第2話 猫にも負けず?


にゃ~と、僕の膝に乗る黒猫ことフーちゃんが鳴いた。


「なんでや……」


特に何もしていないのになつかれた。


椅子に座って寝ていたら急に膝の上に乗ってきたのだ。


「懐かれたみたいね」


レビーがやってきて微笑んだ。


「僕のなににひかれたんだ?」


「さあ? 見つけてくれたのが嬉しかったんじゃない?」


「もしかしたら僕の色気に引き寄せ──」


「その子雄よ」


「そっすか……」


そっか、こいつ雄なのか。


飼い主はどこに行ったのやら。


名前がついてるのであれば飼い主ぐらいいるだろう。


元々飼い主が心配して探していたのだろうし。


「それでこの猫の飼い主はなにしてるんだ? ほったらかしにし過ぎだろ」


「あなたよ」


「……なに言ってるの?」


「だからその猫、フーちゃんの飼い主はあなたよ」


「身に覚えがないんだけど……」


「ギルドの皆で考えてね、いつも暇そうなシンに世話を任せようってなったの」


そんな勝手な。


僕の知らないところでペットを飼うことになっていたらしい。


僕はこの猫の面倒をずっと見ないといけないのか?


「安心して、その子のご飯はギルドの皆が適当にあげているから」


「なんて羨ましい猫なんだ」


レビーがため息を吐くように呆れた顔になる。


「あなたもその猫と同じよ。あなたの食事、誰が出していると思ってんの」


ギルドの料理担当の人たちでした。


僕はSランク冒険者としてこのギルドでかなりの好待遇を受けている。


食事の無料化もその特権の一つだ。


どうやらSランク冒険者である僕はペット扱いらしい。


他のSランク冒険者の二人はほぼギルドにいないから自分がペット扱いされていることに気付かなかった。


僕は鳴いたほうがいいか?


「ニャー」


「キモい」


「言わないでごめんなさい」


普通にレビーが引いた。


やはりこの猫が羨ましい。


鳴くだけでみんな優しくてご飯をくれる。


いや、はたから見たら僕もそう見えるのか?


「シン、お願いがあるんだけど」


僕は普段からレビーに言いたいことがあった。


「レビー」


「なによ」


「お願いってなに? 依頼じゃなくて?」


僕はただの使いっぱしりじゃないんだが。


Sランク冒険者なんですけど?


「この猫の首輪を飼ってきて欲しいの」


「なんで?」


確かにこの猫は首輪をしていないが。


「見分けがつかないからよ。ほら、あそこ」


レビーが指さす先には猫の集団とそれを操る一人の少女がいた。


「あの子、アイちゃんって言うんだけど、拾った猫の飼い主を探して回ってるの」


「つまり……」


飼い主を探している猫の為に僕は勝手にギルドの連中に押し付けられたのか。


「この猫、他に飼い主は──」


「もう役所に登録しちゃったわ」


ウインクしながらレビーが舌を出した。


コイツ……。

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