第15話ストレイドッグ

 いやー、さっきの戦いの経験値は美味かったなー!

 私みたいなゲーム好きは一気にLVアップできると脳汁出ちゃうんだよねー!

 だって強くなるのって楽しいじゃん?

 あれ……? この思考って他者に勝ろうとする〖修羅界〗の効果が出ちゃってるのかな?

 まあ、考えてもわかんないし、私の元からの性格って事でいっかー。


 大量のコウモリたちを倒し尽くした私は〖水魔法LV1〗で覚えた〖癒しの水〗でHPを回復させ、さらに洞窟の奥に進む。

 すると、洞窟の一番奥に二体の魔物の気配を探知した。


「ガルルルルルルルッ!」


 洞窟の奥は少し広い広場になっており、その中心に二体の獣型の魔物がいた。

 向こうも探知したのか、私を見つけた魔物の一体が前に出て低い唸り声を上げる。

 その姿は前世でも見慣れた四足歩行の動物と酷似していた。


 あれって犬だよね?

 でも、あの私を食い殺してやるぞって気迫のある怖い顔は飼い犬のそれじゃあない。野犬ってところか?

 とにかくまずは〖鑑定〗だ!


―――――――――――――――――――――


種族:ストレイドッグ

ランク:E+

LV :14/25

HP :69/69

MP :31/31

攻撃力:58

防御力:41

魔力 :31

素早さ:62


通常スキル

〖気配探知L3〗〖牙撃LV3〗〖体当たりLV2〗

〖隠密LV1〗


耐性スキル

〖物理耐性LV3〗〖毒耐性LV2〗


称号スキル

なし


スキルポイント:210


―――――――――――――――――――――


 結構強いぞこの野犬。魔法がない代わりに攻撃力と防御力、その上素早さまで高い物理攻撃特化タイプだ。

 私の方がLVが高いから基礎ステータスは上だけど、今は消耗してるからMPが心許ない。

 回復魔法があるとはいえ、敵の攻撃はできるだけ躱すようにしなきゃ。


「ガルルォオオオッ!」


 〖鑑定〗した情報から戦略を練っていると、考えが纏まる前に雄叫びを上げて先頭の野犬が襲いかかってきた。

 ちょちょちょーッ!

 まだ戦略ができてないんだから待っててよ!

 これだから躾のできていない野犬は凶暴で困る。飼い主は何をしてるのよ!

 あっ、飼い主がいないから野犬なのか、ストレイドッグって野犬て意味だもんね。

 そんな事より迎撃だ!


 疾駆してくる野犬を迎撃するべく〖ファイアブレス〗を放つ。

 それを野犬は野生の勘なのか、スピードを緩める事なく見事なサイドステップで回避して飛びかかってきた。


 範囲攻撃の〖ファイアブレス〗を躱したか!

 だがそれも想定内! 私の〖ファイアブレス〗は二段構えよ!


「キャウウンッ!」


 私は飛びかかってきた野犬に回転の遠心力を加えた〖尻尾攻撃〗を叩き込む。

 〖尻尾攻撃〗の直撃を受けて吹き飛ばされた野犬は壁に叩きつけられると悲鳴を上げるが、すぐにヨロヨロと立ち上がってきた。


 今ので野犬のHPを半分くらいまで減らせたわ。

 けど、私への警戒を強めたみたい。様子を見ていたもう一匹が出てきちゃった。

 できれば先に一匹仕留めておきたかったな。

 追撃をかけるのが正解だったか?


「ガルルルルル……」


 二体の野犬が合流すると、私を中心に円を描くように周り始める。

 いつ飛びかかってくるか読めない……緩急をつけたサークリングが厄介だわ。

 この野犬、二体での狩りになれてるわね……。


「ガルアアアアアッ!」


 私の周りをサークリングしていた野犬が二体同時に飛びかかってきた。

 くそっ! 同時攻撃できたか!

 しょうがない、一体は諦める!

