って聞かれると胸を張って答えよう。


「寂しいよ!けど人との接し方、友人の作り方、彼女の作り方そんなの全く知らないんだよ!」そうやって俺は1人投げても壊れないグラスを投げて壁に八つ当たりをしながら別のグラスに酒を注いで飲む。親父もよくこうやって飲んでいたのを思い出すな、、、。


俺が高校生の頃母は親父と離婚した。理由は何も覚えていないがその後の親父は今の俺にそっくりの飲み方だった。そんな親父も今はもう居ない。2年前に酔っ払って道路に飛び出してトラックにはねられて即死だった。もし酒を辞めさせられたら、今も生きていたかもしれない。そう思うと酒が進んだ。これがやけ酒ってやつだ。


大人になってから人間関係の大切と1人の孤独にこんなに苦しむなんて誰がわかるんだよ、、、。何気なく俺は思ったことを口にしてみた。「高校生に戻れたら、勉強もして、友達もできて、、彼女が出来て、、童貞を捨てて今より幸せな未来にするため頑張れるのに、、、そんなことあるわけないんだよ!」またグラスを壁に投げつけた。もう一杯飲んだらタバコを吸って寝よう。


また明日も仕事だから、働かないと生きれないから、そんな事を考え落ち込んでいるとスマホに一通のメッセージが届いた。


確認しなくても誰からなんて、予想できるが一応確認した。


邦和くにかず〜今月もお金無くてさ、頼むよ!またお金貸してくれ!」こいつは綿辺 清考わたなべ きよたか高校の同級生であり、唯一の友人だ。こいつは毎回金を借りる時しか連絡をよこさない。今日が俺の誕生日だとも知らずに、金銭を要求してくる。しかもだこいつに貸した金は100万円を超えるが返ってきたことがない。


だがこの縁を切れば話せる相手がいなくなる。これはいわゆる課金だ人生の課金だ10万円を払って俺は友人との絆を維持している。「わかったよ。また10万でいいよね?振り込んどいたよ」と都合のいい人間をする。アプリでその場で振り込めるからすぐに振り込んだ。都合のいい人間を演じなければ生きていけない。はぁ親父が生きていたら、誕生日おめでとうって一言でも言ってくれる人がいるのだろうが、そんな人間この世には存在しないんだ。そういう星の元に生まれた。それが物理法則なんだ。そうやって自分に言い聞かせてタバコに火をつけた。

「神原 邦和30歳誕生日おめでとう。これからも頑張れよ」何となく、自分で自分を祝ってみた。虚しさより、ほんのり嬉しかった。タバコを吸い終わり灰皿にタバコを捨てると周りのゴミをかき分けて倒れるように寝る。これから俺の唯一無二の娯楽であり最高の瞬間である。


そして俺は夢?のような白い空間に立っていた。「ここはどこだ?変な夢だなぁ、、」少しおかしいと思ったが俺には必殺技がある。どんな嫌な夢を見ても起きることに失敗したことが1度もない。だから少し楽しんでやな夢なら覚めれば解決だ。そうやってとりあえず前に進むとそこには見たことの無いおっさんが立っていた。「神原 邦和くん誕生日おめでとう。よくこの30年間生き抜いた。君はとっても偉いよ」夢だとしても嬉しいだが素直に喜べるほど俺もまだ大人になれていない。「あっそ、、それはどうも」そうやって照れていると童話の妖精のように小柄で長い黒いツインテールでロリ体型の妖精のようなやつが俺の目の前に現れた。「きっもー何照れてんの?クソ童貞はこれだからキモすぎぃ」

なんだこの非常にわからせたいと思える生き物は、、もしかしてこれが俺の幻想で描かれる理想の“メスガキ〃ってやつか!?

「それでここはどこだ?お前は誰だ?」

そう聞くと俺の耳に聞きなれない単語が飛び込んでくる。

見慣れないおっさんが口を開く。「私の名前は大賢者とでも呼んでくれて構わないぞ」

「大賢者?ファンタジーとかの魔法使うやつか?すまないな俺はファンタジー系のゲームは好きじゃなくてな、、それで大賢者様は俺になんのようだ?世界でも救えとかそう言うやつか?」

またメスガキ妖精は首を突っ込んでくる。「なに夢見てんのよ。あんたなんかに世界が救えるわけないでしょ?あんたは救う側じゃなくて救われる側でしょ?」

少しイラッとしたから指でデコを軽く弾いた。「私の使い魔が邪魔をして悪かったのう。神原 邦和君。君の30歳の誕生日を祝って魔法を授けようと思う!」さすが俺だな夢の中まで夢を見ている。でもあっちからいってきたんだ。少し泳がせとこ。夢なんだから好き勝手やってもいいだろ「やだね。誰が魔法なんか欲しがるかよ。」と言うと賢者様の表情が少しくもった。「ま、まつのじゃ、、、じゃじゃあこれはどうじゃ?君の願いを2つ叶えてあげるから魔法使いになってくれるってのは?」いい感じに乗ってきたぞ。もう少しだけ泳がせよう「二つ?はぁー変な夢だなぁもう起きてもいいか?」「わ、わ、わ、分かった!どんな願いでも3つ叶えよう。だから頼む!!わしの弟子になってくれ!!」大賢者さまであろうお方が頭を下げてきた。流石にそろそろいいだろと思い、起きようと俺はいつものように頭に力を込めた。


するとなにも起きなかった。「あれ?どうなってんだ!?」メスガキ妖精はデコを抑えながらまた飛んで来た「まだ夢だと思ってんの?ここは現実なんですけど?それとも顔つねってあげようか??」よくわからないけど、起きれないなら仕方ない。最後まで付き合おう。「分かった。それじゃ俺からの要求は3つだ。一つ俺を高校生の頃に戻してくれ、タイムスリップみたいなものだ。そして二つ!俺に魔法の使い方が学べる本を用意してくれ。」大賢者様はヒゲをいじりながら答えた。「それくらいならよかろう。そして三つ目は何じゃ?」なにも考えてない俺はとりあえず目の前の妖精をつかった。「このメスガキ妖精を俺の妹にしてくれ」「はぁ!?誰があんたみたいなキモオタデブの妹になると思ってんの?」大賢者様は笑いながら答えた「良かろう!ならば魔法のガイドは妹になるこの子にしよう。名前は結愛(ゆあ)たくさんの幸せに恵まれる。と言う願いを込めてわしが作った妖精じゃ。きっと、助けになるだろう。」

大賢者がそう言うと無数の魔法陣のようなものが現れた「神原 邦和くんよ。幸せになってくれ。」と言うと視界が真っ白になり俺は目を覚ました。



ジリジリと言う聞き覚えのある音に俺は目を覚ます。起き上がると何だか体が軽いことに気がついた。部屋を見渡すと高校生の頃の俺の部屋だ。あわててガラケーで時間を確認すると15年前に戻っていた。「こんなことあるわけない…よな?」そう思い力いっぱい頬をつねったらめちゃくちゃ痛かった。最後に携帯の黒画面で自分の顔を確認すると15歳の頃の俺が写っていた。「嘘だろ、、、俺高校生に戻ったのか?本当に?」

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