麻雀RPG~段位戦のポイントが経験値になる世界~

金鈴令

第1話 麻雀においては人々は平等である。チートはない。



 どんな世界だよッ!


 麻雀で勝ったらポイントが貰えて、それが経験値になる世界ってなんだよ!

 絶対混沌としているだろ、その世界。魔物を斃す前には麻雀をしましょうって事か?


「その通りです」

「……」


 目の前の微笑みで固定されている金髪美女は、俺の頭の中のツッコミに淡々と頷いた。


「いやまぁ、お話は勿論前向きに考えています。しかし突っ込まずにいられなかったと言いますか……」

「構いません、その程度で貴方を消滅させるほど短気ではありませんから。それでどうでしょうか? 引き受けてくださいますか?」

「もう少しだけ、考えてもよろしいでしょうか? 勿論9割、いえ10割心が決まっていると申し上げても過言では無いのですが……」

「勿論です、この部屋は貴方の為に用意した部屋で、時間の流れは天界と変わりません。つまり永遠であり、未来であり、過去なのです、幾ら時間を使って頂いても問題ありません」

「ありがとうございます」


 ……この部屋ってそんなファンタジーな感じだったのか、見た目は机と椅子が2脚とベッドしかない滅茶苦茶シンプルな部屋なのに。


 あぁあと、俺のアルバム……。


 そのアルバムを見ると、少し鼻の奥が刺激される。


 此処に来て、アルバムを見て、それが自分の軌跡であり、そして自分の死を知った。

 嘆き悲しみ途方に暮れ、不安に叫んだこともあった。


 そして心が落ち着いた時に、目の前の自称女神様が今と変わらない微笑みでやって来て、俺にとある提案をした。


 自分の世界の主人公を救うために、異世界に転生してくれないか、と。


 前提として。

 少し前、世界を構築できる管理権限を持つ者達の間で、他の世界の創作物に似せた世界を創り出すトレンドが産まれた。

 目の前の女神様もそれに漏れず、並行世界の日本にあった、「麻雀RPG」というソシャゲを元に世界を創り出した。


 それから幾年が経った時、方々でとある問題が起った。


 それが、主人公敗北問題。


 ゲームをリアルにした弊害、それは多々あるが、最も多くの世界を蝕んだのが、主人公の死だった。

 レベルを十分に上げる事が出来なかったり、時間制限のあるクエストに間に合わなかったり、原因はその世界毎で様々だ。

 勿論、主人公が勝たなければ世界は崩壊へと向かう、そんな物語も少なくない。

 そして現実となった世界で、実際に崩壊してしまった世界もあるそうだ。

 

 そうなると、管理者としての権限を剥奪の上、場合によっては消滅も有るのだとか。


 そんな前置きをされれば、目の前の女神様が何を言おうとしているのはなんとなく分かるわけで……。

 実際、俺は主人公のサポートとして、特典というかチートというかを持って、異世界に行かないかという勧誘を受けた。


 勧誘を断っても、この世界で記憶を消されて転生するだけ。

 だがそれは自分とはいえないだろう、実質消滅と変わりない。


 その時点で、この話が全くの嘘っぱちで、俺を罠に掛けようとしているのだとしても、俺はまだ死にたくないから、この話を受けないなんてことはあり得ない。

 

 例え行く世界が、麻雀のポイントが経験値になるようなトンチキな世界だとしてもな!

 

 覚悟は完了した。

 俺は行く!


「お待たせいたしました、覚悟は出来ました。俺は行きます」

「ありがとうございます、その言葉を待っていました。安心してください、もし万が一貴方が失敗してしまっても、他の管理者同様、ほぼ全ての神気を使えばなんとかなります。そうなるとデメリットもありますが、彼らの様に使用せずとも何とかなると驕り消滅するよりかはましです」

「行くからには、全力でやります。それとあと一つ教えて欲しいのは、何故自分だったのでしょうか? 麻雀におけるチートは無し、麻雀の運量も同一ならば、自分よりも亡くなられた麻雀プロの方にお願いしたほうが、成功率が高いと思うのですが」

「あぁ、それなら魂の若さが問題です。魂が老いるという事はつまりその世界に定着しているという事です。そうなると、他の世界に渡る際、大変な負荷が掛かり、最悪魂が消滅してしまいます。また、魂というのは高頻度で創られるモノではありません。ですので、魂が若いというのは、それだけで価値があるのです。因みに異世界から魂を引っ張って来るのは、言葉を選ばずに言えば、その方が省エネなのです」

「省エネですか……お答えいただいてありがとうございます、そう言う物だと思っておきます」

「えぇそれが良いでしょう。それから、見事ゲームをエンディングへと導いた暁には、なんでも一つか二つ、もしくは三つくらいは、願いを叶えましょう」

「宜しいのですか! ご期待に添えられるように頑張ります!」


 もし地球と異世界を行き来できるようになったら、両親にも謝れる。

 それに、見たかった作品の続きも見られるし、食事も恋しくなるだろうから、それを解消できる。


「一応ミッションという形で、主人公の動向やストーリーのヒントも出して行く予定ですので、そちらを確認してください」

「畏まりました」

「それでは、転生を開始します」











――――――――――


あとがき


この小説に興味を持って頂きありがとうございます。

麻雀のポイントが経験値になったら面白いかなと、ただそれだけで書き始めましたので、ストック等はない見切り発車の小説になります。

ですので、不定期更新になります。

ご了承ください。





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