ゆめの中に入る

葉っぱ

第1話 スケッチブックとカード





 「いでよ、我が同胞 、応龍(おうりゅう)


すべての世界に散らばりし我が同胞よ


今やすべての準備は整ったっ!」


その言葉を発した、その者をシエンは睨む。


それと同時に、その者らの舞台に現れたひとりの少年の一言で事態はさらに混乱の渦を巻く。


「その龍は、我が世界たる歴史ある神獣っ!


勝手にカードとして持ち出されては、困るっ!」


そんな口論が始まるか始まらないかで、雷鳴が轟きその場にその龍は降臨する。

応龍のカードは金色に輝いていた。


だが、この混乱に乗じてソレを“仲間たち”共に見ていたが、シエンは自分の家族である少女に目配せする。少女は首をふる。

強くシエンは、目でまた合図する。


少女は根負けして、懐から一枚のカードをシエンに渡す。


シエンがそれを天にかざしたとき。

そのカードは白い光を発し上空を埋め尽くしていた真っ黒な雲からひとつ光芒が射す。


その光芒に、混乱を極めていた民衆は騒めく応龍を降臨させた者も、それに抗議していた者もみな眼を見張った。シエンはこう高らかに唄った。


「すべての同胞らに問うっ!


チカラがあれば何をしてもよいのかっ!


それが鏡を砕くと知っての愚行か!


さあ問うぞ!我が同胞よすべてのいのちたちよ!


我らが願う すべてのいのちの未来たちよ


ゆめゆめ忘れるなっ!


すべての願いが"すべてのいのちに死を"という意味ではないと! 」


「まだわからぬか、深淵たる我が同胞よっ! リアスさまに刃向かうと言うのかっ!」


その舞台、都市部の中心の十字路で二つの光が天まで走る、すでに出現していた応龍は黒い雲の向こうにいるであろう敵を睨む。


だが、応龍の下にいる人々は今度はなんだなんだと息を呑んで見ていた。


応龍は、まだ見えぬ敵に唸る。

それに答えるように光芒の光が濃くなり


光芒がふたつ、みっつとだんだん増えていく。


いっぽう、上空の争いでの闘いへの火蓋はまだ切れぬ間に、地上の方ではシエンと応龍を降臨させた者との争いは白熱した闘いが繰り広げられていた。


鍔迫り合いの音色が都市部の十字路の真ん中から響く、我々が見る舞台はまっすぐ前から向こうまで、道のど真ん中で両者は争いを一時的に休戦する。


左手に水色のアクアマリンの剣を持つのは、

シエン。



右手に赤い色のガーネットの剣を持つ者

応龍を降臨させたその者にシエンは語りかける。


「ユリア、私は、いや俺たちがなぜこの世界にやってきた理由を思い出せ。


俺たちが目指してきた未来たちを 」


ー我らが目指して歩いてきた道筋を


スッと目を細めるユリアは口元を歪める。それは冷笑だった。


「はっ、我が同胞よ、

笑えぬ言葉ばかり並べて時間稼ぎか?

散らばった同胞の到着か、それとも貴様が触れた“家族愛”、それとも“友情”とやらで出来ていて、それもソレにタマシイが宿ったというべき者たちの到着が先か、であろう?」


ーさてはて、我々はサッカーやら

ーはたまた、我々はカードゲームやら


「はてさて、どうする?


いま自分がしていることを顧みてみよ。



我が同胞よ 我らは、あの者たちのように


歩めぬ。


光のもとに集えぬ者らばかりよ。


それさえ、知ってなお。


あの者らを呼ぶのか?


いま我らが握っている剣をみよ。


闘い方の違いを見よ。



ー畑違いであろう?」


我らは、サッカーというボールで争わない


我らは、カードゲームで心を通わせる事はない


「それが我らの根に、我らの根源を見よ


我らは、創生の神に何度も裏切られたのではないか?


