金魚鉢

私はそれこそ二度手間をしてしまった。

うまいこと進めばよかったものの、

私はなんらかの欠落を

補わなければいけなくなった。

そうこうしているうちに

彼は車から降りてきた。

私はカーラジオの音を大きくし、

窓を開けながら車を降りた。

とある街道の最果て、とでも言おうか。

辺りは森に囲まれ、鳥の鳴く声が降る。

彼は小洒落た背広を着て、車から降りてきた。

彼は縦幅の大きいサングラスを着け、

我が物顔でこちらへ向かってくる。

彼は一歩、一歩と着実に私の方へ近づいてくる。

私が車のドアを閉めると彼はこう言った。

意味はさっぱりわからなかったが、

彼はこう言った。

「金魚に名前をつけちゃいけない理由、

牡丹、あんたにはわかるか?」

私はさあ?と答える。私の名は牡丹だ。

花札六月から名前を取っている。

彼は背広の胸ポケットから紙煙草を取り出し

火をつける。一縷の煙が空に舞う。

「ありゃ仲間を道連れにするっていうらしいわ、あんたみたいに」

私は何も言わずに言った。

「ほんまは殺したくないねん、

せやから仕方あるまい」

彼はトカレフTT-33に弾倉に弾を込め、

私の眉間へと向けた。その距離数センチ。

「あんたは優秀やった、せやけど

あんな失態を犯すとはな、ほんま勿体ない。

才能が溶けてもうたか?」

私は彼が右手で火のついた煙草を口に持って行こうとする間に私の左手は車の中へ。俊敏に私は拳銃を向けることができた。

彼は予想外だったのか

右手の煙草を地面に落とした。

「ははん、こりゃ驚いた。あんたもまあ、

すごい素質を持ってはんなあ」

彼は口角を上げて笑った。

「まあ、ええわ。ほんなら、勝負しよや、な。小さい頃、鉄砲遊びってのあったろ、

こう銃を撃つフリしてばん!みたいやつ。

あれをやろう。せやけどな、これを使うねん。ほんもんの銃な。これを向けてばん!って言い合う。反射的に先に撃ってしまった方が負けや」

彼はとても饒舌だ。私はこのまま一発、撃ち抜かれるよりかはと、彼の誘いに乗った。

「あんた、ええとこあるがな。ほな、やろう」

と彼が言った途端。私は彼の眉間に向けて引き金を引いた。見事に頭を貫かれた彼は

無言でその場に倒れ込んだ。

私は敢えて二度手間をし、リスクを生み出した。今回のターゲットは彼でもあった。

彼を誘き出すためにここへきた。

私は彼の亡骸を見ずに運転席へ乗り込んだ。

その時全てを悟った。私の左のこめかみに銃口が押しつけられている。私の組の若い男だ。

いつからいた?と私は聞く。

「それは朝からずっと。よく気づかないなと思っていた」

「で、俺も死ぬと」

「あんたも名前あるからな、道連れだ」

私はそっと安堵した顔を見せる。

「それはお前もだ、桐。親父の部屋にある花瓶、あれは爆発物が入ってる。この組も終いだ」

彼は目を見開きながら「何をしやがった」と私の左腕を掴んだ。

彼は必死に扉を開けようとする。しかしながら施錠されている。彼は慌てて鍵を解こうとする。

「勝負」

私の車は一目散に大爆発を起こした。

私たちは金魚鉢が床に砕け落ち、

水を求めるように灰に

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