僕たちの新しい暮らしを支える為に
星咲 紗和(ほしざき さわ)
プロローグ
朝焼けがゆっくりと街を染めていく。ここは、ニューロダイバーシティーを掲げ、ベーシックインカムが導入された特別な街。高層ビルもネオンもないが、住む人々の表情は穏やかで、どこか自由だった。
「ここなら、変われるのだろうか?」
少年は荷物を抱えながら、駅前の広場に立ち尽くしていた。まだ人影の少ない街を見回しながら、胸の奥に押し込めてきた不安がじわりと顔を出す。
彼の名は晴人(はると)。自分の心の内を誰にも明かさず、ずっと孤独を抱えてきた。パーソナリティ障害のせいで人とうまく関われず、どこにいても居場所を見つけられなかった。けれど、この街なら何かが変わるかもしれない。そんな微かな希望だけを胸に、彼はこの街にやってきた。
頭の中にあるのは、ひとつの夢。ヌードデッサンで一人前の絵描きになること。しかし、それはただの夢物語だった。少なくとも今の彼にとっては。
駅前のベンチに座り込み、空を見上げる。広がる青空に、彼の決意はまだ薄かった。それでも、少しずつでいい。絵を描くことが、自分にとっての「何か」を見つける手がかりになるかもしれない。
街の遠くから、子どもたちの笑い声が聞こえる。その声に誘われるように、晴人は荷物を抱え直し、少しだけ歩き始めた。
「この街で、何かを描けるようになりたい。」
彼の小さな一歩は、まだ何色にも染まっていない未来へと続いていた。
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