第11話美少女シスター〖フェリシア〗と私の名前

 森の中の隠れた花畑で美少女シスターに助けられた。

 正直私の〖気配探知〗が反応できないクラスの魔物に不意打ちを受けたら死んでたかもしれない。つまり、このシスターは命の恩人って事になる。

 いきなり襲ってくる人間もいれば、助けてくれる人間もいるんだな。


「貴方が魔物だろうと別に何もしませんよ。少しお話しませんか?」


 美少女シスターが優しそうな微笑みを浮かべ提案してくる。

 お話しって……もしかして、この子脳内お花畑なのか? お花畑はこの場所だけで十分だよ。


「なんだか失礼な事を想像されている気がしますが……それはいいとして、私は貴方とお話ししたいだけですよ」


 本当かなぁ?

 まあいいや、こっちも別にこの子と戦う気はない。お礼もしたいし、話すくらいはいいかな。


『ごめんなさい、それとさっきはありがとう。おかげで助かったわ。でも私は魔物よ。なんで助けてくれたの?』

「あら、『念話』が使えるのですね。それなら直接お話しできます。なぜ助けたかですが、貴方には邪気を感じませんもの、悪い魔物ではないと思いました。それならば助けるのは当然の事です」


 美少女シスターは優しく微笑み答えた。

 うおっ、この美少女シスターめちゃめちゃいい人だ! こんなに優しい人がいるなんて、この世界も捨てたもんじゃないな。


「あら貴方、怪我をしているじゃないですか! 私は回復魔法を得意としています。見せてください」


 怪我に気づいた美少女シスターが私に駆け寄る。

 そして、傷口に手を翳すと神聖な魔力を纏った水が注がれ傷が塞がっていった。


【通常スキル〖水魔法LV1〗を取得しました】

【〖水魔法LV1〗の効果で〖癒しの水〗を取得しました】


 おおっ! これが回復魔法か、初めて見たわ!

 そして〖水魔法〗ゲットー!

 相性のいい〖水魔法〗だったから受けただけで取得できたみたい。


 だけど斬られた尻尾は回復魔法じゃ再生しないみたい。

 でも、トカゲの尻尾でしょ? それって新しく生えてくる物じゃないの? なんか尻尾が生えるイメージが湧いてきた!

 できる……できるぞ。私は尻尾を再生できる!


 私は尻尾に魔力を集中し、尻尾が生えてくるイメージを頭に浮かべる。

 すると、ニョキニョキッと新しい尻尾が生えてきた。


【通常スキル〖肉体再生LV1〗を取得しました】


 〖肉体再生〗きたーーーッ!

 さすが私! なんかできる気がしたんだよね!


「今のは〖肉体再生〗ですか! その幼さで使えるなんて凄いですね……!」

『えへへ、ありがとう』


 美少女シスターは突然尻尾を生やした私に驚いている。

 ふふんっ! やっぱり凄いよね! 私も驚いた!


 この子の回復魔法も凄かったよなぁ。

 他にはどんなスキルを持っているんだろ?

 〖鑑定〗してみよっと。


―――――――――――――――――――――


〖フェリシア・ブルーホワイト〗

種族:人間

LV :25/75

HP :86/86

MP :108/108

攻撃力:72+7

防御力:58+5

魔力 :108+18

素早さ:67


装備

〖シスターの杖:E+ランク:攻撃力+7、魔力+3〗

〖シスター服:E+ランク:防御力+5〗

〖シスターのロザリオ:Cランク:魔力+15〗


通常スキル

〖気配探知LV4〗〖思考加速LV1〗〖人間言語LV7〗

〖念話LV3〗


魔法スキル

〖聖魔法LV5〗

〖ヒーリングキュア〗〖セイクリッドゾーン〗〖ターンアンデッド〗

〖水魔法LV5〗

〖癒しの水〗〖浄化の水〗〖ウォーターボール〗

〖木魔法LV2〗

〖ガーデニング〗


耐性スキル

〖物理耐性LV2〗〖魔法耐性LV5〗〖毒耐性LV3〗

〖酸耐性LV2〗〖麻痺耐性LV2〗〖呪い耐性LV2〗


称号スキル

〖聖なる乙女LV――〗


スキルポイント:2570


―――――――――――――――――――――


 えええっ! このシスター私よりずっと強いぞ!

