第13話アントライオン

 町を護ると約束してフェリシアと別れた私は、引っ越し先を探して一人森を歩いていた。

 手に入れたばっかりの拠点を手放すのは惜しいけど、あの怪物大蛇の生息域の近くじゃそれもやむなしだよね。

 まあ、拠点の拡張工事で〖土魔法〗スキルも手に入れたし、全くの無駄だったわけでもないからいっか。

 それよりお腹空いたなぁ……。考えてみたら朝からなんも食べてないよ……。

 ――うおっ!?


 空腹を我慢しながら歩いていたら、突然地面が緩くなりバランスを崩してしまう。

 なんだこれ! 地面が急に緩くなってる!


 何とかバランスを取ろうと試みるが、柔らかい土や砂に足を取られてしまう。

 よく見ると柔らかい地面は円形の窪みになっており、その中心には二本の長い角のような物が突き出していた。


 これは見た事があるぞ。蟻地獄だ!

 って事は、あの長い二本の角は蟻地獄の大顎か!

 サイズは私より小さいが強いのか? 〖鑑定〗!


―――――――――――――――――――――


種族:アントライオン

ランク:E+

LV :11/25

HP :37/37

MP :42/42

攻撃力:32

防御力:38

魔力 :42

素早さ:15


通常スキル

〖気配探知L3〗〖牙撃LV2〗〖毒攻撃LV3〗

〖投石LV3〗〖隠密LV3〗


魔法スキル

〖土魔法LV3〗

〖ダート〗〖ダートウォール〗

〖幻魔法LV2〗

〖ファントム〗


耐性スキル

〖物理耐性LV2〗〖毒耐性LV3〗〖魔法耐性LV1〗


称号スキル

なし


スキルポイント:180


―――――――――――――――――――――


 アントライオン、って事はやっぱり蟻地獄か!

 確か蟻地獄って巣がすり鉢状の罠になってて、落ちてきた獲物を餌にする完全待ちタイプの虫だったよね。

 奴の罠にまんまとハマっちゃったって事か?


 おかしいな、こんな大きな蟻地獄があったら気付くはずなんだけど……そうか! 奴の〖幻魔法〗〖ファントム〗だ!

 どんな魔法を使ったかはわからないが、幻ってくらいだから地面を平らに偽装した?

 さらに〖隠密〗のスキルで気配を隠したってところか?

 仕事しろよ私の〖気配探知〗!

 ステータスは私と同じくらいだしランクは上だ。こいつは強敵だぞ。


 でも、時が悪かったな蟻地獄よ。今の私は空腹で機嫌が悪いんだ。

 そんな私を襲うなんてきっと後悔するよ。

 なぜならば、私の朝ご飯になるからね!


 私は巣の中心にいるだろう蟻地獄目掛けて〖ファイアブレス〗を放つ。

 ブレスが止むと蟻地獄本体が姿を現す。雄々しい大顎とは裏腹に、蟻地獄の胴体はずんぐりむっくりした体型だった。

 あれが奴の本体か、穴の中にいたからダメージは少ないみたいだ。

 完全待ちタイプと思ったけど、穴から出て直接戦うつもりなのか?


「ギィイイイッ!」


 姿を現した蟻地獄は短い足を上手く動かし、私に地面の土を投げつけくる。さらに〖土魔法〗で地形を変化させ、すり鉢状の巣の傾斜を高めてきた。

 くっ、こいつ……私を巣の中心に落とすつもりだな……!

 そうはさせるか! 〖土魔法〗を使えるのが自分だけと思うなよ!


 私は足元の土を〖ダート〗で固めて足場を確保する。

 そしてジャンプ一番、上空から〖爪撃〗を繰り出した。


「ギギィイイイッ!」


 なにーっ! こいつ、自慢の大顎で私の〖爪撃〗を受け止めやがった!

 ――キャンッ!

 蟻地獄は〖爪撃〗を受けた大顎をするりと移動させると、私のお腹を挟んでロックした。


 う……動けない……この蟻地獄なんて馬鹿力なのよ……!?

 はーっ! しかも私のHPがドンドン減ってる! なんで!

 痛ぁぁッ! いたたたたたッ!

 くっそ……HPの減りが見える分だけ余計に痛い気がするぞ……!

 HPが減っている事に気付くと共にお腹に痛みが襲ってきた。


 そうか、こいつ大顎の先から毒液を注入してるんだ……!

 〖毒攻撃〗のスキルLVが高かったのはこの攻撃を得意としているからだったのね。

 私の〖毒耐性〗を破ってこれだけのダメージ受けるなんて……!


「ギーッギッギッ!」


 蟻地獄はまるで勝利を確信したかのように嫌らしく嗤った。

 この虫野郎! もう私に勝った気になってるのか?

 ふっ、所詮は畜生。なんで私が危険な巣の中心まで下りてきたかわかってないようね。

 これでも食らいなさい!


「ギィエエエエッ!」


 私が蟻地獄のずんぐりむっくりした胴体の方に〖ファイアブレス〗を放つと、苦しそうな絶叫を上げた。

 おー効いてる効いてる。子供の頃に蟻地獄で遊んだ経験が役にたったわ。

 雄々しい大顎と比べて奴らの胴体はブヨブヨで柔らかい。思った通り弱点だったようね。


 私はダメージを負って拘束の緩んだ大顎から脱出し、胴体に〖尻尾攻撃〗を叩き込む。

 吹き飛んだ蟻地獄を追いかけ、弱点の胴体に〖爪攻撃〗を叩き込むと緑色の液体が辺りに飛び散った。


「ギェエエエ……」


 私の〖爪攻撃〗を受けた蟻地獄は断末魔の叫びを上げ、倒れて動かなくなった。


【経験値を71取得しました】

【マーヴェリックリザードはLV4からLV6に上がりました】

【通常スキル〖爪撃LV1〗が〖爪撃LV2〗に上がりました】

【魔法スキル〖土魔法LV1〗が〖土魔法LV2〗に上がりました】

【スキルポイントを取得しました】


 ふう、なんとか勝てた。今回も意外と苦戦したなぁ。

 進化したからって簡単に勝てるほどこの森の魔物は弱くない。

 私には湖の大蛇をなんとかするってフェリシアとの約束があるんだ。

 気を引き締めていかなきゃ。

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