ドキドキ

東 里胡

第1話

「坂下中学出身、一年D組真柴ましばあおいです。中学ではポイントガードでした。どうぞよろしくお願いいたします」

「あっ!」


 驚きを抑えたつもりが、思わず声に出てしまっていた。

 歓迎の拍手に紛れ、誰にも気づかれなかったと思ったのに、当の本人と視線が絡んでしまって焦る。

 それは一秒、二秒、三秒、ほんの短い時間。

 あの時のことを思い出してしまったら、心臓の音が大きく跳ねあがって、あわてて視線を逸らす。

 『あっ!』て言ったの、聞こえちゃったかな?

 チラリと目線を上げて、彼の顔を確認する。

 私の方はもう見ておらず、次に自己紹介してる人を見上げて拍手している横顔。

 やっぱり、あの人だよね? 間違ってないよね?

 だって、坂下中学って言ってたもん、ポイントガードだし!

 身長、あれからすごく伸びてない?

 髪型も少し大人っぽくなった気がする。


「じゃあ、次はマネージャーね」


 ボーッと見惚れてしまっていた私は、先輩の呼びかけにハッとして立ち上がる。


「一年F組の新木あらき夕菜ゆうなです。第二中学出身で、中学の時も男バスマネージャーでした。バスケが大好きです、よろしくお願いします」


 頭を下げると歓迎の拍手に包まれた。

 そっと顔を上げたら皆がこちらを見ていた。

 その中で彼も私を見上げて、意味ありげに目を細めた。

 まさかここで会うなんて、そう言い出しそうな苦笑いを浮かべて――。

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