偽りの戦場

ベーコンでべコン

第0話 緊張

♦︎RV執務室♦︎

「ムクロ君にピクシー君。今回はラミア殿から2人に話があるそうだ。まぁ揃ったから話を始めよう。先に起きたラプラス動乱のおかげで、ロンドアは技術、経済発展をしたが、その潤沢な資金を惜しげも無く軍備拡張に回している。近いうちに大きい戦いが起こるだろう。」

髪をかきあげながら男はそういった。

「レーヴェゼ、なぜ驚く?当然のことだろう。有史以来サヘルトアとロンドアは幾度となく衝突を繰り返し、その度にロンドアの兵は疲弊していった。今軍備強化をせずして何をするのだ。」

レーヴェゼと呼ばれた男の隣りで資料を読んでいた女は言った。

「…この状況では悪手だよ、クベくん。このままでは我々ロンドアは、アルドリヒ製兵器の整備パーツが不足し、戦争が起こった時に極めてチープな武器を渡さなくばいけなくなるだろう。塹壕から苦情が来て、まるで仕事が出来んのだよ。」

額の汗を拭きながら長椅子に座っている男は言う。

「ラミヤ殿、マールバ重工に生産数の増加の話を持ちかける事は?」

「…いや、それこそ間違いなく戦争準備だと騒ぎ立てる輩の反感を買ってしまうだろう。」

「旧ラプラス財団が軍事産業から手を引いた今、世界の軍事バランスが崩壊し、転換期に来ているという訳だな。」

レーヴェゼは唸りながら言う。

「このままだとサヘルトアがロンドニアを侵攻するのも…どうする、ラミヤ殿。」

話を振られたラミアは葉巻を出し火をつけた。

「なに、心配はない。それはロンドニアの問題であって、我々にリスクはないさ。」

「…ちょっと待ってください。」

ピクシーは話を遮った。

「今開戦すれば軍事力でサヘルトアに劣るロンドアの敗北は確実なんですよ。それなのに何で、そんなにも堂々としていられるのですか?」

「落ち着け、ピクシー。お前の言いたいことはわかるが、まだそうと決まった訳ではない。」

宥めるようにムクロは言う。

「うむ…確かに、ムクロ君の言う通りだ。この仕事は最悪の場合、サヘルトア…かつての同志を相手にしなければいけなくなってしまうからな。」

「…勝ち目はあるのだか。」

「だから君達には新型兵器の実地試験に協力してももらおうって訳だ。ほんの少し、融通を効かせよう。」

ラミアは足元に置いていたアタッシュケースを机の上に置く。

「…例の”計画“のことか。そもそもマーバル重工の研究が倫理的に許されない感じな気がするのだが。はて気のせいだろうか?」

ムクロは訝しんだ。

「ほう、では聞くぞ。マーバル重工の研究している“クロノコス”とはなんだ?」

クベはラミアに聞いた。

「よくぞ聞いてくれた!クロノコスと言うのは、今はなきラプラス財団が発見した重元素を指し、ロンドアとサヘルトアの国境付近で鉱脈のように生成されているものです。使用用途は多岐に渡り、新型の量子通信に兵器の装甲材、臓器の修復まで使える万能素材なんですよ!」

ラミアは目を輝かやかせて言った。

「…なるほど。して、ラミア殿としてはロンドアがそのクロノコスを巡る資源戦争に舵を切ると踏んでいる訳だな?」

「私…というより私の属する帝国の見解だね。」

「帝国もそう見るなら戦争回避はほぼ不可能か。」

「おっとすまない、ムクロ君にピクシー君。机の上にあるコレが気になって仕方ないか。」

ラミアはそう言うとアタッシュケースを開けた。

ラミヤ「これが着装の時に必要となるコードだ。まぁあれだ、変身アイテムみたいなやつだ。受け取ってくれ。」

「コレが…コード……」

ムクロは渡されたものをまじまじと見た。それは少し小さいペンライトくらいの大きさだった。

「ラミヤ殿、何故我々の様な愚連隊にこんな物を?」

「ああ、このコードはプロトタイプだから、まだ十分なデータが取り切れていない。そしてこの開発は帝国も公にやってる訳では無いし、帝国の一般兵士に万が一の事があったらコレは封印されるだろうね、だから愚連隊でかつ、色々体を弄っている君たちで試験することにしたのだよ。」

「なるほど、モルモットって訳か。」

「そんな訳ないだろ…いや、そう思っても仕方がないか。まぁコードの説明に移ろう。コレはTPF-057P、テレポートが出来るようになるのと、君の身体能力の更なる拡張が出来るだろうね。これはピクシー君が。」

「…私がこのコードを使うのか。」

「ムクロ君が今持っているのがEMF-002P、エレメントの生成と使用者の身体能力の拡張が出来るものだ。」

「えれめんと…」

「聞きなれない単語かねムクロ君?では五芒星はご存知かね?」

「五芒星…陰陽道でもやらせるつもりか?」

「違う違う。このコードはクロノコスを消費して五芒星の属性が宿る攻撃が行える。隠密から殲滅戦まで用途は広いぞ。」

「五芒星の…属性…。」

────────────────────

ラミヤ帝国陸軍技術部門技術顧問からコードを受け取ってから1週間後…実際に演習場での実験が行われた。


♦︎演習場♦︎

「では今からコード起動試験を行いまーす。ムクロさん、準備出来ましたかー?」

「大丈夫だロミオー。いつでも良いぞー。」

「了解、では、着装のほう宜しくお願いしまーす。」

「了解。これより試験を開始する。クロノコス散布。」

ペンライトのような小さな容器からは黒色とはまた違うが、光すら飲み込むような深い色の霧が出てきた。

「クロノコス戦闘濃度散布完了、着装を開始します。クロノコス圧縮、装甲を形成、装着開始……装甲内減圧完了、頭部インターフェイス接続開始…接続完了網膜投影開始、クロノコス安定率86.5 87.9 87.9安定……

クロノコス圧縮弾充填完了。全工程オールグリーン。戦闘行動開始します。システムスキャンモード」

のっぺりとした抑揚の無い電子音声が頭を覆うヘルメットの中で響く。

「着装完了。」

「着装完了確認っと。…おぉぉぉぉ!

さすがはムクロさん!1発で成功なんて、ロミオ、感激ですよー!!」

「ロミオ、そろそろ第二段階に」

少しくぐもった声でムクロは促す

「あっ、了解です。では訓練用オートマトンとの戦闘を始めちゃってくださーい☆」

「了解。」

「システムを戦闘モードに移行します。」

地面を踏み抜くのではないか。そう錯覚するほどムクロは踏み込んだ。オートマトンの距離を詰める。機関砲が回り始めたが、ムクロは腕に着いている射撃武装で攻撃。オートマトンは瞬きよりも早く穴だらけになり動かなくなった。

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