第45話 刻印の力と修行の日々
「姉上の刻印の力は不思議な感じがします」
なまずをすべて水槽に入れた後、バイロニーはしみじみとそう言った。いや、お前の刻印の力は不思議というより迷惑だけどな! 俺の料理返せよ!
「この能力がなんなのか、わからないの。どの文献にも刻印のことは載っていないし。王都の外でオオカミの蘇生を試してみたけどできなかったし」
団長はそう言って
団長は悩んでいるのかもしれない。正体不明な異能に。その能力がなんなのか、まったくわからないのだから。
「もう一回、刻印出せますか?」
バイロニーに促されて、団長は左胸に手を置く。眩い光が左胸から放たれて、桃色のオーラが全身から放たれた。そしてそのオーラはなぜか俺の身体に移り、いっそう眩く輝いた。
「なるほど。刻印のオーラは対象へと向かう。私の場合なまずで、姉上の場合、ダスティンなわけですね」
なまずと同列にされてちょっと面白くないが、俺の身体になまずのような変化はない。
「大和、なんか感じない? 今までの自分とは違う、みたいな?」
姉ちゃんは俺に感想を促すが、言われてみると力がみなぎっている気がする?
「前にこのオーラをまとって戦闘になったことがある。俺よりも遥かに格上のクラウディアを圧倒する勢いだった。それが団長の刻印の力?」
「でも、僕自身は何もないみたい。ダスティンだけに変化があるのかな?」
ヤバい。俺は愛の力で強くなる愛の戦士? 主人公感あるじゃないか。もう主役はクラウディアから奪う勢いで頑張るしかないな!
「私も、刻印の力を出しても私自身に変化はありません。なまずだけに変化が現れましたから、そういうものなんじゃないですかね? 詳しくは母上に聞きましょう」
そう言って、その場はお開きとなった。
◇◆◇
とはいえ、不意に起こる戦闘中に、そうそう刻印の力なんて発揮できるわけもない。なぜなら、刻印を出す一瞬は、団長が戦闘不能になるからだ。
宿を発ち、山道を移動中に潜んでいた敵達と戦闘になった。言葉の訛りから、イバキラ王国からやってきた刺客とわかる。
彼らはバイロニーの馬車がこの道を通るのを待ち伏せをしていたのだ。
殺意を持って向かってくる敵の喉に剣を当て、別の方角から向かってくる剣をギリギリで避ける。腹部を切り裂き、勢いよく前進する。
団長と交戦する一人を切り裂き、残りの敵がいないか見渡した。
「うん、スタミナは育ってきたね」
団長は自分も戦闘しつつ、俺の様子も伺っていたようだ。
「ただ、無駄な動きが多くないかな? ハンゾーさん、どう思います?」
「私は見ていないからわかりませんが……」
ハンゾーさんは俺には全く興味がない様子。
「じゃあ、朝連は僕と十本やった後、ハンゾーさんとも十本手合わせね。よし、次の目的地まで走るよっ」
「はいぃぃぃぃっ」
地獄のしごきである。
俺はイバキラ王国からやってきた刺客を捌き、駆け足で移動しながら団長、ハンゾーさんという二人の凄腕剣客を相手に容赦ない手合わせをこなさねばならない。
ハチワレ団にいた時よりもハードな訓練をこなしている。これは帰った時、ユージンなど秒で倒せるくらい強くなってるな、きっと。
◇◆◇
「というわけで、ほんとしんどいけど、団長との愛が深まって幸せなんだよぉぉ」
姉ちゃん、バイロニーと合流し、サノ地方の屋台に入る。ここには名物のサノヌードルなるものがあるのだ。
「はい、おまち」
屋台のオヤジが大きいどんぶりを出してきた。
澄んだスープに腰のあるちぢれ麺。疲れた身体に染みわたるぅぅぅ~。
この世界の人々は、ナイフとフォークの他、ちゃんとハシも使えるのだ。ヌーハラなんて言葉知ったこっちゃない。ズルズル……ズルルル~と勢いよくヌードルをすするのだ。途中で切っちゃだめなんだぞ。
「で、リオ様には勝てたの?」
「勝てない~~。でも、ハンゾーさんからは三本取れたよ」
「へ~えらいえらい」
姉ちゃんは俺をなでなでしてから、関係ないバイロニーもなでなでしている。
「それにしても、我々だけで屋台を貸し切り状態にしてしまいましたね」
団長は辺りを見渡す。
辺境伯家の護衛軍団で、万全の警護態勢を敷いている。屋台を二十人の護衛で囲み、交代でサノヌードルをすすっているのだ。
その周りを、さらに隠密軍団が見張っている。国元にいた時よりも万全ではないかとすら思う。
こんな状態ならバイロニーは大丈夫だろう、と少しの油断があった。
「あ、俺、トイレ行ってくるね」
「いっといれ~」
姉ちゃんと軽くそんな会話を交わし、屋台のオヤジにトイレの場所を聞く。その時、魔術師のフードを被った若い男が話しかけてきた。
「私もちょうどトイレに行くところだったのです。一緒に行きません?」
知らない男と連れションかぁ~。別にいいけど。
「どこ行くんです?」
ハンゾーさんが声をかけてきた。
「トイレですよ」
そう言って、トイレを済ませたその時だった。
フードを被った男がワサっと俺に網をかけてきた。
「へっ?……ぎゃぁぁっ」
間抜けな声をあげた瞬間、網から電流が走り、全身に鋭い痛みと痺れが走る。そのまま網を持ちあげられ、身体が宙に浮いた。
「へっ? えぇぇぇぇっ!?」
網はまるで魚を水揚げするように俺を囲み、ホウキに縛り付けられている。俺に声をかけた男がホウキに乗って宙を浮く。
「ダスティン殿下!?」
俺に気付いてくれたハンゾーさんが声をあげる。
「ダスティンっ!」
団長が俺を見上げて声をあげた。
「だんちょぉぉぉぉぉ~!!」
俺を縛り上げたホウキはふわふわと山の奥へと向かって行った。
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もはやこの先、何が起きるのかはご想像がつくと思います笑
TSBLの描写が入ります。
本作はBL作品ではなく掲載先もカクヨムであるため、そんな可哀想なエロ展開にはならず、主人公も応戦します。が、ちょっと抵抗があるなぁという方は3ページ先にお進みください。
※3ページ先↓ 冒頭に2ページ分のあらすじ書いてます!
https://kakuyomu.jp/works/16818093089516579848/episodes/16818093091162135627
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