実験04
「偉人の歌… 偉人… いじん…」
完全に三人とも
「あっ! あぁぁぁっ!!! いじん い・じん!」
「びっびっくりしたー。ユウ何かひらめいた系?」
「あぁ! アレだよ、あの人形。人体模型君だよ」
私と佐藤はまだハテナ状態だ。ん? あの気持ち悪い人体模型? それが偉人と何の関係が?
一人浮かれているユウに続き、私達は人体模型の方へ移動する。
「ほら、いじん。胃と腎臓だよ」
ユウはウッキウキで胃を指差す。
「ほぉー、では歌は?」
「歌は… 多分だけど、そのままいけば口とか?」
「あいまいだな。それで? 胃と腎臓と口にどうつながるんだ? さっきのセレンは」
佐藤はまだセレンが引っ掛かっている様子。手をアゴに当てながら人体模型を見ている。
「うえ、この人形キッモ。てかさ、さっきみたいにこの模型自体にヒントが隠れてるんじゃない? 一回触ってみたら? 私はパスー」
ユウが『そうだ!』と言う顔をしてうれしそうに模型を触りだす。ガサガサ。
『ガチャ』
案の定、胃と腎臓だけ模型から取り出すことができた。
「これ…」
と、ユウの手には胃と腎臓。うえぇぇ。しかし、様子が変だ。ユウが胃と腎臓を裏返しにした。裏に何か貼ってある。
https://kakuyomu.jp/users/akilala/news/16818093089678237159
「スライド映写機のフィルムカード?」
「またヒントー? いつまで続くのこれー」
「おい、口はどうだ? 何かあったか?」
「そうだった、口はまだなんだ…」
と、ユウが閉まっている人体模型の口を力づくで開ける。
https://kakuyomu.jp/users/akilala/news/16818093089678335603
「鍵だ」
中から小さな鍵が出てきた。
「小さくない? 何の鍵?」
「わからん」
佐藤は鍵を持って、施錠されている棚に当てて試している。私はフィルムを渡され、ユウは人体模型をまた元に戻した。
「フィルムはどうやって見る? 映すヤツを見つけないと」
辺りを見渡すと前から二番目の机に映写機が固定されていた。私とユウは早速フィルムを入れてみる。スイッチを入れ部屋の明かりを落とした。
「これさー、白い布? 映像映すヤツいるんじゃない? 黒板じゃ何の写真か分かりづらいんだけど。てか、アレ、スクリーン画面だっけ? それ引っ張る所、届かなくない?」
「確かに。スクリーンを下す棒があったはずだけどな」
再び明かりを点け棒を探す。が、一向に見つからない。と、佐藤が私たちのもとに戻ってきた。
「棚の鍵ではなかった」
「小さい鍵だし、大きなドアとかじゃないと思うんだけど…」
私は理科室を見回す。後ろの部屋の隅にあるボロいロッカーが目に入った。
「じゃぁ、アレは? あの掃除道具とか入れてるロッカーは?」
「しかし掃除用具のロッカーに何の意味が?」
「それは… とにかく何でも試してみたら? 私らはあのスクリーンを下す棒を探してるし」
「わかった… 意味がわからんが…」
ブツブツと佐藤は教室の後ろのロッカーへ向かう。
『ガチャ』
「… ひ、開いた」
佐藤はびっくりした顔でロッカーを恐る恐る開ける。すると中には掃除道具は一切なく、おもちゃのマジックハンドだけがあった。
「掃除道具がない… となるとこんなものだがヒントの一つか」
ガシャガシャとプラスチックでできたおもちゃのマジックハンドで遊ぶ佐藤。
「何それー、手がかりがおもちゃとか。ウケるんだけど」
ケラケラと笑う私を通り過ぎ、佐藤は何か思いついたのか、ちょっとドヤ顔をしながら無言でスクリーンを下ろした。
「あーなるー。そう使うのか」
「僕もたまにはピンとくるのさ」
得意げな佐藤はマジックハンドを気に入ったのかまだ持っている。そして下ろしたスクリーンに再び画像を映した。
https://kakuyomu.jp/users/akilala/news/16818093089678374136
「コレ、実験に使うヤツじゃん。フラスコ? だっけ?」
「あぁ。フラスコだ」
「もう一枚は?」
ユウが今の画像を抜いてもう一枚を差し込む。『BIG』と言う文字だけが映る。
https://kakuyomu.jp/users/akilala/news/16818093089678396072
「でかいフラスコって事? いっぱいあるけど? あの星は何だろう?」
うーんとまたも壁にぶち当たった。
「重ねてみる? 差し込み口に余裕があるし、二枚一緒に投影してみる?」
ユウはそう言うと早速二枚重ねて写した。
https://kakuyomu.jp/users/akilala/news/16818093089678411411
「なるほど」
「ふーん」
「あの位置に星がついてるでっかいフラスコを探せばいいんじゃね?」
答え合わせをしなくても三人の意見が一致したので、フラスコやビーカーが陳列してある棚へ移動する。
「今回のは楽勝じゃん。偉人の歌からユウのひらめきで次々解決してるし。私ならあんなキモイ人形思いつかない」
「あはは、まぁ、アレは誰でも気持ち悪いよ。俺もこんな事がない限り触らないし。しかし佐藤はすごいな、マジックハンドの使い道を瞬時にわかるなんて」
「そうか? 僕はあの鍵がまさかロッカーのだとは思わなかった」
「いや、佐藤すげーよ。やっぱ頭がいいだけの事はある」
答えが早々に見つかり、気が抜けたのか私達はお互いを褒め合う。もう、流石にゴールに近いんじゃないかと期待も増してきた。
棚の前につき、三人でうなづき合った。
さぁ、例のフラスコを探そうか。
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