第22話

噂。






「また出たんだってよ。誘拐魔」




「え~、今度はどこよ」




「金糸町のさ、私立学校の生徒らしいんだけど。また一人消えたんだって」




「はぁ? この近くじゃん。シャレになんねぇな、それ」




「だよねぇ~、私のママも心配してさ。早く帰ってこいってうるさいんだ。部活だってまともに出来ないよ、これじゃあ。大会近いってのに……」




「気持ち悪いよな、ほんと。変態の仕業だろ。そんな奴、私の竹刀でボコボコにしてやるのによ。殺しても正当防衛だろ、そんな奴は」




「ハハ、やりすぎ。……あっ」 








一限のチャイムの音が、学校中に鳴り響く。すると生徒の声も次第に萎んでいき、担任が教室に入る頃には、皆自分達の席についていた。








…………………。




……………。




………。




教師の仮面を外し、ただの男へ。


早めの帰宅。妻が待つ僕の小さな城。




「ただいま」




「おかえりなさい」




はぁ~。誰かが家で待っているだけで、こんなにも安らぐ。




夕飯時。自分の食べかけの皿を見るとハンバーグが一つ増えていた。妻(霊華)が、自分の分のハンバーグを僕の皿に移したみたいだ。


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