とちのとき実話怪談集
とちのとき
海辺の家の葬式
これは、私が怪談好きになるきっかけとなった出来事。
幼い頃、千葉県某所の海沿いに、家族と親戚とで旅行に行った際の出来事です。
予約した民宿に着くと昼間は何事も無く楽しく過ごしました。
その夜、みんなで花火をしようという事になり、海まで行き、防波堤の所で楽しんでいました。しかし、買って来た花火もすぐに尽き、もう戻ろうかとなった。
夜の闇に目も慣れて、手元の懐中電灯と月明かりで周囲が何となくわかる。前を見上げると、港の中の海を挟んで向こう側には小高い山があるのが見える。その山の頂上、その少し上に何かぼんやり光るものが見えた。
私が「あれ何だろう?」と皆に言うと、当時UFOが流行っていた事もあり、UFOじゃないかと、片付けの手を止めその場が少しざわついた。
しかし、暫く見続けていると、それがそういった類のものではない事が分かった。
親戚の一人が、皆が感じていた違和感を口にした。
「あれ人に見えない?」
確かにそれは人に見えた。少し緑がかった青白い光を淡く帯びた人の形であった。猫背気味に両腕を力なくだらんと垂らしているのまでわかった。
それを目で追っていると、それは少しづつ空に向かって昇っていく。
ふと私は、それがいる山の手前に視線を落とした。そこには一軒の民家の門の前、その両脇に明かりが二つ。白黒の縞の布が靡いているのが見えた。
子供ながらにそこでお葬式が執り行われているのだと思った。その事を皆に教えると、そこに居た皆が、その民家から光る人が真っ直ぐ上に昇っている事を確信した。
思わぬところで霊魂と呼ぶべきものを集団目撃してしまい、その存在を信じざる得なくなってしまった。
だが、その時は怖いといった感覚は無く、神秘的な何かを見た様な気持ちだった。
「魂って本当に成仏すると天に昇るんだね。」などと話しながら、私達は民宿へと戻った。
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