序章: 真実の始まり
白いバラの咲く野原で、重傷を負った二人。セリンは頭を振り、涙をこぼした。
遠くから母がその姿を見つめ、悲しみに満ちた瞳で走り続けた。セリンが全力で戦う姿を目にしながら、その出自を示す様子を前に迷いを感じる。セリンの言葉に従うべきかどうか――。
セリンは限界に達し、母を見つめながら、樹の扉へと駆け寄った。息は絶え絶え、血で汚れた手、右目から流れる血。
それでも立ち続けるのは、再び愛する者たちに会うという希望だけを胸に抱いているからだった。彼の対戦相手もまた、傷ついた腕を強く握りしめている。
足は震え、憎しみに満ちた視線は消えることがない。
二人は互いを見据え、走り出した。セリンは力を込めて出自の剣を握る。
対戦相手は左手に全力とその力の源を込めた。視線の中に宿る憎しみ。どちらが立ち上がるのか、既に分かっているかのようだった。
重苦しい空気の中、時間だけが静かに流れる。足音と踏みしめられる草の音、それが唯一の音だった。
「俺はお前みたいな奴には負けない。力がなくても、俺はお前を倒す。なぜなら――なぜなら――また会いたいんだ。俺は幸せになりたいんだ!」
「……!!!アアアアアアア!!!」
「こいつ、俺が持つ天の力を前にしても倒れないとはな……だが関係ない。必ず殺して、俺の残したものを取り戻す。お前を――ジェイガーの最後の痕跡を、完全に消し去ってやる!」
セリンは剣を振り上げ、全力で駆け出した。眉間に皺を寄せ、歯を食いしばりながら叫び、これを終わらせようと決意していた。
**……バキッ!……ズガンッ!……**
剣と拳がぶつかり合い、残りの力を全て出し切る二人。憎しみに歪んだ顔は消えることなく、生命力さえ振り絞り、始まりの戦いを終わらせようとしていた。
その場は血と汗が染み込む場所と化し、バラは血の海で赤く染まっていった。
「……イン……ペリアル……サークル……!」
セリンは水晶から円環の一つ、「深紅の円環」を引き出すことに成功した。その剣を力の源で包み込み、初期の円環の一つを解放。歯を食いしばり、眉をひそめながら敵へ突進した。
全力で振り下ろした斬撃。
「ハハハハハ!貴様など、ただの力の源を持つ子供にすぎん。その剣では俺を倒せるものか!俺こそが唯一無二の“帝国の継承者”だ!……(天の力、神々の舞曲)死ね、クズが!」
セリンはその継承者の力を目の当たりにし、攻撃を避けることができず、正面から受けるしかなかった。
「……アアアアアアア!!!」
攻撃に包まれたセリンの体は宙に浮き、涙が舞い散った。
剣の柄から手が離れ、脳裏には旅や家族、大切に思っていたものたちの記憶が浮かんだ。
「母さん……ごめん。俺は帰れなかった。ミオも守れなかった。誰も救えなかった。ごめん……ミユキ。たとえ死んでも、影となって君のそばにいる。君は一人じゃない……母さん、本当にごめん……」
セリンの記憶が脳裏を駆け巡る――川での日々、酒場での時間、不死者の山での冒険――。涙は止まらず、命を散らそうとしていた。
「セリン……救おうとしてきたものを、後悔するな。お前が唯一無二である理由は、お前が“子孫”だからじゃない。私の息子だからだ。
……苦しみは決して忘れられない。だが、幸福は……『幸福は、必ずお前のそばにある。私はいつだって、お前のそばにいる!』……息子よ、その重荷を背負う必要はない。私が背負うから……」
「……な、なんだと……!」
「お前を誇れないことなど、一度もなかった。お前は私の――」
**……ズバッ!**
セリンの母は彼の腕を掴み、全力で攻撃の中から彼を引き出した。その代償に自らの腕を失いながらも。
セリンは呆然と母を見つめ、涙を流す。母は微笑みながら、涙を浮かべてこう言った。
「セリン、私はお前を愛している。忘れないで。私はいつもそばにいる、私の可愛い子……」
「母さん……!母さああああああああああん!!!」
最後の「帝国の円環」の末裔 ハラマ @ItsukaHarama_1
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