第43話
耳が張り裂けるような爆音で飛び起きた。近年稀に見る最悪な目覚め。
部屋が激しく揺れていた。広い窓には、上から下まで致命的なヒビが入っている。
「な、なななぁ!?」
隣で寝ている七美の肩を揺すり、起こそうとしたが、まだ寝惚けていた。
「んゅ?」
「おいッ!!起きろっ! 部屋が揺れてる。地震かも!!」
その時、部屋をノックする音。カチャッと言う軽い音と共に姿を現したのは、卯月さんだった。
躊躇なく、俺達がいるベッドの上に飛び乗ると、俺だけをゴミのように右足で蹴り飛ばした。
「お嬢様、起きてください」
「ふぁあ~……どうしたのぉ?」
「神楽咲が、攻めてきました。ただ今、警備兵が応戦中です。しばらくご迷惑をおかけします。さぁ、顔を洗ってください。その寝癖も直しますよ」
「ふぁあぁ~~。ほんっと、しつこい虫………。確かに、今この城を落としてパパとタマちゃんを両方始末出来たら、叔父さんが完全な神華の王になれるからね~。でもなぁ………。今まで、パパとママから逃げ回ってた小蝿がさぁ。よっぽど叔母さんに尻を叩かれたんだろうね~。それはそれで、少し可哀想だけど」
卯月さんに容赦なくベッドから叩き落とされた俺は、この揺れが地震ではなく、敵の攻撃だということを初めて理解出来た。
もしかしてコレ、空爆?
えっ、マジで?
「なに、のんびり話してるんだよ!! 早く逃げなきゃ。ほらッ!」
俺の言葉を聞いた七美と卯月さんが、二人同時に笑い出した。
「「 アハハハハハハ 」」
「恐いって!!」
ベッドから、ゆったりと優雅に降りた下着姿の七美。
「タマちゃん。私達に『逃げ』はないんだ」
続々と部屋に入ってくる完全武装した屈強なメイド数名に、有無を言わさず身なりを整えられ、大ホールまで引き摺られた。
「どういう状況!? 痛いです、肩。いっ、痛いっ! お願いだから、聞いて!!」
「タマちゃん。またね~」
笑顔で手を振る七美。困惑し過ぎて、吐きそうだった。
先が霞むほどの長く白いテーブルには、昨晩と同じようにさまざまな料理が宝石のように並んでいた。椅子に座らされ、何事もなかったかのように朝飯が始まった。
今も天井からは、パラパラと白い欠片が落ちてくる……。部屋全体が揺れていて、テーブル上のグラスが、何十個も落ちて割れた。勿体ない。
そんな状況下でも動揺せず、骨付き肉をかじっている野獣、俺の専属メイド。
「よく………食えるな………」
「ふぇ? 何か言った?」
「もしかして………俺の方が、おかしいの?」
「かもね~」
「…………………」
な、ワケねぇだろうがっ!!
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