20XX年 12月4日 タイトル『休暇』

「ヒルデ、今度のSG予測発現はどうなっているの?」

 わたしは彼女の顔を見て話す。

「そうですね。今のところ、探知圏内に異常なし。しばらく休暇ですね」

「そう……。ヒルデお買いものいかない?」

「え。私、ですか!?」

 驚いたように言うヒルデ。

「他に誰がいるのよ?」

「そうですね。そうですよね」

 感慨深そうにうなずくヒルデ。

「分かりました。英雄どのにお供します」

「英雄じゃないって」

 英雄。それはわたしの別称。あだ名。二つ名。

 まあ、英雄と呼ばれるほどのことはしていないのだけど。

 周りが持ち上げるのよね。

 そうしてわたしとヒルデは街に繰り出した。

 洋服を買ったり、化粧品を見たり、アクセを眺めた。

 夜になり、ヒルデと一緒に酒場に入る。

 カウンター席だ。

 隣の席に座ったイケメン男性に、思わず見蕩れてしまった。

 彼は確かこう言った。

「俺の顔になんかついています?」

「あ。いえ、すみません」

「よく言われるんです。かっこいいね、って。でも俺は……」

 歯切れの悪い言い方。

 彼のことは今でもよく覚えている。

 身なりはボロボロだったけど、顔は良かった。

 そして話すトーンや声質もいい。

 マナーもちゃんとしている。

 そんな印象だった。

 ヒルデが嫉妬したのは内緒。

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