「説叙文」及び「揶揄」  志野焼に就いて

                            茶陶(ちゃたう)それ


                       しのとそ云(い)ひ

                    しにしこそあれ 

                              

                        小孔(せうこう)

                   貫入(くゎんにう) 火色(ひいろ)

                  あらはれ

                 長石(ちゃうせき)釉(いう)と云(ふ)  

                     釉薬(いうやく) の   

                         白(しら)くなりにし  

        

                            しの釉(くすり)


                   卯に かすみしか 

                の鐡絵(てつゑ)付(つけ)  

                        

                    美濃の碗


<説叙文>

和歌の若(ごと)くに懐紙に綴られ、床間(とこま)の茶掛にされたるは、曾祖父手ずから、名物にあらず。紙裂(かみきれ)なるも同然なるもの、祖廟(そべう)が人の遺文(いぶみ)と雖(いへど)も、世辞にも善(ゑ)しとは言へぬしろもの。数寄屋造の普請に尽くし、古筆(こひつ)墨(ぼく)蹟(せき)、遙(はるか)及ばず、紙繊(しせん)を薄めしCaféに浸し、年経りしかの余情(よじゃう)を醸す。詩文(しぶみ)か水墨(すみゑ)にしあらばかくても、文(ふみ)それ、茶腕の解説(けせつ)。彼(か)の天稟をば偲ばせる哉。

 ※ 編纂者補遺註  天易家は眞神郡龍呑村の旧家。





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