夏と群青

小鳥遊 媛海(たかなし ひめか)

プロローグ


 ―宮本夏みやもとなつ。安定した職業でサラリーマンを務めている。どこにでもいる、ごく普通の爽やかな僕だ。

 今までだって彼女は居たこともあるし恋愛は人並みにしてきたはずだ。


 なのに35歳にもなって結婚もせずブラブラと飲み歩き居酒屋ばかり出入りしていた。

 毎週末どっかの居酒屋を探しながらハシゴして呑んでいるだけの所謂、顔だけ男前の爽やかボーイだ。…いやオジサンだけど。


 『ねぇ〜注文まだ〜??』と席の前にガールが。どんな系か?と聞かれたら…ちょっと、あざとい系の女性とでも言っておこう。


 『失礼…レモンサワー1つと、唐揚げで。』と、いつもと変わらない注文だ。つまらないだろう、こんなおっさんは。


『は〜い、レモンサワー。』そう言って笑顔で振り向いてくれた、あざとい系の彼女、結李菜ユイナだ。


 こんなに可愛くて笑顔が眩しい彼女は僕の元気の源でもあった。

 なかなか気になるような女の子に出会えてもなかった僕が、この子を彼女にしたい―。そう心にビビッと電気が走ったようだった。



















『夏と群青』2024.11.30

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