1.期末試験は戦争 ≪前編≫
日本の大学生活における4年間は、
都内某所にある私立
とはいっても絶えず悠々自適な日常が続くわけではなく、学期末には当然に期末試験が待ち受けている。
そこで一定水準の点数を獲得し単位を取得出来なければ——
だが普段から
——次の試験は著作権法。持ち込みは筆記具と『どこでも六法』だけのテスト一発勝負。復習に抜かりはない…!
※『どこでも六法』とは、憲法および主要な法令を抜粋した勉学用の小型冊子である。小型でも充分に
「それじゃあ
300人程が収容出来る劇場型の講堂の中には100人弱の受験者が着席しており、壇上では眼鏡を掛けて全身黒尽くめでゴーグルのような眼鏡をかけた、
教授の姿は見当たらなかったが、それ自体は他の試験でも珍しいことではなかった。
「本日は教授がぎっくり腰でお休みなんで、ゼミ生である私が試験を担当しまぁす」
低音イケボで
——なんで試験官があの人だけなんだ? それにもうチャイムが鳴るのに、問題冊子も答案用紙も配布する様子がない…?
「試験内容は私を
——え? …は?
恵が耳を疑った直後、試験開始を
中には
——何これ!? 何がどうなってんだよ!?
当然のように筆記試験の開始を身構えていた恵は、当然のように武装し容赦ない銃撃と爆撃を浴びせる受験者の
だがそれも
次々と机や椅子が
——訳わかんねぇよ!? こんなのもう試験でも何でもない、早く脱出しないと…!?
「おい、恵!! 無事か!?」
不意に
恵は千亜紀の無事に
『千亜紀、これどうなってんだよマジで!? 著作権法の試験で合ってるよな!?』
「そうに決まってるだろ! なんでおまえ何の対策もしねぇ丸腰で来てんだよ!?」
『いや充分に対策したわ! 条文とか判例とか! おまえこそ午前中に俺のノート一式コピーしてたの何だったんだよ!?』
「らしくねぇなぁ恵、教授の趣味はサバゲ―だって初回で紹介してただろ! だから試験内容は筆記かサバゲ―か、どちらが来てもいいように準備して当然だろうがよ!!」
『どう考えても講義でやった問題出すのが当然じゃねぇか!?』
「でも他の連中も皆サバゲ―の準備して来てるぞ」
『俺の常識が間違ってんの!? てかこれサバゲ―じゃねぇって!!』
自然と口論に熱くなっていると、2人の付近に新たな反撃の弾道が降り掛かって再び爆発を起こした。襲い来る
「恵、とにかく今はキャンさんを
『キャンさんって誰!?』
「壇上にいる試験官、
『いや教授との戦闘対策すら知らねぇから!! てか、そのキャンさんて
「キャンさんは学部の先輩であり、俺がバイトしてる居酒屋の先輩だ! よく客が残した料理を摘まみ食いしている! 中でも
『おまえも何一つ有用な攻略法を持っていないことはよく
「馬鹿野郎! うちなんちゅなら
『習ってないし沖縄県民への偏見が
だが再び2人のもとに舞台からの弾道が突き刺さり、恵は今度こそ衝撃で吹っ飛ばされた。少し離れた
『千亜紀!? 大丈夫かーーっ!?』
恵が迫真の想いで呼びかけると、煙の向こうからは弱々しい千亜紀の声が返ってきた。
「沖縄の人、すいませんでした~…」
恵はその
「どうしたの? 千亜紀やられた?」
また別の聞き慣れた声が
千亜紀とは対照的にあまり物事に動じない性格でありながら、春もまたしっかりとこの状況に適応しているように見えた。
『春まで何やってんだよ!? こんなの試験でも何でもねぇよ、早く逃げようぜ!?』
「僕はちゃんと勝算があって
『おまえまでそれを言うか!? 大体こんな重火器の
「え? 2番校舎の地下購買の裏手にある隠し部屋で買ったり借りたり
『
「
『その情報はいまどうでもいいよ!? てか、おまえはさっきから何やってんだよ!?』
「ああ、これ? 僕はいまペンシルロケットを20本連結させてるんだよ。まさか文具に偽装させた武器すら持ち合わせがないのかい?」
*****
春の口から出た聞き覚えのある道具の名に、恵は再び
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