 初めて見る魔法がいっぱいだ!

 最大LVが私を襲ってきた男よりずっと高いのは才能の差なのかな? 世知辛いねぇ。

 こんなに可愛い子が強いんだから、やっぱり人は見かけによらないなぁ。


「驚いた……貴方は〖鑑定〗が使えるのですね……。私はいいのですが、初対面の人に〖鑑定〗を使うのは失礼にあたるので止めた方がいいですよ」

『そうだったの! ごめんなさい、気をつけるわ』

「いえ、〖鑑定〗を使える者は非常に稀なので、知らないのも無理のない話です。〖鑑定〗されると自分の中を探られているような気持ち悪さを抱くのです。今後は気をつけてください」


 怒られちった!

 なるほど不快感ね。自分の中を覗き見されてるんだもの、そりゃあ気分も悪くなるか。

 フェリシアによると〖鑑定〗のスキルを持つ者は少ないが、〖鑑定〗の力を持つ鑑定水晶という魔道具があるらしい。

 それを使う事で〖鑑定〗できるが非常に高価なんだそうだ。


 フェリシアを〖鑑定〗してみた結果、私を回復してくれた魔法は〖水魔法〗だったけど、〖聖魔法〗ってのは初めて見たわ。

 今後私も取るかもしれないし、使い手に聞いてみようかな。


『あの、私は魔法が使えるようになったばかりだから質問したいんだけど、貴方の〖聖魔法〗ってどんな魔法なの?』

「〖聖魔法〗は結界の構築と、〖水魔法〗では治せない状態異常の解除ができる魔法です。〖鑑定〗で見たのならバレていると思いますが、回復の〖水魔法〗と結界や浄化の〖聖魔法〗は私の得意魔法ですね」


 フェリシアは形のいい胸を反らして得意気に答えた。

 あれだけのステータスを持ってるんだもの、そりゃあ自分の能力に誇りを持っているよね。


「人間は凶暴だという誤解を解きたいですし、他にも聞きたい事があれば答えますよ」


 聞きたい事?

 そうだなぁ……、


『フェリシアっていい名前だね。美しい貴方によく似合っているわ』

「あら、歯の浮くような事を言いますね。私を口説いているのかしら? うぶな町娘なら口説かれていたやもしれません。ですが、私も気に入っている名前なので嬉しいです」


 聞きたい事というか、言いたい事を言ったらまんざらでもない反応が返ってきた。

 テローン、フェリシアの好感度が上がった。


 だったらいいなぁ。初めて会った私を助けて傷を癒してくれた優しい人だもの。

 だって私ってば魔物だよ? しかもレアなやつ。

 普通襲ってくるか、生け捕りにして売り払われるもんじゃんね。

 そんな私に優しくしてくれる美少女シスターとか、そりゃあ仲良くなりたいよ。

 私は割と一人でも大丈夫な女だけど、ずっと一人で行動してもいいとは思っていないし。この人とは友達になりたい。


「貴方の名前はなんて言うのですか?」

『私は名無しよ。名前なんてないわ』

「そうですか……でしたら自分でつけてみてはいかがでしょうか? 好きな名前をつけられるのも素敵な事だと思いますよ」


 なるほど、言われてみれば確かにそうだ。

 普通は親が子に名付けるものだけど、自分で名前を考えるってのも面白そうだな。

 なんて名前にしよっかなー……とはいえ急には思いつかないや。


「思いつかないですか? もしよろしければ私がお付けしましょうか?」

『う~ん……そうだね、自分じゃ思いつかないよ。お願いしていい?』

「はい! 私にお任せください!」


 お願いする私に、フェリシアは張り切ってあーでもないこーでもないと考え出した。

 意外とこういうの好きなタイプなのかな?

 まあ、喜んでるようだし任せてみよう。


「アテナ……なんてどうでしょうか?」

『いいわね気に入った! その名前にするわ!』


 アテナ、その名はギリシャ神話の戦いの神であり、三大処女神の一柱とされる女神の名だ。

 〖修羅界〗なんて競い合いの称号を持つ私にピッタリだと思う。

 それにほら、私ってば前世も今も乙女だし、気に入ったわ。

 私は今日からアテナ。トカゲの魔物アテナだ!

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