 二体同時に対処する事を諦めた私は一体に狙いを定めて〖爪撃〗を繰り出す。


「ガウッ!」


 一体に狙いを定めたにもかかわらず、途中でスピードを緩めた野犬に私の〖爪撃〗は躱されてしまう。

 そして、後ろに回り込んでいたもう一体が〖爪撃〗を空振りして体勢の崩れた私の尻尾に噛みついてきた。

 ぁ痛ーいッ!

 しくった! 緩急をつけた動きで私の攻撃タイミングをずらしたのか……!


 野犬を振り払おうと尻尾をバタバタさせるが、振り払うどころか牙はより深く食い込んできた。

 くっそー! 私の尻尾は痛覚が弱いとはいえ、これだけ深く噛まれるとさすがに痛い……!

 早くなんとかしなくちゃ――痛ぁぁああ!


 尻尾に意識が向いている隙に、もう一体が私の肩に噛みついていた。

 まずい! HPがどんどん減ってる!

 早く振りほどかなきゃ!


「キャウンッ!」


 私が野犬を引っ付けたまま地面に〖尻尾攻撃〗、壁に〖体当たり〗を打ち込む。

 すると、ダメージを受けた野犬は悲鳴を上げて牙を離した。

 地面と壁に叩きつけて野犬を引き剝がす事に成功し、お互い距離を取って睨み合う膠着状態になった。


 この野犬は特殊な攻撃は持ってないし、私の方がステータスが上だから二体相手にしてもいけると思ったんだけどな。

 連携する事でここまでステータス差を埋めてくるとは、思ったよりやるじゃないの。


 ん? あの野犬が咥えてるのはなんだ?

 あ、もしかして……。


 そうっと後ろに振り返り確認すると、私の尻尾が半分ほどなくなっていた。

 あんのクソ野犬やりやがったな!

 尻尾の仇……絶対に許さんぞぉおお!

 こうなったらダメージ覚悟で突撃じゃー!


 私は素早く〖肉体再生〗で尻尾を再生し、〖癒しの水〗でHPを回復してから野犬に向かって駆け出す。


「ガウアアッ!」


 私は野犬の一体に狙いを定めて追い回す。

 後ろからもう一体が胴体に噛み付いてくるが、お構いなしに逃げる野犬を追いかける。


 敵が二体いようがまずは一体だ。

 ダメージを受けようが無視して一体ずつ片付ける。

 連携さえ潰せば、ステータスで勝る私に勝てる道理はないはずだ!


「キャウゥゥ……」


 野犬は必死に逃げるが、素早さのステータスで追い詰めて〖爪撃〗で切り裂いた。


【通常スキル〖爪撃LV3〗が〖爪撃LV4〗に上がりました】

【経験値を92取得しました】

【マーヴェリックリザードはLV18からLV19に上がりました】

【スキルポイントを取得しました】


「ガルルアアアッ!」


 一体目の野犬を倒すと、もう一体が胴体から離れ、凄い雄叫びを上げながら私の首筋目がけて襲いかかってきた。

 残念だったな犬っころ。

 一撃必殺に賭けて急所を狙ってきたんだろうが、連携できなくなったあんたらなんて怖くないよ!


「キャウゥゥ……」


 私は首筋を狙う野犬をカウンターの〖体当たり〗で吹き飛ばす。

 野犬が壁に激突して倒れたところに〖尻尾攻撃〗を上から打ち下ろして止めを刺した。


【通常スキル〖体当たりLV2〗が〖体当たりLV3〗に上がりました】

【通常スキル〖尻尾攻撃LV2〗が〖尻尾攻撃LV3〗に上がりました】

【経験値を98取得しました】

【マーヴェリックリザードはLV19からLV20に上がりました】

【スキルポイントを取得しました】

【LVがMAXになりました。マーヴェリックリザードは進化可能です】


 天の声がLVMAXを告げる。

 やったー! LVMAX! 進化できるぞー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る