ちょこっと会話集(その2)


船で皇都に向かう最中、マーナととある会話をした。

 

「なあ〜、皇国には貴族がいるんだろ?あれってなんなの〜?」

「そんなのも分からずにこの国に来たのか?」

「しょうがないよ〜。てきとーにあるいてたらここに着いていたんだから」


「皇都に行くんだ、これくらいは知っとけ」


 長々しい内容を順を追って説明する。


 ◇◇◇


 ……この国は皇家と28の貴族がいる。そのうち領地を持ってるのが21の貴族であり、残りの7つの貴族は特別な枠として扱われている。

 領地を持たない貴族のうち4つは、皇都に邸宅を構えており皇家に使えている。


『へザトール家』

『ナスキアス家』

『グリドア家』

『ヘッカス家』


 この4つが皇家に近い血筋を持っているか、昔の大戦の時に名だたる功績をあげた貴族の末裔である。

 そして残りの3つは各種族の長に与えらてる、いわば名誉貴族みたいなものだ。


 エルフの貴族『カナフィーア族』

 ドワーフの貴族『ドログワ家』

 魚人の貴族『ダノダナ族』


 だ。


「あれ?でも獣人と龍人の貴族がいなくない?」

「それはな、龍人の貴族はへザトール家として皇家に使えているんだよ。昔の大戦で一番活躍した種族だからな」

「じゃあ獣人は?」

「……まさか『分ちの大戦』を知らないのか!」

「???」


 ……『分ちの対戦』……国という概念がまだ未成熟だった頃、隣のトニグア大陸と北方の地にある獣人の王国から盛大にこの大陸を攻められた。各地で防戦していた種族や村、小国などはあっという間に滅ぼされ、皇都の内海付近まで前線が押されていた。

 ……しかし後に初代皇帝となる女傑『アナシア・アルデリア』が各地の種族を現在の皇都に集めた。

 この国最初となる多種族連合軍が成立して、その知恵と武力を集結させた。最初は他種族間の差異に悩まされ上手いこと戦えてなかったが、アナシアが命名した13人の『騎士』によって統制をとった。

 そこからは圧倒的だった……連携の取れた軍、勇猛な指揮官、そして様々な種族による欠点のかばい合いが功を成して、最終的にはトニグアの連中を追い出し、獣人族を北方山脈に幽閉することに成功した。されども連合軍の勢いは止まらず、海を越えてトニグア大陸沿岸部の軍港をめちゃくちゃにして終戦となった。その際に龍人族は空を飛び、敵国の港を攻撃したことが讃えられ、貴族の中枢に加わった。

 それ以降トニグアとは冷えきった関係であるため、『分ちの』大戦なんて呼ばれている。


「そんなんだから獣人の貴族はいないし、国内にも少ないんだよ」

「へぇーすごいね!…でも今の貴族の数とは合わなくない?」

「それはな…」


 ……大戦の後、唯一皇国のみが戦勝国として国を維持してきたが、周辺国はそうではなかった。飢餓や物資不足に悩まされ、その土地の支配者は解決の糸口を探っていた。最終的に周辺国は、豊かな皇国の土地と人民を手に入れようと戦を何度となく仕掛けて来たが、皇国は容易く返り討ちにし、その防衛戦で名を馳せた者が残りの貴族となった。


 (でもよくよくは他種族の奴らに領地を与えてない所を考えると結局は差別意識を持ってるんだろうな、あいつら上の貴族は……。)


 クリスの悩ましい気持ちとは裏腹に、気持ち海風が船の背中を押していく……。

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