第10話 なくした愛の種

 ある小さな村に、「ホッと村」という名前のところがありました。この村では、心が温かい人々が仲良く暮らしていました。でも最近、村全体が少しずつ冷たくなり、人々はお互いに怒ったり、悲しんだりすることが増えていました。


 「愛がなくなっちゃったんだ…」


 村の賢者のおばあさんは、心配そうに呟きました。「みんなが愛を分け合うのを忘れちゃったからね。誰かが愛を思い出させてくれるといいけど…」




 村の外れに、じゃがいもが住んでいました。じゃがいもは、大地の中でたくさんの栄養を吸い込み、村の人々に「温かいお腹と幸せな気持ち」を届けるのが仕事でした。でも最近は、じゃがいもも元気がありませんでした。


 「僕が頑張って栄養を届けても、みんなお互いに文句ばっかり…。これじゃ愛なんて育たないよ。」


 じゃがいもはそう呟きながらも、ある日、一つのアイデアを思いつきます。




 じゃがいもは、仲良しの「卵」と「にら」と相談しました。


 「どうすれば村の人たちが、また愛を思い出せると思う?」


 卵は考え込んだ後、答えました。


 「みんなで食べるおいしいごはんを作れば、きっと笑顔が戻るよ!僕たちが力を合わせて『ふわふわチジミ』を作ろう!」


 にらもにっこりと頷きました。「僕たちの栄養で、村のみんなを元気にしよう!」




 じゃがいもたちは、他の材料を探すために旅に出ました。にんじん、豚肉、そして調味料の「しょうゆ」や「ゴマ油」たちにも声をかけました。


 「みんな、僕たちと一緒に村を元気にしよう!」


 仲間たちはみんな協力してくれることになり、ついに「ふわふわチジミ」の準備が整いました。




 村の広場で、じゃがいもたちは大きなフライパンを用意しました。そして、卵やにらと一緒にふわふわチジミを焼き始めます。じゅわーっという音と香ばしい匂いが広場中に広がると、村の人々が集まってきました。


 「いい匂いだね!」「何を作っているの?」


 じゃがいもたちはにっこり笑って言いました。「ふわふわチジミだよ!これは愛を思い出すための料理なんだ。」


 最初は「愛なんて本当にあるの?」と疑う人もいました。でも、みんなでテーブルを囲んでチジミを食べ始めると、不思議なことが起こりました。




 ふわふわチジミを一口食べた瞬間、村の人々の表情が一気に明るくなりました。


 「あれ?なんだか心がポカポカしてきた!」

 「この味、どこか懐かしい…。昔、お母さんが作ってくれた料理を思い出したよ。」


 そして、みんながお互いに感謝の言葉を言い始めました。


 「いつも助けてくれてありがとう。」

 「ごめんね、昨日は怒ってしまって。」


 その場にいた全員が、心の中にあった温かい気持ちを思い出し、自然と笑顔になりました。




 村の賢者のおばあさんが、その様子を見て言いました。


 「愛は、相手に見返りを求めずに与えるもの。だからこそ、その愛はどんどん増えていくんだよ。」


 村の人々はうなずきました。


 「確かに、誰かにありがとうって言うだけで、自分の心も温かくなるね。」

 「愛を与えることって、こんなに簡単で素敵なことだったんだ!」




 それ以来、ホッと村では毎年「ふわふわチジミの日」を祝うようになりました。みんながテーブルを囲み、愛を分け合う時間を大切にしています。


 じゃがいもたちも、卵やにらたちと一緒に村の笑顔を見守りながら、こう思いました。


 「僕たちの栄養と愛が、みんなの心をホッとさせたんだ。」



 君もふわふわチジミを作ってみない?家族や友達と一緒に食べれば、きっとみんなの心がホッと温かくなるよ。そして、愛を与えることの楽しさを感じられるはず!


 「愛は分け合うほどに大きくなる」。そんな魔法を、君の周りにも広げてみようね!

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