第11話 安心薬膳サラダと「心の犯人探し」

 ある町に「ゆらぎの町」という場所がありました。この町には、美しい緑と穏やかな風景が広がっていましたが、人々の心にはいつも小さな悩みの影がつきまとっていました。


 「なんでこんなにイライラするんだろう…」

 「急に悲しくなるのはどうして?」


 みんながそれぞれの悩みを抱えていましたが、解決方法が分かりませんでした。そんなとき、町に現れたのは「心の探偵」と呼ばれる不思議な人物でした。




 心の探偵は、白いコートを羽織った優しい表情の女性でした。彼女は町の広場で、こう呼びかけました。


 「皆さん、あなたの心の中に隠れている『苦しみの犯人』を探してみませんか?犯人が分かれば、きっと心が軽くなりますよ!」


 町の人々は興味を持ちましたが、どうやって探すのか分かりませんでした。そのとき、探偵はにっこりと笑いながら言いました。


 「心を癒す鍵は、おいしい『安心薬膳サラダ』の中に隠れています!」




 探偵は、特別なサラダの材料を集め始めました。


 水菜:さっぱりとした味わいで、心を落ち着かせる力を持っています。

 韓国のり:海の恵みが心を柔らかく包み込みます。

 松の実:ポリポリとした食感が、考えすぎた心をリセットします。

 クコの実:赤い実がエネルギーを補い、元気を与えてくれます。

 「このサラダを食べると、不思議なことが起こります。あなたの苦痛を生み出している『犯人』が見えるようになるんです。」




 町の子どもたちが探偵を手伝うことになりました。みんなで材料を集め、調味料を混ぜ、特製のサラダを作り始めます。


 水菜を切り、韓国のりをちぎり、松の実を香ばしく煎り、クコの実をふやかします。探偵が優しく言いました。


 「サラダを作るときは、心を込めて作ることが大切です。一つひとつの材料に、『ありがとう』って気持ちを込めてみてね。」


 子どもたちは楽しそうに作業を進めました。




 いよいよサラダが完成し、みんなで一口食べてみました。その瞬間、驚くべきことが起こりました。


 一人の男の子が叫びました。「あっ、分かった!僕を悲しくしていたのは、僕が『どうせうまくいかない』って思い込んでいたことだ!」


 別の女の子も、「私のイライラは、いつも『みんなが私をちゃんと見てくれない』って感じてたからだ!」


 探偵はうなずきながら言いました。「その犯人は、あなたの中の『間違った思い込み』や『期待しすぎる気持ち』かもしれませんね。それを優しく見つめて、『もう大丈夫だよ』って許してあげるといいですよ。」




 サラダを食べ終えたころ、町の人々の表情がどんどん明るくなっていきました。


 「なんだか心が軽くなった気がする。」

 「本当に、自分の中に答えがあったんだね。」


 探偵は最後にこう言いました。


 「すべての苦しみは、あなた自身が作り出した観念から生まれています。でも、その観念に気づいて手放すことで、心の平安を取り戻せるんです。」



 

 それ以来、ゆらぎの町では「安心薬膳サラダの日」を作り、みんなで心の中を見つめる時間を持つようになりました。


 町は再び穏やかさを取り戻し、人々は自分の感情を大切にしながら生きていきました。そして、子どもたちはこう言いました。


 「苦しみの犯人は怖くないんだね。だって、僕たちが自分で仲良くなれるんだから!」


 探偵は微笑みながら答えました。「その通り。心の中の犯人は、あなたの一番の友達になるかもしれませんよ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る