第42話
俺が、七美の両親に認められたのは彼らが俺の中に眠る狂気、悪魔の存在に気付いたからだろう。
俺は毎日、自分という存在を否定している。自分は、冷酷な人間じゃない。狂ってなんかいないと。
でも本当はさーーーー。
俺がまだ自分のことを『僕』と言い、七美と知り合って間もない頃。ある日、学校から帰ると狭いアパートの六畳間で親父が首を吊って死んでいた。
『…………』
ドアを開けたまま、無言で玄関から動けなかったのは、ショックだったからじゃない。
許せなかったからだ。
俺は、何度も何度もぶら下がった親父を殴った。サンドバッグのように、何度も……。
親父は小さい俺を見捨て、『死』に逃げた。今まで封じてきた怒りが溢れた。
親父に金を貸さなかった銀行。
親父をゴミのように扱った神華の人間。親父の借金を返してくれた七美にも怒りが………。
七美ーーー。
お前には、理解できないだろうけど。親父はさ、借金があったから生きてこれたんだよ。その借金がなくなったらさ、ゼロになったら…………。
どんなに頑張って、頑張って、苦労して、それでも少しも減らない借金が、小さな小学生くらいの女の子に簡単にチャラにされてさ。そこで、あの人の………最後の糸が切れちゃったんだと思う。
だから俺は、七美のことは大好きだけど。………だけどさ、死ぬまでお前のことは許せないと思う。
「ごめ…ん……」
「…………………………」
無言で俺を抱きしめ、頭を撫でてくれる七美。こんなに小さく、過去に縛られてる惨めな自分が情けなく、許せなくて。
それでも俺は、子供のように彼女の胸の中で泣くことしか出来なかった。
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