我らのやり方をみよ。


ーまったく、この意味もわからぬのならば


この闘いには何の意味もない。


話にもならんよ。呆れて物も言えぬ。」


ユリアは、またカードを翳す。応龍は濃くなる光の色を睨むのをやめ、自分のアルジなる者に顔を近づける。ユリアは愛しい気に応龍に触ろうとして、左手に剣を持って右手で触れようとした。


だが、なぜかユリアは触ろうとした手を止めて黄金に輝くカードを先程抗議していた同胞にカードを渡した。


渡された者は、困惑してユリアを見た。


だが、その場にはもうユリアはいなかった。


シエンは、アクアマリンの剣をひとふりしたあと剣を光に変え、また剣は跡形もなく消え去った。


シエンはユリアの居たその場所をしばらく黙って見ていたが、手元のカードを再び天へ翳す、するとビュッウと強い風が上空の真っ黒な雲たちを引き裂き、シエンが持っているカードは白金に輝いたとき。都市部の十字路の真ん中にいたシエンに近づくシエンと同い年ぐらいの少年が走ってきた。


グォオオオオっ!


ユリアが居なくなるやいなや、応龍は天を仰ぎ、咆哮をあげた。シエンの近くまできた少年が、ユリアから応龍のカードを受け取った者に話しかける。


「サエザキさん、速やかに応龍を捕獲しなければ、あなた方が大変なのでは?


ここの混乱を彼らはテレビのLive中継で、見ていたはず。早い所撤収しなければ


ー“この世界の主人”が現れますよ?」


その言葉でユリアの行動に困惑していた少年、サエザキはその少年の言葉にハッとして

周りを見渡して青ざめる。


天空を見れば、こちらの世界での神の一体、茶色いドラゴンがいるのに気がつく。これはヤバイ。応龍が再び唸る。


「っ、全員撤退せよっ!」


「ーほう、これほどの混乱を招いておいて」



ー今更、逃げられると思っているのか?



サエザキは、さらに青ざめる顔をさらに今度は、白くさせ。声がした方向へ顔を向ける。

シエンは冷めた瞳でそちらを見る。そして、ユリアとは違う冷笑をその者に向けた。


「嗚呼、この世界での“警察”のお出ましか


随分、遅い誘導だな。」


ー確か、シャドウハンターだったかな?


その物言いに相手、語常ごじょうは青い血管を額あたりに浮かべてシエンを睨んで、手を翳した後、構えた。

それに青ざめたのはサエザキだけではない。

シエンの近くまで来た少年もだった。


「シエンっ、この世界のルールを知っているなら、速くっ!


俺たちはっ、!?」


シエンは、近くに来た少年の口を右手で塞ぐ

そして自分の懐からカードを出す。

そのカードを語常にカードを翳して、こう高らかに叫んだ。


「逆巻く時!」


途端に周りは霧が包み込んだ。

あまりの出来事に語常の後ろや都市部の十字路をシャドウハンターの人員、それも相当な数なのにも関わらず、あたりを見渡しても霧で誰がどこにいたのかもわからない。


また何より霧が晴れてしまえば、先程までビルの窓のガラスや、ビルの瓦礫がそこかしこにあって、負傷者や、死者などいたはずの都市部の十字路は綺麗にいつも通りになっていて時間や景色を見れば、もう夕焼けの太陽が光りを手にしてこちらに手を振っていた。


応龍もいない。民衆は狐につままれたということに呆然とキョロキョロと周りを見渡すと一か所だけ幻の欠片がひとつ残っていた。


一枚のスケッチブックらしき物が十字路の真ん中で黄金色の炎に焼かれていた。


民衆は、駆け付けたシャドウハンターの誘導に渋々従っていつも通りの日常に帰っていった。ただいつもと違う所がある。あの混乱が奇跡的に撮影されていて、それが大々的に報道されていることだ。


何という中途半端に残ってる現実たちは知りし者と信じない者とどちらでもない者と複雑化していった。


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ゆめの中に入る 葉っぱ @kourogi1278

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