第6話
いつもの見慣れた光景。私もつい数週間前まではあの場所で思いきり走っていた。陸上部の期待の星と言われていた。
優遇された施設に環境のお陰もあり、去年は関東大会にも出られた。今年はもっと上を目指せると先生や仲間にも期待されていたけど、練習に夢中になりすぎるあまり大切なものを失くしてしまった。
そう、あの事故が起こってから、私はぱたりと走ることを辞めてしまった。
「そういえば朝、有川と揉めてたんだって? 誰かが言ってた。なにかあったの?」
「……うん、部活のことでちょっとね」
ホッとしながらそう答える。よかった、栞菜には聞こえていなかったんだ。
休部するということはまだ誰にも言っていない。きっと色々と訳を聞かれてしまうから。
まだ私には誰かにあのことを話せるほど整理できていない。だから今も部室に行くふり。
「栞奈はバドどう? 大変な時期でしょ?」
「まーねぇ。今みんなピリピリしててメンタル的にも超しんどい」
ため息を吐きながら空を仰ぐ栞奈はバドミントン部で、彼女も時期エースと期待されている。
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