第13話 セッキン(5/7)

 はるか遠くから、さわやかに美しく走り寄るイケメン!


「アオイさまーーっ! アオイさまーーっ!」


 私は、子犬がしっぽをふって必死に走る幻を見た。


「銀太郎⁉︎」


 次の瞬間、銀太郎はガシッと私を捕獲した。


「ああ、やっと見つけましたあ。みんな同じ服、見分けるの難しいです。大好きなアオイ様わからないなんて、自分が恥ずかしいですー」

「ちょっと、銀太郎? なにスリスリしているのよっ。離れて!」


 むぎゅっ。

 私にしがみついてほおずりまでしていた銀太郎は、さらにしっかりと私を包みこんだ。

 暑い! 暑苦しい!

 全力で走ってきて、なんでひとりだけさわやかなのよっ⁉︎


「会いたかったですー。オムカエに来ましたあ。この姿なら、くっついてもアオイ様怒らないです」


 ちがーーっう! 怒らないんじゃなくて、怒れないの。だって、蓮君なんだもの!

 ああ、蓮君がうれしそうに笑っている。でも、笑っているのは銀太郎で……。

 あれ? 「でし」って言わないの? 実は本物の蓮君⁉︎


「ダメダメダメ、離れて! 絶対蓮君なわけないからっ。ああそうだ。銀太郎、お手! じゃなくて、待て!」

「ハイ! ……って、マテはどうするですか?」

「え? えーと……」

「あのー、葵? お取り込み中に悪いんだけど……」


 美央が申し訳なさそうに私をつついた。


「さっきよりも絶対に、ものすごーく、どうしようもなく目立っているけど?」

「え?」


 下校中の生徒の視線が全て私、というよりも私にしがみつく超絶イケメンの銀太郎に向けられていた。

 藤井君も吉田さんも、あっけにとられている。


「これは、その、えーと……」


 いやあーーーーーーっ!!!

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